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消費者がオンライン・オフラインを行き来する時代 日本でO2Oを成功させるために必要な視点

 スマートフォンの普及を背景に「O2O」に注目が集まっている。MarkeZineでは、公益社団法人 日本アドバタイザーズ協会 Web広告研究会の本間充代表幹事、事業会社のO2O導入を支援する立場にあるNTTコミュニケーションズ株式会社 アプリケーション&コンテンツサービス部 マーケティングソリューション部門の塚本良江部門長の両氏による対談を実現。最新動向/事例に詳しい識者は、O2Oをどのように見ているのだろうか。

写真左:公益社団法人 日本アドバタイザーズ協会 Web広告研究会 代表幹事 本間充氏 
写真右:NTTコミュニケーションズ株式会社 アプリケーション&コンテンツサービス部
マーケティングソリューション部門 部門長 塚本良江氏
写真左:日本アドバタイザーズ協会Web広告研究会 代表幹事 本間充氏 写真右:NTTコミュニケーションズ株式会社 アプリケーション&コンテンツサービス部 マーケティングソリューション部門 部門長 塚本良江氏

海外事例は参考にならない? “Except Japan”なO2O事情

 Facebookが広まったことで「ソーシャルメディアマーケティング」に取り組む意識が芽生え、スマートフォンへの乗り換えが進むと「スマートフォン最適化」の必要性を実感するWeb担当者が増えてきた。

 そしてこれから重要性が増してきそうなのが「O2O(Online to Offline)」関連の取り組み。街中でもスマートフォンなどで本格的なネット利用をする人が増えてきたことで、購買を促進させる施策をオンラインとオフラインを連携させて考えることが大切になると言われている。

日本アドバタイザーズ協会Web広告研究会 代表幹事 本間充氏

 ただO2Oの場合、海外の先進事例を参考にすれば良い、というわけではなさそうだ。公益社団法人 日本アドバタイザーズ協会 Web広告研究会の本間充代表幹事は、O2Oを取り巻く日本の状況について、次のように分析している。

 「O2Oについて、よく耳にするのは“Except Japan”。Webサイトで注文した商品を店舗でまとめておいてもらって、来店後はお金を支払うだけで簡単に買い物を済ませることができる。あるいはWebサイトで割引クーポンを提供して、店舗で使われた分、店舗側にキャッシュバックする。そうした一気通貫したシームレスなサービスを提供するO2Oプレイヤーが、海外では登場してきています。それが日本では、流通のプロセスは流通業の業務範囲。長年の商習慣があり、新たに飛び込んでくるプレイヤーがあまりいません」

 ただO2Oに対しては、店舗を持つ小売業やサービス業だけでなく、メーカーの間でも関心は高くなっていると本間氏は語る。広告投資の効果を正確に把握するため、オンラインでの施策とオフラインでの購買を紐付けたいと希望する企業は多いという。

 日本でもクックパッドがスーパーマーケットと会員IDを連携させたサービスを始めるなど、ID-POSの機能を備えた会員カードを使ったサービスが登場。CRMの観点からも、横串を刺してオンラインとオフラインの顧客データを分析し、マーケティングに役立てたいと考える企業は増えてきているそうだ。

オンラインとオフラインの境目がなくなり、O2Oに目を向ける必要が生まれた

 NTTコミュニケーションズ株式会社で「CoTweet」「Buzz Finder」などのマーケティング支援のツール/ソリューションを提供する部門を統括する塚本良江氏は、本間氏の発言を受けて、マーケティング担当者の間でO2Oが注目され始めているのは「消費者が変わってきているから」だと指摘。

NTTコミュニケーションズ株式会社 アプリケーション&コンテンツサービス部 マーケティングソリューション部門 部門長 塚本良江

 「消費者が意思決定する際、オンラインとオフラインを行き来するようになっています。何かを買ってもらうために、オンラインとオフラインを行き来する消費者の動きを企業が追いかけなくてはいけない状況が自然に発生してきているのではないでしょうか」と分析している。

 例えば、カラオケルーム「ビッグエコー」を運営する株式会社第一興商は、夕方4~5時ごろにサイトへのアクセス数が増えていたことから、帰宅途中の学生、終業前の会社員が割引情報を比較しているのではないかと推測。モバイルマーケティングを支援するNTTコミュニケーションズのWebサービス「モバイルウェブ」を導入し、会員のモバイル用メールアドレスにクーポン付きDMを送るなど、オンラインとオフラインをつなぐ施策に目を向けるようになっている。

資料ダウンロード

 O2Oの先進企業はどのような取り組みを行っているのだろうか。O2Oの 海外・国内の事例をまとめた資料をダウンロード(※リンクをクリックすると外部サイトへ遷移します)

日本のO2O成功事例は、オフラインでの成功事例を擬似的にオンラインでも利用

 今のところ、O2O=「Web会員にクーポン/ポイントを提供して来店を促す施策」と狭義に見る向きもある。クーポンと言えば、コンビニ大手のローソンが店頭端末「Loppi」を上手く活用しているが、本間氏は「ローソンの事例は『ソーシャルを使ったコミュニケーション』と捉えた方が良い」と考えているようだ。

 「ローソンは接客業ですから、オフラインの肌感覚があります。オフラインで上手く回っているオペレーションを疑似的にオンラインに持ち込むことで、O2Oを機能させられているのではないでしょうか。

 ただ、Web広告研究会に参加している企業の多くは、メーカーなどのBtoBtoC企業。どんな商品情報を渡せば喜んでもらえるのか、ということくらいしか消費者のことを分かっていません。消費者との接点を持っていないわけですから、割引クーポンは発行できないし、店頭イベントもできません。

 でも『ソーシャルを使ったコミュニケーション』という視点から考えれば、BtoBtoC企業でもソーシャルメディアを使えば消費者との接点を築けますし、店舗と関係のないイベントは開けるはず。そんな視点を取り入れてO2Oの施策を考えることで、消費者をもっとブランドにエンゲージメントさせることができるようになるかもしれません。

 O2Oで成功しているのは今のところ、以前からオフラインで消費者と良好な関係を築けている企業。オフラインで成功している手法をオンラインにシフトしただけだと理解しておくべきでしょう。これからO2Oに取り組む企業が成功するには、『ソーシャルを使ったコミュニケーション』という視点を持つことが必要なのです」

O2Oはエンゲージメント向上のための施策として考えるべき

 本間氏の主張には塚本氏も同意。O2Oを「販促キャンペーンのための一手法」として考えるのではなく、顧客エンゲージメントを高めるための手法として考えるべきだと訴えた。

 「日本ではソーシャルメディアを使った施策をキャンペーン起点で考えがちです。アメリカではソーシャルメディアをキャンペーン目的で使うのではなく関係強化のために使うのが主流です。

 日本ではO2Oもキャンペーン目的で考える企業が多くなってしまうかもしれませんが、エンゲージメントを高めるための施策として中長期的な視点で考えるべきでしょう。

 海外では“ソーシャルストラテジスト”という肩書きのポジションが誕生し、営業やマーケティング、カスタマーサポートなどの部署を組織横断的に動かしています。日本でもO2Oを成功させるためには、マーケティング上の1施策として考えるのではなく、組織横断的に考える必要があるのではないでしょうか」

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この記事の著者

中嶋 嘉祐(ナカジマ ヨシヒロ)

ベンチャー2社で事業責任者として上場に向けて貢献するも、ライブドアショック・リーマンショックで未遂に終わる。現在はフリーの事業立ち上げ屋。副業はライター。現在は、MONOistキャリアフォーラム、MONOist転職の編集業務などを手掛けている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2012/08/23 12:21 https://markezine.jp/article/detail/15964