eMetricsとは
eMetricsは、2002年から毎年開催されているWeb解析を中心としたデジタルマーケティング関連のイベントだ。世界各国の都市で数ヶ月ごとに開催されていて、今回が今年初の開催となった。
昨年10月に開催された前々回と同様「Data Driven Business Week」と題し、「Conversion Conference」「Predictive Analytics」「GAUGE」など複数のイベントが同じ会場で開催されたため、千人規模の参加者がマリオットホテルに集まる大規模なイベントになった。西海岸という地理的な利便性のためか、今回は日本からの参加者も多かったようだ。
基調講演「Sterne Measures」
初日の朝に登壇したのは、eMetrics創設者のジム・スターン氏。「Sterne Measures」(スターンは計測する)と題した基調講演が行われた。
講演の中で挙げられたトピックは次の4点だ。
1. プライバシーに配慮しよう
まず、2月16日にNew York Times誌に掲載されて米国のアナリティクス業界で話題になったスーパー「Target」の事例について言及。
米国では、出産後に各種企業から育児関連のDMが届くのが一般的だが、Targetの場合は店舗での購買履歴に基づいて出産時期が近いことを予測。他社に先駆けて、出産よりも前にターゲティングされたDMを送付したところ、売上が上がった、というビッグデータ系の事例だ。
ところがある日、「高校生の娘に赤ちゃん用品のDMを送りつけるとは何事だ」、と怒った父親からクレームが入った。丁重に謝罪した店舗マネージャーが後日、フォローの電話をかけたところ、その父親は「娘と話したところ、本当だったと分かった。自分が妊娠について知らなかっただけなのにクレームを入れて申し訳ない。」と応じた、という。
データを取得し、追跡されるという行為に対する不安感とプライバシーの問題を指摘し、「『気持ち悪い』『余計なお世話』にならないよう、マーケティングは気をつけて上手にやろう」とスターン氏は主張した。
2. モバイルの時代
次に、Flurryによる調査結果を紹介。印刷物、新聞、テレビといったメディアの広告収入は下降しているが、ウェブとモバイルは増えている。今後はソーシャルとモバイルの時代だ、と改めて指摘した。
3. データ過多の時代
3点目はいわゆるビッグデータについて。
1. Volume(データ量)
データの量が増えたというのは最近のデータ解析事情が抱える特徴の一つ(きっかけ)でしかなく、次の2点についても考慮する必要がある、と主張。
2. Variety(データの多様性)
量が増えた結果、種類が多様化した点に留意する必要がある。伝統的なデモグラフィックやサイコグラフィックデータ、ダイレクトマーケティング、CRMに加えて、営業支援ツールやコールセンターのデータ、Web解析、ソーシャルメディアの各種指標なども統合し、包括的な分析をすることが可能になった。
例えばEuclid Analyticsは、小売業向けにWeb上の行動と店舗内の行動を結びつけて解析することを可能にした。
また、LightHausのソリューションは、店舗に設置するカメラを利用し、来店者の動きをヒートマップ化したり、表情や性別、世代を認識。Webの解析や最適化と同様に、リアルの店舗における陳列棚ごとのトラフィックやコンバージョン分析、スタッフ別のパフォーマンス分析、業務効率の改善などが可能になった。
表情の認識についてはMITで研究が行われていて、affectiva社が実際に商品化した、という。
3. Velocity(解析の迅速性)
3点目は、迅速な対応。ほぼリアルタイムで分析できることが重要になった、という意味だ。