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あの先進企業に密着!第2回「リクルート」

「広告会社としてのリクルート」に死角はあるか
――今後も得点王に君臨し続けるための提言


「そもそも」論をもう一度考える時か

 経済後退による消費者の合理志向の強まり、そしてインターネットによる最適情報探索の容易化。

 この2点はリクルートのビジネスにとって追い風になったと思います。「より安い」を求めたり、「自分にピッタリ」を探し出す消費者は、商品に過剰な意味づけを求めません。そもそも、リクルートの「マッチング・ビジネス」は検索機能があって成り立つものであり、紙の時代から「ネット的」な要素を備えていました。

 広告会社の古株のクリエイターから見ると、そうした情報が「広告」として幅を利かすのは「身も蓋もない」状況に見えるかもしれません。しかし、消費行動というのは、そもそも奇麗事で成り立っているわけではない。広告が生み出した「価値」に対して、あまりに過剰な対価を払っていたともいえますよね。

 そうした追い風の一方で、リクルートのビジネスも新たな課題に直面していると思います。「具体的に考える」ことを急ぐあまり、「ビジネスの意義」を練りこむことが少々足りないのでは?と思うことも散見されるのです。

 今年になって、「ホットペッパー」「じゃらん」などの事業においてフェイスブックをめぐるちょっとした騒動がありました。

 リクルートが加盟店に代わって、フェイスブックのページを作成し、クーポンが配布されたのですが、事前の周知が直前だったこともあって、一部業者の反発を招いたのです。

 これについては、記事下の「関連リンク」に紹介した記事(日経ビジネスオンライン7/20)を参照していただくのがいいでしょう。リクルートとしては、「よかれ」と思って行なったことが、一部の店舗からすると「勝手に」と思われたようなのです。

 このニュースを見て、多くの人はリクルートがソーシャルメディアの特性をつかみきれてなかったのでは?という感想を持ったでしょう。店舗側も、主体的に情報発信をすることが増えている。何でもリクルートに「お任せ」していた時代ではなくなっていることに気づいていなかったのでは?という視点です。

 たしかに、そうした側面があったことは事実でしょう。しかし、私はまた異なった見方をしています。それは、リクルートが「具体的に考えること」に走り過ぎたために、「そもそも何のために?」という抽象的な思考が不足していたのではないか?という視点です。

 いわば、今回の騒動はリクルートの行動が「オフサイド」として捉えられたと思います。

 そもそも、リクルートのビジネスは「企業と消費者」のそれぞれの役に立ったからこそ、伸びてきました。そして自社も利益を上げることで、まさに「三方よし」が実現されていたのだと思います。

 ところが、前述の記事ではリクルートの方のこんな発言がありました。

「私はクーポンビジネスについては、消費者に喜ばれるものと、お店に喜ばれるものは本質的に相容れないと考えています」

 では、その対立をどのように克服するのでしょうか?

 ネットの時代になって、消費者も企業(お店)も、情報ビジネスの仕組みを知るようになりました。そして、本当に価値のあるサービスを選択するようになりつつあります。こうした環境変化の中では、「本当に社会や人々にとって価値や意味があること」でなければ、ビジネスとして長く続いていきません。

 伝統的な広告代理店がなかなか具体的な新ビジネスを展開できない中で、リクルートはたしかにシュートを打ち続けてきた。しかし、いま一度立ち止まって、自社ビジネスの社会的価値という「そもそも論」を深める時が来ているようにも思います。

 リクルートの新サービスを待ち望んでいる消費者や企業は、まだまだ多いはずなのですから。

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この記事の著者

山本 直人(ヤマモト ナオト)

マーケティング/人材育成プランナー。青山学院大学経営学部マーケティング学科兼任講師(マーケティング・プロフェッショナル実践I・II)。1986年 慶応義塾大学法学部卒業。同年博報堂入社。制作局コピーライター、研究開発局主席研究員(兼)ブランドコンサルティングコンサルタントを経て人事局人材開発担当ディレクター。2004年8月独立。

独立後は、マーケティングスキル、営業能力開発、スキル開発、若年層モチベーション向上等を中心とした人材育成コンサルティング/トレーニング、および商品開発、ブランディング、経営理...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2011/12/27 17:25 https://markezine.jp/article/detail/14907

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