「売上を上げればいい」という単純な思考

清水:そういう最適化の考え方ってどんなビジネスモデルのサイトでもあてはまると思いますよ。売上がやみくもに上がればいいってわけではなくて、あんまり上げすぎると次の月が大変になるんですよね。
押久保:ええ、まさにうちのサイトもそうなんです(笑)。去年、一生懸命がんばったけど、今年さらに2倍がんばれみたいに。
清水:目標に対してうまいことピタっと合わせられる、コントロールできるようにするというのが大事。上げすぎず、下げすぎない。増えすぎたら逆に減らす。
小川:大事なのは調整弁なんですよね。いざというときにきゅっと増やせる、きゅっと減らせるリソースを持っているかどうか。

清水:売上のゴールを分解して、何が効いてこの結果に至っているのか、どこを上げたらもう少し上げられるのかという因果関係をすばやく理解して、迅速にアクションを起こせるようにすることが大事ですよね。
小川:そのスピード感ていうのが難しいところなんです。分析と施策が密接に連携しているケースって少ないですし、分析ばかりやっていると、なかなか施策につながらない。結果、タイムラグがあり、素早さが失われてしまいます。
ユーザーの入口から出口までがわかりやすく可視化された図みたいのがあって、偉い人が「増やしたいな」と思って画面上でコストなどの条件を入れると、リアルタイムで施策が実施され、実際に該当ステップでの流入や遷移が増えたら「おお、流れた流れた」みたいなのがあればいいですよね。(一同爆笑)
清水:それ究極の経営ダッシュボードですよね。でも不可能ではないですよ。
予測分析は、本当にビジネスで使えるのか
小川:分析と施策を突き詰めていくと、大事になるのは予測の精度の話になると思うんです。売上が足りないんだとしたら、早い段階で気づいたほうがいい。このままだと厳しいという見立てが立てられるのであれば、それって必要なんだろうなと。
清水:現状把握と予測。両方必要ですよね。
小川:予測分析はこの1、2年くらい、これからという感じがしますね。
清水:eMetricsと同時開催されたイベントのひとつに「Predictive Analytics World」というがあったので出てみたら、あまりに難しすぎてよくわからなかった(笑)。
小川:我々も予測分析には取り組んでいて、少しずつ成果が出始めているのですが、一方で課題も感じています。

というのは、分析する人がいて、リスティングとかバナーとか施策をする人がいるわけです。分析の結果、「リスティングは来月これくらい予算使ってください」というのが出る。それを分析担当者は上司に「こういうふうに来月はちょっと減らしますよ」と説明します。そうすると「なんで?」って聞かれるわけです。「よくわからないけど、こういう計算結果が出たから」と言っても「なにそれ」ってなる。
だから、分析担当者も正しく理解して伝える必要があるし、施策担当者もその内容を理解して、なおかつ納得しないといけない。自分が今まで算出してきた手法と比較して「より信頼できる」と思ってもらうことですね。でも精度を上げようとすると、仕組みが複雑になり、理解の難易度も上がってしまうという問題も。
清水:それか、もう完全な理解はあきらめて、信頼されることですよね。実績つくって。
小川:でも、そうすると難しいのは、この人(分析担当者)いらなくなるんですよね。役割が減っちゃうので。
清水:そういうもんだと思いますよ。プロセスとルールを固めるために一時的に人が手と頭を使うだけ。勝手に回り続ける仕組みをつくるのが究極のゴール。