ネットでアパレル買わない95%の消費者、高い潜在ニーズ
スタイライフの完全子会社化で楽天が狙うのが、楽天市場などネットでアパレルを購入する利用者を増やすこと。今後ネットで購入する利用者が潜在的に最も大きいマーケットと捉えているためだ。
松山副社長によるとアメリカ、イギリス、韓国のEC化率は10%である一方で、日本のファッション市場のEC化率は5%程度という市場予測をしており、逆をいえば95%の消費者が店舗でファッション関連商材を購入している状況で、EC化率が最も増やせるマーケットというわけだ。楽天もこの潜在ニーズに着目。「スタイライフの買収により、1+1を3以上の効果にするため、95%の消費者に対して新たな取り組みを行っていく」(同)と宣言する。
ちなみに楽天市場における12年のファッション関連商材の流通総額は3,567億円。右肩上がりを続けており、ファッションECサイト「ZOZOTOWN」の約4倍の規模だ。

また、1年間で楽天市場でファッションを購入するユーザー数は「ZOZOTOWN」の約4.1倍という。
楽天のブランドファッションECを側面からサポート
ファッション分野の強化を狙い、12年3月から楽天が運営を始めた国内ブランドを集めた通販サイト「RAKUTEN BRAND AVENUE(RBA)」。これまで企業が店舗運営を行う「出店方式」で事業を進めてきたが、ファッションブランドはサイト運営の委託を望むケースが多かったため、委託販売形式で展開している。

出店形式を採らずあえて委託販売を手掛けるほど、楽天は国内ブランドを集めたサイト作りに力を入れているのだ。このスタイライフは楽天肝入りの通販サイトで、重要な位置付けを担う。
楽天市場のファッションジャンルで流通している商品は、プライベートブランドなど比較的安価に購入できる商品が多い。そのため、ブランドイメージを重要視する国内ブランドは「ZOZOTOWN」などファッション専門店に委託販売する傾向が高かった。知名度の高い国内ブランドを取り扱うのがRBAの役割であり、有名な国内ブランドを好む消費者を楽天市場にも引き込む狙いがある。
RBAにはスタイライフの取引先ブランドの約70%がRBAに店舗を構えている。知名度の高い国内ブランドの出店はRBAのラインナップ拡充、スタイライフの価値向上につながるため、松山副社長は「引き続き100%に向けて出店を促していく」と話す。出店促進に対しては、スタイライフでは、RBA未出店のブランドに対し、3月中旬に出店セミナーを実施したところ多数のブランドが参加し、満足度が5段階中4.2という高い評価を得るなど、海外販売やSNS連携に対してのブランド側の関心の高さがうかがえた。
「リアルビジネスでも百貨店や駅ビル等と直営路面店が共存共栄しているようにネットにもモールにはモールの強み、自社サイトには自社サイトならではのサービスがある。我々はモール運営事業のノウハウを楽天から取り入れ、モールとしての強みを伸ばしていくことで、ブランド様に選ばれるサイト作りを引き続き強化していく」(松山副社長)。
スタイライフはRBAにも出店する一方、RBA出店ブランドの商品写真の撮影、モデルの手配などフルフィルメント業務をサポートしている。スタイライフが抱える10年以上もの通販サイト運営ノウハウなどを活かし、RBAのフルフィルメントを支える。
スタイライフがRBAに積極的に関与するのには理由がある。「ブランドの世界観をいかに写真画像などで訴えていくか。購入プロセスはよりディスカバリー(発見)的な動きになる」。今後のファションECの消費行動をこう分析する松山副社長。こうした消費行動に対応するため、スタイライフが抱えている通販雑誌の制作リソースなどを積極的に投入。楽天が強化するRBAを側面から支えている。