SNSを通じた情報提供でリレーションを構築
加えて、企画を訴求する際も、資金を提供した後も"共感性"が重要なカギとなる。サイトに掲載される企画を訴求する記事や、facebookページで公開されるこまめで的確な資金提供者へのプロジェクトの進捗状況を報告するコンテンツは、共感性を意識して作成される。そうした実行者と支援者のコミュニケーションにより、プロジェクトへの支援者の当事者意識を高め、継続的な関係を構築していく。
「もちろん支援する企画として社会貢献性や実現性を審査します。しかし、どんなにいい企画でも訴求の仕方を誤ると、なかなか目に止めてもらえず、共感も得られません。ですから、どんなキーワードに人は共感するのか、何が喜んでもらえるのかといったノウハウを蓄積して、企画の紹介はもちろん、事後レポートやサンクスレターなどにも反映させるようにしています。そうした地道な努力の成果もあって、リピート率も高まってきているんですよ。調達した資金の10%がREADYFOR?の収益源となるので、成約率やリピート率を上げることは事業継続性においても重要なことです」

先にふれたAll or Nothing型の仕組みは、プロジェクトが成立しなければREADYFOR?の収益も上がらない。よってプロジェクトの実行者とREADYFOR?は同じ船に乗って成功を目指している。その為に、支援者へ情報を発信するプロジェクトページでの共感を得やすい伝え方や、SNSを利用した情報拡散の支援を行っている。実行者と支援者をつなぐ資金調達のプラットフォームを提供するだけではなく、プロジェクトが成功する環境づくりを多面的に支援している。
「日本人らしさ」が活きるクラウドファンディングの仕組み
意識が高まってきたとはいえ、日本には社会的活動に対する理解も寄付文化も十分には浸透せず、寄付金額は米国の1/20程度といわれている。しかしながら、米良さんは「だからこそ、チャンスがある」と目を輝かせる。
「日本人は慎重でシャイといわれ、それが寄付文化が根付かなかった理由とされています。でも共感性に基づく“助け合い精神”は世界一だと思うんです。奇しくもREADYFOR?がスタートしたのは東日本大震災が起きた2011年3月。震災を契機にネットを介した寄付や支援が急増した節目の年となりました。震災から1年以上経った今も、誰もが関心を持ち続け、誰かの役に立とうとしています。こうしてみると、日本にも社会活動を支援する“素地”はもともとあったのだと思います」
裏を返せば、仕組みが整うことで日本人は持ち前の共感性を発揮できるのではないか。その結果、社会的な支援活動が活性化し、他者の共感を得ることで誰しもが自分の夢を実現できるチャンスがある社会になる。
「社会貢献活動というと、多くの日本人は大げさに考えすぎてしまいがちかもしれません。寄付に対しても『かっこつけてると思われるんじゃないか』とか『少しじゃ恥ずかしい』なんて考えてしまったり」
そこで「こんな小さな事でもいいんだ」と思えるような小さな企画も支援の対象とできるように仕組みを整え、効率化を図っていきたいと語る。たとえば、これまでの属人的なノウハウに加え、データマイニングなどで「共感性の高いキーワード」を抽出するなど、ITの活用もはじめつつあるという。
誰もが”思い”を実現できる社会をつくる
「まだまだ模索中ですが、日本人らしさが活きる仕組みを創ることで、日本の社会を変えられたらいいなと漠然と考えています。たとえば、日本人は自分から一歩を踏み出すのは苦手でも、『キミがやるなら私も』とか、『みんなでやろうよ』みたいなことには積極的です。また、南北に細長い地形で、地方には多彩な文化や人々の暮らしが今も息づいています。そうした豊かな財産を持つ地方の活性化も『日本らしさ』なのではないでしょうか。まだ少し先になると思いますが、社会活動への支援を通じて、地方の資金や人的資産の流通に役立てられればいいなと思っています」
次々と様々な構想を語る米良さん。しかし、彼女が決して特別なのではなく、誰でも1つは『こうだったらいいな』という“思い”を胸に抱いているのではないだろうか。
「日本に住む全員が社会的な活動に取り組み、支援し合えば、きっと社会はもっと良くなるはず。1人1企画を登録してもらうことが目標です。そのすべての”思い”をしっかりと支援できるようにREADYFOR?を育てていきたいと思います」