「ドコモよ、おまえもか」NFC対応で世界進出へ
さらに、おサイフケータイでフェリカ陣営の旗手とみられたドコモまで、NFC対応で世界に打ってでると宣言した。業界関係者は「ドコモよ、おまえもか」と驚きを露わにした。加えて、世界最大のNFC陣営であるPaypassと業務提携契約を結んだので、いよいよ本気だと思われているのだ。
ところが、正式発表されたリリースをよく読むと、ドコモはやはりフェリカを忘れたわけではなかった。ドコモの言うNFCとは(フェリカ+タイプA/B)の両方に対応したもので、決してフェリカ抜きではない。実は2012年冬モデルで、フェリカとタイプA/Bの二つのチップの入ったスマホが完成したために、一台のスマホで、iDとPaypassの両方を使うことができるようになったのだ。
それがあって、今回堂々とドコモは、NFC(正式)対応と宣言したのである。しかも、念の入ったことに、Paypassを使えるようにはするが、見かけ上は、iDで支払うように見せている。つまり、PaypassとiDを決済の最後のところで連携させて海外での支払いもiDで行なったようにみせるのである。あくまでフェリカ優位という姿勢を取りたくてこんな細工を施したのだろうか。いずれにしろ、サービスインは2013年上半期というから、話題になるだろう。
ただ言えることは、Suicaや楽天Edyといったフェリカ型の電子マネーが溢れているこの国では、コンビチップ搭載は、「フェリカ対NFC」問題のひとつの解決策になるということだ。タイプA/Bといっても、日本では加盟店がたくさんあるわけではない。タイプA/Bのみに対応したスマホも限られている。そう考えると、現状ではコンビチップのスマホをもって国内ではフェリカを使い、海外ではタイプA/BのPaywave、Paypass加盟店を利用するという使い分けがもっとも妥当と思われる。
かつてのビデオ戦争を彷彿させるフェリカ対NFCの構図
しかし、電子マネーの規格戦争はこれが終点ではない。かつてのビデオ戦争を彷彿させる電子マネー陣営の戦いがこれから起こり、当分はその論争でかまびすしくなるだろう。
そこで、最後に日本のフェリカとNFCの今後を占ってみたい。まず、日本の電子マネーのうち、交通系は速度の速いフェリカが残り続ける。Suica、PASMOは電子マネーの4番打者として本領を発揮するだろう。その代わり、買い物系はどんどんNFCに代わるのではないだろうか。とくにイオン、セブンの二大流通系グループのうちセブンは、率先してNFCを採用するだろう。中国、東南アジアで展開を考えると、いまさらフェリカではないからだ。イオンはSuicaとの関係が強いので、フェリカを捨てられないが、セブンはNFCに積極的にでてくると思われる。
この状態に対応すべく、スマホには当分、コンビチップが入り、フェリカとNFCの両方に対応することになるだろう。フェリカはSuica、PASMOなど鉄道系の電子マネーとして存在し、NFCは買い物系の電子マネー用として、また、外国人向けのサービスとして存在する。そのうち、フェリカはより進化したNFCに統合されるだろう。それが時代の趨勢である。
しかし、肝心なのは、規格の優劣ではない。利用者にいかに迷惑をかけないかという点だ。現状の対立はちょうどベータとVHSを思い起こさせる。両者は消耗戦の末、相討ちのようなカタチで、結局はブルーレイに収斂した。それと同じことが起こっているわけで、あまり健全とはいえない。いずれにしても、関係企業は、メンツとか企業エゴとかでなく、ユーザー第一で適切な選択をしてほしいものである。
