SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

シリアル・アントレプレナー柴田陽さんに「O2O」と「起業」について聞きました。

いまさら聞けない「NFC決済」

クレジットカード業界におけるアクワイアラーの存在

 米国では、PayPass(MasterCard)やV.me(VISA)がNFC端末をリーダーにかざすことで、サインレスのクレジット決済ができるという仕組みを作っており、日本のカード会社も、オリエントコーポレーション、ジャックスなどアタッカー系のクレジットカード会社はこれに乗っかるかたちで国内の運用をはじめています。

 なぜ、おサイフケータイで先行している日本からこのようなサービスが出てこないのか、とお感じになる方もいらっしゃると思いますが、これはクレジットカード業界の構造が日本とアメリカで異なるためです。

 日本では、加盟店側で発生するリスクはすべて原則アクワイアラー(Acquirer)が負担するという仕組みになっています。アクワイアラーは、クレジットカードの加盟店を審査・認定し、決済処理などを行う加盟店契約会社のこと。つまり、カードリーダーのセキュリティが甘くて不正が起きた場合、その損害はアクワイアラーが負担する必要があるので、店頭でのトランザクションについてどうしても保守的になってしまいます。結果として、決済のつどパスワード入力を求めるモバイル版のSmartplus(三菱UFJニコス)など、ユーザーに手間を強いる仕様になってしまいます。

 一方米国では、VISAやMasterCard、Amex等のブランドがすべての責任を負っているため、柔軟な意思決定が可能です。そのため、PayPassやV.meのようなセキュリティレベルでNFC決済を広めることができるのです。

日本の電子マネーの今後

 日本のアクワイアラー業界は、NFC普及に向けて自主的にセキュリティスタンダードを見直す動きもあるようですので、今後その仕様がどのようになるのかが注目されます。

 電子マネーの世界は、カードとリーダーそしてバックエンドのシステムが一体運用されてはじめて意味を持ちます。また通常これらは異なる事業者によって運営されており、あくまで相対(あいたい)交渉によってつなぎこみを行っているという、かなり難易度の高いオペレーションです。また、消費者が電子マネーの使い方をマスターして日常的に使うようになるためには、地道な啓蒙の努力が必要です。こうしてみると、携帯電話をタッチして決済をするという光景が当たり前になっている日本は、米国に比べて一面ではかなり進んでいると言えます。

※写真はイメージです。
※写真はイメージです。

 NFCはあくまでこの中の要素技術のひとつですので、今後どのように発展するかは、業界がうまく標準化ができるかという点にかかっています。

 それにしても、FeliCaというエコシステムができあがっているにもかかわらず、NFCでこれを置き換えようとする動きの発信源はどこなのでしょう。サムスンやLGなどグローバルメーカーのAndroid端末を販売したい(せざるを得ない)携帯キャリア、また、買い替え需要を掘り起こしたいリーダーライター事業者、タグを販売している印刷会社あたりが発信源になっている気がします。これまでFeliCaエコシステムを推進してきた事業者が、これを世界に向けて売り出す努力をせず、「ガラパゴスだ」と言って後ろから撃つような真似をするのか、残念な気持ちになりますね。

 個人的には、セキュリティチップなしのNFCならばQRコードの方がましだと思うのですがいかがでしょうか。某キャリアにはQRコードを推進する動きもあるようですが…。この辺はまた次回!

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
関連リンク
シリアル・アントレプレナー柴田陽さんに「O2O」と「起業」について聞きました。連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

柴田 陽(シバタ ヨウ)

店舗集客サービス「スマポ」を展開する株式会社スポットライトの代表を務める。バーコード価格比較アプリ「ショッピッ!」、タクシー配車アプリ「日本交通タクシー配車」「全国タクシー配車」など、数々のヒットアプリを手がけ、2つの会社を創業・バイアウトした経験を持つシリアルアントレプレナー。

東京大学経済学部卒業。戦略コンサルティング会社...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2012/09/28 11:00 https://markezine.jp/article/detail/16449

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング