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eMetrics Marketing Optimization Summit, New York, 2011

eMetrics: Marketing Optimization Summitに参加して感じたこと


分散したデータを統合して洞察を得よう

 今回、いろいろなセッションで「ビッグデータ」という表現を耳にした。カタカナで書くと新しいキーワードのように聞こえるが、「最近はデータが増えすぎて大変だね」と自分達の置かれた状況について共感しあうための表現のようにも聞こえた。

 「ビッグデータ」は新しい概念でもテクノロジーでもなく、単に「膨大なデータ」と言っているにすぎない。日本語で例えると、誰かが「今はデータ爆発の時代だ」などと言い出し、それを聞いた同じ業界の人たちが「そう、データ爆発に備えよう」「解析はデータ爆発を生き抜く鍵だ」などと同じ表現を使い出しただけであって、バズワードとして大げさに捉える必要はなさそうだ。

 いずれにせよ、デジタルマーケティングの分野では、アクセス解析に限らず、さまざまなツールを駆使してデータを取得・集計・分析する必要がある。問題なのは、量的なデータの増大に加えて、データの種類や管理方法も増えている点だ。顧客の意図や行動を理解し、ビジネスの精度を高めるという同じ目的のために、いろいろなシステムで顧客データを集めている。システムごとに分断されたデータをそれぞれ分析すると、木を見て森を見ない状態になるため、判断を誤る可能性がある。また、分析のために各システムで似たような作業を行う結果、分析の効率も落ちていく。

 こうした分散したデータを統合するためのサービスは、既に数多く販売されており、企業によって活用されているようだ。イベント内の展示ブースでは、GoogleアナリティクスやWebTrends、ExactTargetや各種ODBC、APIと連携し、取り込んだデータをExcel上で集計・加工して視覚的なダッシュボードにする「Unilytics」、SiteCatalystから生データを取り込んでMicrosoft SQLサーバーによるデータマートを構築し、各種データの統合や分析・交換を可能にする「iJento」、GoogleアナリティクスのデータをExcelやPowerPointに取り込む「ShufflePoint」がスポンサーとしてデモや紹介を行っていた。

 マーケッターやコンサルタントがおすすめツールを紹介する3日目のセッションでは、GoogleアナリティクスのデータをExcelに落とし込む「Next Analytics」や「Excellent Analytics」、さらにダッシュボードも作成できる「Analytics Canvas」、複数のサービスに対応した自動ダッシュボード作成ツール「GoodData」、複数のシステムと連携してデータを統合するプラットフォーム「snapLogic」、データをリアルタイムで多角的に分析して関係性を視覚化できる「tableau」などが紹介された。

 その他セッションの事例発表でも、特定の1つのツールについての発表は皆無に近く、どのツールをどう組み合わせて最適化やターゲティング、CRMなどの目的を達成したのか、という事例がほとんどだった。企業は複数のツールを活用し、各種データを統合して分析することで、既に成果を出しつつあるのだ。

解析ツールのレポート機能はオマケみたいなもの

 前述のおすすめツールを紹介したMashable Metrics社のトーマス・ボシルヴァク氏は、プレゼンの中で「現在のWeb解析ツールはデータの収集には強いが、レポーティングや分析の機能が弱い」という発言をした。これには筆者も非常に共感を覚え、会場内でも同意のうなずきが見受けられた。

 確かに、アクセス解析のツールが持つレポート機能は、対象期間を絞り込み、単一の変数について区分(ディメンション)ごと、または時系列で合計値を表示する程度の機能しかない。ちょっとしたインタラクティブな機能がついていたとしても、基本的には合計値を表示しているだけであって、多種多様なデータを自在に操り、隠れたパターンや法則を見出すようなデータマイニング的な分析は難しい。

 そもそも、Webから得られるデータは顧客の行動の一部でしかなく、その限定的なデータのみを扱うアクセス解析ツールが提供するレポートだけを見ていても、大きな発見は得られない。そういう意味で、アクセス解析ツール内のレポート機能は、取得したデータをプレビューする程度の意味しか無いのではないだろうか? 分析が不要だからレポート機能を単純化しているのではなく、データは統合してから分析する必要があるため、割り切って単純な機能しか提供していないのだ。

 このことは、「アクセス解析は魔法のソリューションではない」「解析の費用対効果を考えてほどほどに」というようなアクセス解析限界論とも通じるものがある。ただし、限界があるから重要度を下げるのではなく、“必要なデータの1つとしてドライに捉え、本当に必要なデータ統合や分析のための努力やコストは惜しまない”というアグレッシブな姿勢の方が前向きで建設的であり、筆者は共感できる。

 アクセス解析ツールは、Webでのインタラクションから必要なデータを取得できれば十分。解析ツールのレポートなんてオマケみたいたものであり、制約の中で無理に使う必要はない。取得したデータはExcelなどに落として、自由に分析・加工する。Excelで不十分なら、高度な分析ができるツールや視覚的な表現が得意なツールを併用すれば良いのだ。

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統合するからこそアトリビューションが問題になる

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この記事の著者

清水 誠(シミズ マコト)

Webアナリスト/改善リーダー。

1995~2004年まで凸版印刷・Scient・RazorfishにてWebコンサルティングやIA・UI設計に従事した後、事業会社側へ転身。UX/IAやデジタルマーケティングの導入による社内プロセス改善の推進と事例化を行っている。ウェブクルーでは開発・運用プロセスを改善し上場を支援、日本アムウェイでは印刷物のデジタルワークフローとCMS・PIMを導入、楽天では...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2012/11/06 17:19 https://markezine.jp/article/detail/14801

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