スマートフォンアプリ/Webメディアは収益化が大きな課題
各キャリアが販売に本腰を入れたことで、昨年から今年にかけて、スマートフォンの市場は一気に拡大した感がある。ユーザー数の増加とともに、ユーザーの属性も多様化しているのが現状だ。
そうした背景から、さまざまなスマートフォンアプリやWebサイトが増加している。基本的に無料で閲覧できるWebサイトは当然のことながら、アプリにおいても有料アプリは利用のハードルが高くなってしまうため、まずは裾野を広げようという意図で無料で利用できるようにするものが少なくない。ユーザーに課金をするにしても、ある程度の利用者数が見込めなければ、収入の見込みも立たない。
これら無料の媒体を収益化する一番の方法は、広告収入だ。マスメディアと違い、成長途上にあるスマートフォン市場では、大きな予算の純広告を獲得するのは難しいことから、多くの媒体社がアドネットワークを活用している。規模や属性に応じた複数のアドネットワークに参加し、インプレッションやクリック数に応じて広告収入を得ているわけだ。
300超の媒体が登録!スマートフォン特化型広告配信SSPサービス「AdStir」
そんな折に注目を集めているのが、ngi group株式会社がこの9月にリリースした無料のスマートフォン特化型広告配信SSPサービス「AdStir」だ。現在、国内で利用率の高いほとんどのアドネットワークを束ね、広告のインプレッションが発生するごとに、自動的に最適な広告を選択する仕組みを提供している。
ngi groupによると、9月にリリースしてから12月までで、300以上もの媒体の登録があったという。アプリ開発事業者が中心だが、11月にWeb対応を完備したことから、最近はスマートフォンWebメディア運営者からの引き合いも多い。同社メディアプラットフォーム事業部事業部長の植雄平氏は、「予想をはるかに上回る反響をいただいている」と語る。
すでにAdStirを導入し、着実に成果が上がっていると話すのは、株式会社YourGolf Online の才神健児氏。同社は2009年よりスマートフォン向けゴルフスコア管理アプリケーション『YourGolf』を展開しており、現在では専業会社を運営するほどの人気が高いアプリだ。
人気アプリ『YourGolf』が導入 海外アドネットワークに対応、純広告もフォロー
『YourGolf』は、ゴルフ場でプレイしながらスコアをつけていくというもの。まさにゴルフをしているシーンで閲覧されることから、ターゲティングされた、非常に広告効果の高いユーザを囲っているアプリだ。そのため、純広告の引き合いも多い。
AdStirは、基本的には提携するアドネットワークからインプレッションごとに収益を最大化する広告を配信するが、アドサーバ機能も備えているため、こうした純広告の出稿にも柔軟に対応できるのも魅力の1つである。「収益のロスを出さずに、新たな展開にチャレンジできるところは利便性が高いですね」と才神氏。
海外ユーザーも多く擁するこのアプリでは、AdStirの言語判別による海外広告対応も重宝しているようだ。こうしたノンバーバルなコンテンツを提供する場合、海外のユーザーがアプリを利用した際に日本語での広告配信をしてしまうというミスマッチが懸念事項になることが多いが、AdStirの言語判別による海外広告対応によって、これを自動的に解消することができる。
海外ユーザーには英語の広告を、日本のユーザーには日本語の広告を配信した上で、複数アドネットワークの最適化配信をするため、CPMの引き上げを大幅に促進できているわけだ。広告売上としては、導入前から比べると倍に近い増加が得られたという。
「当社はこれからもさらなる海外進出を見込んでいるので、AdStirで国内/海外の両面で収益の最大化を図りたいと考えています」と才神氏。今後は、提携アドネットワークにおける、海外の多種多様なディスプレイ広告のネットワークラインナップを増やしてほしいと、期待を寄せている。
作業的な仕事は自動化 クリエイターは次なる戦略に専念できる
どの媒体社でも、もっとも高い収益を得られるネットワークを探したいのは同じこと。しかし、そのためには、自社でアプリのSDKを書き換えなければならず、さらに、ユーザー端末からのアプリの更新も必要になるため、気軽に試すのは難しい。
AdStirではこれを解決するため、配信用にJavaScriptとSDKの2つを用意している。JavaScriptであれば、アプリSDKの更新/改修を一切することなく、管理画面での操作だけで、アドネットワークの追加・管理・運用を行うことができる。
AdStirを導入することで、複数のアドネットワークを手軽に試せるようになるわけだ。収益増大だけでなく、エンジニア作業工程数の大幅削減というメリットも生まれる。煩雑な作業が発生するのを避けて、さらなる収益化に踏み込めなかった状態が、AdStirの導入で一気に好転するのだ。
また、多くの事業社では、アプリ開発ディレクターが企画、システムデザインを調整し、形にするところまでを担っている。それに加えて、広告収益管理をしなくてはならないことも多い。本来、ビジネス戦略のさらなる一手を考えなくてはならない立場にあるはずなのに、作業的な仕事に手がとられていては、企業にとって大きなロスになってしまう。
AdStirをいち早く導入した企業には、こうしたロスをなくし、進化の速い業界において限られたリソースを開発に集中させたいという意向もあるようだ。
人気アプリ『みんなのお弁当』『ただデコメDX』が導入
国内ならではの手厚いサポート体制で事業のスピードを緩めない
同じく、モバイルコンテンツの企画開発を手がける株式会社フルイヤーも、AdStirの導入によりアプリの収益化を促進している。『みんなのお弁当』『ただデコメDX』などの人気アプリを手がける同社でも、スマートフォンアプリの収益化は大きな課題になっていた。
インターネットメディア事業部の津久井洋介氏は、「ユーザーには無料で楽しんでもらい、拡散を図れている反面、複数のアドネットワークを試して収益を引き上げるところまでは手が回っていませんでした。それが、AdStirを導入したことで、手間をかけずにさまざまなネットワークを試せるようになり、収益拡大だけでなく作業工程数の削減にもつながっています」と話す。
津久井氏によると、AdStirがリリースされるまさに直前に、海外のSSPの導入を検討していたという。まだ当時は、国内のSSP提供事業者がなかったからだ。海外のSSPだと、当然ながら規約やマニュアル、サポートデスクも英語対応になる。スピード感をもって、臨機応変に事業を展開していきたいタイミングで、こちらのニーズに応じた細かいサポートが受けられそうにないため、二の足を踏んでいたそうだ。
「その点、AdStirはささいなことでも不明点を電話やメールですぐ問い合わせることができるので、事業のスピードを妨げることもありません」と津久井氏。また、各アドネットワークの特性や月間での広告在庫/クリック単価の変動など、広告掲載のトライアルの結果を把握しやすく、マネタイズの知見の蓄積にもつながるとのことだ。
スマートフォンアプリ/WebメディアのマネタイズをAdStirが支援
ngi group メディアプラットフォーム事業部 チーフプロデューサーの堺真幸氏には、すでに導入を開始している媒体社から、「マネタイズの最大化作業は、PDCAサイクル運用に非常に工数がかかるので、大きな課題としていた」といった声が寄せられているそうだ。
「広告を運用し、収益を最大化するために必要な技術/経験、そしてその作業は、非常に負荷の高いものです。また、多くの人に受け入れられるアプリを開発するために必要な技術や経験とは異なります。
当社としては、クリエイターの方々には、本来の専門分野である『ユーザーを喜ばせるコンテンツを探る』ことに専念していただき、最適な広告配信や収益最大化には、マネタイズSSPツールであるAdStirをご利用いただく。そうすることで、媒体社様の収益拡大へつながり、ひいてはスマートフォン市場の発展につながればと考えています」
11月からWebサイトへの対応も開始したため、アプリ以外にもWebメディアからの引き合いも増え、いま着実に事例が挙がっている。後編では、他のサイトに先駆けてAdStirを導入したWebメディアの事例を紹介しながら、AdStirの最新の仕組みと次なる進化について探る。