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2年目の美咲、新たな困難に挑戦!『ソーシャルメディアマーケター 美咲2年目』発売特別企画 ─ 第1回


指令1~緊急事態発生!クライアントの炎上事故に対応せよ!(本書より転載/第1回)

クライアントから炎上によるSOS!
ネット上には掲示板のまとめブログが多数立ち上がり、ネットニュースにも掲載されてしまった。ツイッターの拡散スピードは「ブログ時代」とは比べ物にならないくらい早い。ど、どうしよう!

 ソーシャルメディアユーザーの急激な拡大に伴い、近年、炎上事故(企業や個人にソーシャルメディア上を中心に批判が殺到すること)が多発している。炎上は、ブログが普及し始めた2005年頃からよく聞かれるようになった言葉であり、現象でもあるが、2010年頃からその発生源や拡散過程に大きな変化がみられるようになった。当初は有名人による不適切発言や、企業の「やらせ・なりすまし・サクラ行為」などが発端となっていたが、本格的にツイッターが普及した近年は、一般社員やアルバイトによる不適切発言や情報漏えいが発端となることが急増している。そして、その拡散スピードは「ブログ時代」とは比べ物にならないくらい早い。本章では、どの会社にも起こりうる炎上の現場で、炎上プロセスの解明と解決に向け奮闘する美咲と拓也を追う。

 満開だった桜も名残惜しそうに散り、ゴールデンウィークを翌週に控えて、心なしか世の中がそわそわしているように感じる週はじめの月曜日。アドレボのオフィスは開放的な大きな窓があり、暖かな日差しが降りそそぐ。

 「ふわ~っ、眠いぃ」

 うららかなお天気にはさからえず、私、遠藤美咲も思わずあくびをひとつ。いっけない! コーヒーでも飲んで眠気を覚まさなきゃ。そんな休みボケの覚めない朝10時半にクライアントである大手飲料メーカー、日本ビバレッジの勅使河原広告宣伝部長から電話がかかってきた。

 どうしたんだろう。部長との連絡は主にメールで、電話で話すことは滅多にないのに。しかも月曜日の午前中に、先方からかかってくるなんて。私はざわざわと嫌な胸騒ぎがした。

 「遠藤さん、いますぐ弊社に来てくれ! 大変なことになっているんだ!」

 いつもは冷静沈着な勅使河原部長が殺気立っている。電話の声から尋常ではない「何か」が起こっていることが瞬時に伝わってきた。美咲はあいさつもそっちのけで、勅使河原に単刀直入に尋ねた。

 「部長、いったいどうされたんですか!?」

 「今朝、出社したら、ホームページやお客様相談室に苦情が殺到しているんだ。私もまだ正確な情報を確認できていないが、どうやら、この週末にうちの社員がネット上で何やら問題を起こしたようなんだ。ツイッターの公式アカウントや、フェイスブックページにも批判的なコメントが殺到している。かなり大きな問題に発展しそうなので、緊急対策本部を設置して対策をとりたい。月曜の朝から申し訳ないが、いまからすぐに来てほしい」

 「炎上(注1)だわ!」

 美咲の背中に寒いものが走った。最近のソーシャルメディアでの炎上多発をうけ、アドレボのソーシャルメディアチーム内にも「リスクマネジメントチーム」が設置され、国内外の炎上事故研究や具体的対策を支援していた。

 ツイッターが本格的に普及した現在、炎上のスピードにも拍車がかかっている。問題発生からわずか数時間で炎上に至るケースが多く、企業の危機管理にも「時間単位」での対応が求められている。

 「承知しました。いまからすぐに拓也くん、あ、弊社の伊藤とともにお伺いします。準備してすぐに駆けつけますので、30分くらいで到着すると思います!」

 美咲と拓也は「長い一日」になることを察知し、午後の予定をすべてキャンセルして、駆け込むようにタクシーに乗り込んだ。美咲はすかさずスマホ(スマートフォン)を取り出して検索を始めた。それを見ながら、わけもわからずに呼び出された拓也が問いかける。

 「美咲さん、いったい何が起こっているんですか」

 「え? あ、うん。どうやら、日本ビバレッジさんで炎上が発生してしまったらしいの。詳細は聞いていないからわからないんだけど……あっ! これだわ!!」

 拓也は美咲の大声に吹き飛ばされるかのように、タクシーのドアに背中を強くぶつけた。

 「どっ、どうしたんですか!?」

 「きっとこれよ、これ!!」

 美咲が差し出したスマホの画面にはニュースサイトが映し出されていて、記事のタイトルにはこう記されていた。

 日本ビバレッジ社員が飲酒運転を暴露して大炎上/「『飲んだら乗るな』は車だけ☆原チャリはOKっしょ!」

 「こっ、これは……」拓也は絶句した。

 記事によると、日本ビバレッジに勤務する男性社員が金曜日の深夜、飲酒をしていながら原付バイクを運転したことをツイッターでつぶやき、ネット上で炎上しているとのことだった。

 詳細は書かれていないが、最後に、「現在、書き込みをしたとみられる社員から経緯を聞き、事実関係を調査中で、その結果にもとづき、社の規定に従った処分を検討する」という日本ビバレッジのコメントで締めくくられている。

 ニュースは今しがた配信されたばかり。炎上発生時は急勾配の坂道を転がり落ちるように一気に加速し、騒ぎが大きくなる。いま、まさにその瞬間なのだ。美咲と拓也は互いに目を合わせ、これから始まるであろう長い一日を前に、息を飲んだ。

注1

 ソーシャルメディアなどで企業や個人に非難や批判が殺到すること。ソーシャルメディアだけでなく、メールや電話での抗議なども含まれる。大規模な炎上になると、実社会での不買運動やデモに発展することもある。

 続きは3月12(月) 14時に公開予定です。ぜひご覧ください!

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MarkeZine(マーケジン)
2012/03/19 10:24 https://markezine.jp/article/detail/15325

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