4.Art of Analysis
これら3点の特徴によって、従来のビジネスインテリジェンス(BI)は技術的な要素から人間的、デザイン的な要素へシフトしつつある。そして、この変化に伴い、アナリストに求められることも変わってきた。
アナリストは、技術や数学、ビジネス、多言語、問題解決能力、水平思考(lateral thinking)に精通している必要がある。各専門家とのコラボレーションも重要であり、だからこそeBayはデータに関するコラボレーションのプラットフォーム「DadaHub」を自前で構築し、戦略的な投資を行っている(参照:eBayの成長を支えるデータ解析の舞台裏)。分析結果の視覚化やコミュニケーションも重要、という点で「アナリティクスのアート」が重要だ、とスターン氏は主張する。
このこともあり、今回のeMetricsではSASがスポンサーとなって、各セッションで発表された内容をその場でホワイトボードに描くという試みが行われた。スクリーンの横に設置された大きな紙に、数本のペンを持ったアーティストが発表内容を表現していき、ビジュアルの議事録を作成したのだ。

Web Analytics AssotiationからDigital Analytics Associationへ
最後に、スターン氏はeMetricsについての歴史を振り返った。
- 1995年、最初の書籍で9ページを使って計測と解析について解説
- 2002年、書籍「Web Metrics」を出版すると同時にeMetricsをスタート
- 2004年、Web Analytics Association(WAA)を他の2名と共同創設
- 2005年、Web解析は一部でしかなくなり、トピックが広がったため、eMetricsのサブタイトルをMarketing Optimization Summitに変更
次に、WAAのメンバーが登壇し挨拶。そして、組織名の変更がアナウンスされた。「Web Analytics Assotiation(WAA)は、本日をもってDigital Analytics Association(DAA)に改名します」
これはWeb解析の多様化という昨今のトレンドを受けた改名であり、ボードメンバーによって2011年に決定され、準備を進めてきたという。公式サイトやTwitterのアカウントなどには既に変更が反映されている。
昨年あたりから既にWebに限定したアナリティクスのみのセッションはほぼ姿を消し、モバイルやソーシャル、ビジネスインテリジェンス、組織論、コミュニケーション、データ統合、リアル(オフライン)との融合、などが中心トピックになっていたことを考えると、この変更は当然だろう。「ようやくだ」「予想よりも遅かった」などの反響がTwitterなどで飛び交っていた。
日本では、歴史的な経緯で「Web Analytics」が「アクセス解析」という限定的な名称のまま発展・普及してきたが、そろそろこの訳語も見直す時期に来ているのではないだろうか。名称がすべてではないとはいえ、業界としてどこまでを守備範囲とし、どのような価値を提供していくのか、を議論して明確化しそれを対外的に発信していくことが重要だと筆者は感じた。