Webプロジェクトとして”は”成功
ところが、報告会場はそういう空気ではなかった。「Webプロジェクトとして”は”成功でした」とコメントをいただく。仕事としては評価されたものの、今後の追加プロジェクトはペンディングとなった。

確かにWebサイトからの問合せは増えているし、ダウンロードでリード獲得もできているのだが、なかなか売り上げにつながってこない。
Web側は成功したが、後の営業フォローがうまくいっておらず、営業売り上げアップのプロジェクトとしては失敗だったという評価だった。私は悔しくてたまらなかった。同時に、自分の力の足りなさを痛感した。
最初はリードタイムが長いだけで、あとから成果が出てくるかと淡い期待も抱いていたがさらに3ヶ月経ってもそういう未来はこなかった。
そこで、一緒に苦心してきた担当者の方と原因の追究に当たる。すると、BtoBのWebマーケティングの本質的なカタチが少しずつ見えてくるのだった。
原因は大きく分けて2つ考えられた。
増えすぎた問合せに営業が対応しきれなかった。
営業担当者ももともと必死に働いている現場だった。ルート営業に加えて、グループ内の営業、展示会リストのフォローなどをこなしている。通常業務で手一杯。
そこに4倍や8倍といった数の問合せが増えても、丁寧に対応することは難しい。営業のキャパシティを完全に超えてしまっていたのだ。
詳しく調べると返答をしていない問合せもあることが分かる。もしそれが優良な顧客だったり、急ぎの案件であったとすればクレームにもつながりかねない。
つまり、営業部門が新しい問合せが欲しい状態か、をはじめに見極めなければならないのだ。営業部門が問合せを喜ばない段階で問合せを増やしても、フォローに無駄が出る。今行うWebマーケティングの施策は、今、営業部門が抱えている課題の解決にならなければならない。
問題はそれだけではない。
営業のプロセスは従来どおりだった。
営業の仕方も従来どおり行っていた。持参する資料ももちろんそのままだ。この場合、Webサイトを非常に魅力的にした分、持参するカタログや定型提案書とギャップができてしまっていた。
情報がリッチなWebサイトを見て問合せをしようと決断した顧客にとって、送られてきたカタログや持参された定型提案書はいかにも退屈なものであっただろう。
よくよく調べていくと、Web問合わせには新人の担当が当たっていたことも明らかになった。今までWebサイトからの問合せは、「カタログください」や「とりあえず見積もりを」といったようなものも多く、積極的に営業フォローしてよいものか判断がつかなかった。そのため、新人をまず訪問させ、感触を聞いてくる営業を行っていた。
Webサイトからの問合せは新規営業の場合がほとんどだ。新規営業は既存よりも6倍難しいとも言われている。その難敵に新人が挑んでも、玉砕されて帰ってくるばかりだ。
顧客からしても、新人の担当が来て、まだオーダーするかも分からないのに根掘り葉掘りヒアリングされる。自分たちは大切にしてもらえない顧客なんだな、と感じさせてしまったかもしれない。
そんな状態で商談を深めたり、有利な交渉ができるはずがない。Webサイトが進化したことに対して、営業プロセス全体で顧客から見た情報の流れを見直すことを忘れていたのだ。
問合せの質を高めたり、営業上の判断がつきやすくするようにリード情報もリッチにしなければいけない。営業訪問時に持参する資料や提案書と合わせて考えなければならないし、体制や初回訪問のやり方も合わせて考えるべきだったのだ。
つまり、営業プロセス全体の中でWebマーケティングにどんな役割を与えるかを、きちんと設計しなければならないのだ。
BtoBのWebマーケティングはインターナルな部門を含めた、すべてのステークホルダーのためのものでなくてはならない。顧客はもとより営業部門やマーケティング部門などすべてのステークホルダーのために、新しいひとかたまりの営業プロセスとして考えなければ、ひとつながりの力にはならないのだ。