ファッションスナップのような通販サイト、コンバージョンは1.3倍

藪総治郎 氏
昨年3月、スタイライフは通販雑誌を休刊、同11月には雑誌による通販部門を廃止した。収益悪化が理由で、部門廃止でECに集中する体制を整えた。
懸念される通販雑誌休刊による顧客離れはどうだったのか。営業部の藪総治郎ディレクターグループリーダーによると「基本的にまったく(顧客が)離れたということはない。雑誌を購入していた顧客が『Stylife』で購入している割合が高い」。
雑誌編集のリソースやノウハウは重要な経営資源。スタイライフは新たな通販サイト作りに活かそうと、新たな取り組みに乗り出した。目指すは「雑誌編集の強みを活かした、ファッションスナップのような通販サイト作り」(松山副社長)。
通販サイト「Stylife」やRBAで販売するブランドの世界観をネットで訴えるには、編集力、コーディネート、写真のクオリティといったスキルやリソースが必要になる。スタイライフは通販サイト「Stylife」で1年前から少しずつ展開。「ソーシャルメディア経由などでトラフィックが集まりやすくなっている」(同)と期待を寄せる。
ネットでファッションを購入する5%のユーザーの多くは、店頭や検索サイトを使いいろんな店舗と比較し、ファッション商材を購入している。今後、残りの95%のユーザーを開拓するにはどうすればいいのか。
「商品ラインナップではなく、リアルに近い商品の見せ方など、よりビジュアルで訴求する」と松山副社長は力を込める。楽天が出資した「Pinterest」を含め、ソーシャルメディアとスナップ写真の相性は高い。「キラーコンテンツになる」(同)と考えているファッションスナップ写真。実際にスナップを利用していないアパレルと、使った商品を比べると、「コンバージョンが1.3倍も違った」(同)というのだ。

国内ブランドとの関係作りが競合との差別化のカギ
ファッションECを巡り、NTTドコモがTOBでマガシークのグループ化を図るなど、慌ただしさを増している。スタートトゥデイ、マガシークなど、スタイライフはファッションEC企業の競合とどのような違いを打ち出していくのか。
スタイライフはKDDIなどとの協業で、auユーザー向けの通販サイト「au Brand Garden」を運営。au利用者向けに「(ファッション分野で)大きなシェアを獲得している」(同)。
海外向けは今後具体的な検討に入るようだが、イギリス、フランス、タイ、アメリカ、ブラジルなど、さまざまな国で国内ブランドを展開することが可能になる。中国向けを展開しているマガシーク、英語圏向けに海外通販サイトを運営しているスタートトゥデイの背中を猛スピードで追随する体制が整うのだ。
ファッションスナップを多用したサイト作りなどで競合との差別化を打ち出す一方、日本最大の商圏となった楽天市場の顧客データの活用も成長の鍵を握る。松山副社長は「ブランド別、男女別、顧客が新規店で買ったのか既存店で買ったのか」といった多様なKPIを楽天は分析していると言明。こうしたデータを基に、スタイライフは戦略を打ち出すことが可能となり、競合にはない大きなアドバンテージとなる。
ただ、ネット通販の浸透に伴うEC化の流れは止まらず、直販を手掛けるアパレルブランドも少なくない。こうしたブランドとの協力関係の構築が、多様な国内ブランドの商材を取り扱うスタイライフをはじめ、スタートトゥデイ、マガシークなどには喫緊の課題となる。
「直販を伸ばしたいというブランド様側の意向を汲みつつ、ブランド様とのやり取りを通じて世界観を理解。要望を引き出すことでコネクションを作り、最終的にコンバージョンを上げていく」(同)。
スタイライフが消費者に対し、ブランドの直販サイトとは異なるアプローチをどう作るか。競合に負けないトラフィックをどう築いていくか。
「楽天スーパーポイントとの連携を視野に入れている」(同)など、成長の土台は整いつつある。スタイライフと楽天は具体的な連携策を今後検討していくとしており、これからの一挙手一投足に注目が集まる。
