誰でも定期販売サービスを始められるプラットフォーム「Box To You」
8月30日にリリースしたばかりの「Box To You」を運営するのは、クリエイターを支援する「Grow! button」を提供してきたGrow!Inc.である。

Box To You は、Facebookのアカウントさえあれば誰でも自分のセンスを生かして定期販売サービスができるプラットフォーム。最近サービスを大幅リニューアルした「Grow! button」からBox To Youが生まれた背景について、「クリエイターを支援したいという想いは共通している」と語るのは、Grow!Inc. CEOの一ツ木氏だ。「アメリカで流行している定期販売サービスだが、日本ではアメリカのように数億円単位の調達を行うことは難しい。けれども、Box To Youというプラットフォームを使って、定期販売サービスの抱える問題を解決できると考えた」。

① 既存のECプラットフォームを利用する際に発生する高額な初期・月額費用
→売上に対する手数料をもらう成果報酬型のサービスに
② 日本人に馴染みのないPayPalによる決済
→米国のstripeというサービスを使うことで世界最安値の手数料でクレジット決済機能を実現
③ 購入者への付加価値の提供
→販売社と購入者がコミュニケーションを取れるよう、買った人だけが入ることのできる専用のFacebookグループを用意
今後は企業とコラボしながらBox To YouのシステムをOEM提供したり、出品者向けにノウハウ共有のイベントを開催したりしていく予定だ。
ソーシャル時代の定期購入サービス
4つのサービスの共通項を見ながら、ソーシャル時代の定期購入サービスについて考えてみると、次の3点が特徴として挙げられるのではないだろうか。
① 差別化のポイントは“キュレーション”にある
サービス提供者自身であれ、外部から呼んで来たキュレーターであれ、キュレーションによる情報という付加価値がサービスの一部として大きな役割を果たしている。消費が控えられがちな現代において、消費者の購買意欲を刺激するには、背景にあるストーリーを魅力的に伝える力が求められるのかもしれない。
② 1対多ではなく、1対1のサービス提供を重視している
いずれのサービスでも定期購入という形態を採った大きな理由として、顧客の顔が見えるサービスにしたいという意志が感じられた。従来のECではインターネットの特性を生かしていかに多くの人に販売するかが重視されて来たが、今回紹介した定期購入サービスでは、ソーシャルの特性を生かして長期的な関係性を築くことでライフタイムバリューの最大化を目指していると言える。
③ 共感を生む“強い想い”を持ったサービスである
資源の少ないスタートアップが力を持つには、人々からの共感が欠かせない。多額な広告費をかけられない分、共感による応援=ソーシャルメディアを使った拡散によって、リーチを広げながらブランド認知を高める必要があるからだ。事業である以上、目的や問題意識を持っていることは当然であるが、それを強い想いとして多くの人に届けられるかどうかということが、スタートアップの成否を分けるポイントとなるだろう。
「JSCA 日本定期販売サービス協議会」発足、情報共有も推進
イベントの最後に、定期販売サービス業会の啓発活動と健全なる発展を目指す非営利団体「JSCA 日本定期販売サービス協議会」の発足が発表された。会長にはGrow!Inc. CEOの一ツ木氏が、副会長には株式会社lap&co. 代表取締役の三浦氏とSAKELIFE代表の生駒氏が就任する。フラッシュマーケティングの「おせち問題」やソーシャルゲームの「コンプガチャ問題」など、事業者による問題意識の欠如から業界全体のイメージ悪化につながるような事態が起きないよう、事業者間で情報共有をしていくことが主な目的だ。
言うまでもなく、従来のECにサブスクリプション型のプランを追加すればよいというものではない。キュレーションやコミュニティ運営など、絶妙なセンスやバランス感覚が求められるソーシャル時代の定期購入サービス。「人×モノ」のコラボレーションとも言える、このサブスクリプション型のサービスは日本でも新たなECの形として定着していくのだろうか。