チャージ型カードの利点
NFCというのは通信の規格なので、セキュリティについては確定した仕様はありません。ですから、チャージ型のカードをそのままNFC搭載のAndroid携帯電話に移植することはできず、「セキュアエレメント」と呼ばれるセキュリティを管轄するハードウェアを別途用意する必要があります。FeliCaチップにはセキュアエレメントが載っているのでこのことを意識する必要はありません。
チャージ型の利点は、決済時に毎回サーバーに照会する必要がないため、決済処理が高速なことです。さらにFeliCaはNFC Type A/Bに比べて立ち上がりから決済完了までのトータルのスピードが高速なため、駅の改札のような大量の決済をスムーズにさばく必要がある用途に最適です。
決済件数ナンバーワンのSuicaをはじめとする交通系電子マネーはFeliCaですが、JR東日本を中心にこれだけFeliCa改札が普及した今となっては、あえてNFCに移行する動機がないので、交通系のFeliCa優位は今後も変わらないと考えられます。
nanacoやWAONのような流通系のFeliCa決済も、すでにFeliCaリーダーへの投資が一巡しているため、ことさら切り替えていくメリットがあるかどうか微妙なところです。NXP SemiconductorsのMIFARE DESFireなどのFeliCa水準のセキュリティが実現できるNFCチップは、コスト優位性もそれほどではなく、ソニーもFeliCaの価格競争力維持に向けて努力していることから、「コストメリットはさほど大きくない」(「Payment Navi」の記事)と見られているようです。
むしろ、今後NFC搭載の携帯電話が増えてきた場合、TypeA/Bに対応することで電子マネーの利用率がどう変わるかが焦点になってこようかと思います。そういう意味ではしばらく様子見の姿勢だろうと思われます。
センター管理型は携帯電話と相性が良い
センター管理型の電子マネーは、チャージ型ほどカード側のセキュリティ水準を要求しないため、NFC搭載の携帯電話と相性が良い領域です。このようなプリペイド電子マネーは、資金決済法の規制(プリペイドされた残高と同額の供託金を保有)により、潤沢なキャッシュがないと新規参入が難しい業界ですが、センター側で顧客情報と一緒に管理することで、決済のタイミングで確実にさまざまな販促と結び付けることができる点で有望な分野です。
また、資金決済法に抵触しない範囲でも似たようなことを行うことができます。たとえば、楽天ポイントやTポイントは、現金のように使うことができますが資金決済法の範囲外です。Tポイントなどはもともとポイントの残高をサーバーで管理していますので、センター管理型電子マネーとほぼ同じ仕組みを有しています。
ポイントと絡めて、リーダー側を普及させ、ユーザーを拡大できるかどうかがカギになります。