店頭にある「ニーズを顕在化する力」
気を付けたいのは、来店インセンティブを高めすぎると、ポイントゲッターのような人が増えてしまう点です。カジュアルに来店するところをうまく捉え、フラッと立ち寄れるというところが重要だと思っています。
実際に「スマポ」の実績を見ても、ご利用いただいているユーザーの半分は、何かのついでにお店に立ち寄るという人が多くなっています。私自身も含めて、誰しも街で時間が空く瞬間があると思います。そういうときに「ここへ行くと良いことがある」という目的を半分ゲームのような感覚で与えることで、来店動機を生み出すことができます。

時間が少し空いたからといって、欲しいものがすぐに浮かぶわけではありません。単純に考えると本屋で立ち読みなどしてしまいがちなのですが、「スマポ」を介してゲームのような要素を持たせることによって、暇つぶしにもつながり、新しい発見にも巡り会うといったメリットを生み出すことが可能になってきます。
たとえば、私にとってマルイは大学生の頃に何回もお世話になった店でしたが、社会人になってからはだいぶ足が遠のいていました。正直、社会人になってからは買えるようなものがあまりなかったことや、当時はコストパフォーマンスが悪いイメージがあり、マルイを「食わず嫌い」していた自分がいました。
有楽町で時間ができてマルイが目の前にあったとしても、それまでの私なら、立ち読みするために駅に隣接する三省堂書店に行っていただろうと思います。しかし、「スマポ」があれば、マルイのメンズシューズ売場に行くとポイントが貯まるということがまずひとつの時間の使い方のオプションになります。
マルイに行ってみると、売場には雨に強くて足が痛くならない革靴が売っていたとします。普通は暇なときに、急に「足が痛くならないビジネスシューズを買おう」と思い立つことはありません。それは顕在化していないニーズだからです。しかし、実際に売り場へ足を運んでそのような商品があることを見て知らされると、ニーズはその場で顕在化されます。
本来、小売店は消費者のニーズがぼんやりとした状態でも、店頭に足を運ぶことによってインスピレーションを与えてくれるという強みがあります。PinterestのSarah Tavel氏も言うように、「自分がほしいものがわからない段階ではウェブ検索はできない。店内を見て回って、いろいろな商品を見て、試しているなかでやっと発見できる。それがオフラインの発見」というのが、ネットと対比してのリアルの本質だと思います。
もし私が三省堂書店に行っていたら、ずっと同じ痛い革靴のまま、立ち読みしていたかもしれません。だからこそ、私が経験したような事実は非常に大事だし、小売店の良さは、まさにそういう偶然の出会いから、ファンが生まれるところ、消費者の印象に残りやすいというところにあるはずです。「スマポ」は、消費者にとってのリアル店舗体験=偶然の出会いを増やすことを目指しています。