「マルチスクリーン時代にマーケティング投資を可視化する挑戦」を講演したのは、グーグル株式会社 マーケットインサイト リサーチマネージャーの巳野聡央氏。
現在、AdWordsをはじめとする同社の広告ソリューションは、オンラインビジネス業以外の企業でも活用されている。とくに大企業にとって、オンラインはあくまでチャネルの1つでしかない。オフラインやクロスメディアキャンペーンの効果検証も求められるようになってきたという。
しかしながら、既存の調査方法では以下のような課題があった。
- マルチスクリーンを計測できるメディア視聴パネルがない
- 単純なアンケートによるリーチの測定は誤認や忘却が生じるため精度が低い
- 通常のキャンペーン後のアンケートでは正確なブランディング効果がわからない
- 広告出稿データと売り上げデータの相関だけでは本当の影響がわからない
そこで登場したのがSSP(シングル・ソース・パネル) Initiative という広告効果測定プロジェクトで、3つのパネルから構成されている。
Cross-media Efficiency Panel では、1人のユーザーに対し、テレビ、パソコン、モバイルのメーターを導入し、クロスメディアキャンペーンの重複リーチやトータルリーチ、広告接触回数を計測する。Randomized Experiment Panel では、パネル内のランダムにグループ分けされたユーザーに対し広告配信実験を行うことで、メディアバイアスを除去した広告のブランディング効果を検証する。ROI Measurement Panel では、Cross-media Efficiency Panelの一部のユーザーに対し、さらに小型のバーコードスキャナを提供する。ユーザーに購入商品を常にスキャンしてもらうことで、広告接触によるセールスへの影響を分析する。
グーグル日本法人では2011年から広告主の協力を得て、広告効果の測定に本格的に取り組み出した。セッションでは、日本コカ・コーラの事例を紹介。同社でコミュニケーションプランニング&メディア統括部長を務める渡仲容子氏が「GEORGIA X(ジョージアクロス) 和-STYLE」での取り組みについてプレゼンした。
ジョージアクロスでは2011年11月から12月にかけ、TVCFを中心にクロスメディアキャンペーンを展開。缶コーヒーエントリー層=20代男性にアプローチするには、どのメディアをどの割合で使用するのが効果的か、客観的な判断材料を求めるために調査を実施することとなった。
キャンペーンは、TVCFとオンライン広告で87%にリーチするなど成功をおさめた。とくにオンライン広告によるリーチが予想を大きく上回ったという。また、調査結果より以下の知見が得られた。
- リーチ効率の可視化とメディア投資配分の最適化
- 若い男性層へのアプローチにおける、オンライン広告の明確な貢献
- オンライン広告が認知のみならず、深いレベルのコミュニケーションに役立つこと
この調査結果に手応えを感じた日本コカ・コーラでは、5月21日発売の「ジョージアクロス UK STYLE」では、SSP Initiativeとのコラボレーションを実施予定だ。
最後にグーグルの巳野氏は、SSP Initiativeがユーザーはもちろん、広告主や媒体社などすべての関係者にメリットをもたらすとして、今後も積極的に調査結果を公表していきたいと述べ、講演を締めくくった。