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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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イベントレポート

「テクノロジーの役割と人間の役割はトレードオフではない」 CMO、CIO、CEO、それぞれの立場から論じた“個客を知る”ということ


テクノロジーに期待すること

 楠木:グローバル展開を見据えた製品開発を意識しないといけない、しかし特徴もはっきりさせないと受け入れられない。個客を知るということはずっと前から言われ続けているが、新しい話題でもあると感じます。さて、これまでと現在の違いとして飛躍的にテクノロジーが進化していることが挙げられると思いますが、皆さんはテクノロジーにどのような期待を持たれていますか。

 星野(千趣会):先にも申し上げましたがビッグデータを利用することで、これまでよりも細かく個々のお客様へアプローチする試みに取り組んでおります。

 今まではどちらかというと、バックオフィスのスタッフがデータ分析の仕事をしていました。データ分析をしたいユーザー部門が依頼し対応していたわけです。カタログメインの時代は、それぐらいのスピード感でなんとかなりました。しかし、現在の主戦場はタブレット・スマホとなっており、そのスピード感では間に合いません。ユーザー部門が自分でどんどん活用することが重要ですし、そういったニーズが高まってきていると感じます。

 テクノロジーに対してそれほど興味を持っていなかった人でも、自ら使いたいと思えるような状態を実現してくれること。私たちがテクノロジーに期待することはそういうことです。

 鷲津:まず、企業と消費者のやり取りの性質を定義すると、「消費者が何を思っているのか聞くこと」と「消費者へ発信すること」という二つに大別できると思っておりまして、それの支援をテクノロジーに期待します。具体的には、前者の場合は消費者の声を迅速に吸い上げ、スピーディーなアクションを支援してくれること、後者の場合はいつ・誰に・どのような情報を届ければ最も効率的なのかを各製品ごとに教えてくれること。しかも、その情報を私たちにだけ教えてくれることが大切ですね(笑)。

 星野(日産):ちょっと夢物語的な話になるのですが(笑)。車はもっとIT化していくと思います。車の所有期間は長期化している状況で、日本では10年ぐらい所有する傾向になっています。仕事、生活、レジャーなど、利用シーンは様々だと思いますが、自分の足として10年ぐらい車を利用している状況です。つまり、車は長い時間を共に過ごすパートナーというべき存在になっている状況なので、テクノロジーを活用することで、車がドライバーの趣味・嗜好を含めた情報を取得できるようにならないかなと思っています。

 例えばマクドナルドで何か買ったら、次のタイミングで「この前マクドナルドでハンバーガーを買ったけど、今日はどうする?」といった情報を車がドライバーに教えてくれるとか。車とドライバーのコミュニケーションが実現できれば、、車の定義自体も変わってくるのではないでしょうか。

 楠木:その発想は面白いですね(笑)。テクノロジーの進歩は様々な面で影響を及ぼすだろうと感じます。例えば、近い将来テレビCMなども視聴者がどういうCMを見ているのかわかるようになってくると思いますので、テレビCMごとのコンバージョン率などが測れるようになるかもしれない。一方で、特にネットでは顕著になりつつありますが、いつもこの広告を見かけるな、などの気持ち悪さを消費者が抱くのも事実で、そのあたりの温度感を測ることも重要になってくると想像します。個々への最適なアプローチ、つまりパーソナライズをどこまですればよいと感じていらっしゃいますか?

 星野(千趣会):難しい問題ですね(笑)。確かにパーソナライズをあまりにもやり過ぎるとどこまで自分のことを知っているのだ? という気持ち悪さを覚えます。人に見られたくない内容もありますしね。マーケティング部門はどんどんテクノロジーを活用すればよいという意見は、総論としてはよいと思いますが、どこまでパーソナライズするのかのポリシーを作っておかないとやりすぎて信頼を失ってしまいます。そうなると、本末転倒な事態となりますね。

テクノロジーは“なぜ”も教えてくれるのか?

 楠木:もう少しテクノロジーについて聞きたいのですが。個客を知るという中で購入数や閲覧数など、わりと単純なことはテクノロジーで知ることができると思うのですが、逆になぜ買ったのか、買わなのか、つまり「なぜ」をテクノロジーで知ることはできるのでしょうか?

 星野(千趣会):それは、人間の洞察しかないと感じます。

 楠木:では、それをテクノロジーが支援するならどんな道筋が想定できると思いますか? 例えば、洞察や仮説立ては人間の仕事ですが、取得できるデータが膨大になっているため、ある程度妥当な線まで選択肢を減らすのがテクノロジーの仕事ですという感じであれば、イメージできるのですが。

 星野(千趣会):テクノロジーがある程度の仮説を作ってくれる。その中でピンとくるものを人間が選ぶといった役割分担が考えられると思います。もしくは、ものすごい数の仮説検証を機械的にさばくなどはテクノロジーの役目ではないでしょうか。迅速に消去法を実践するために使う感じですね。

 鷲津:私たちが最も知りたいことは、知っているが買わないのはなぜなのか? ということです。これまでの経験からだと、その原因は「値段が高い」「店頭で見かけませんでした」「他の商品で間に合ってます」「言ってることが信じられない」の4つに集約されます。しかし、この結果は選択肢を用意した上でのアウトプットであり、消費者に聞いても本当の「買わなかった理由」は出てこないのです。でも、私たちはその背後にある本当の理由を知りたい。テクノロジーがそれを支援してくれるシーンは今のところ想像できないですね。

 店頭では、消費者はニュートラルな意識で購買選択をしています。つまり、店頭で商品を手にとったが棚に戻した人にその場で聞くのが本当の「買わなかった理由」です。それを量的に集められるのであればぜひ知りたいし、テクノロジーがそれを支援するのであればぜひ使いたい。

 楠木:カビキラーなどの商材はブログやツイッターなどであまり話題にならない商材と思いますが、車は話題に挙がる商材のひとつだと思います。普段ソーシャル上で飛び交っている情報について、日産の星野さんはどう感じていらっしゃいますか?

 星野(日産):ソーシャルリスニングにはもちろん取り組んでおりますが、主に二つの方向で考えています。一つは「シリアスな問題への対応」もう一つは「コ・クリエーション」です。前者の場合は異音がする、ブレーキが効かないなど、重大かつ緊急なコメントを発見した瞬間に調べます。また、テレビCMへの評価や反応なども見ています。後者については、車を使ってすごいことをしている人、例えば車に乗ってものすごいところにスキーへ行ってしまう人などは、普通のルートではわかりません。そういったお客様を見つけることにも活用しております。

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この記事の著者

押久保 剛(編集部)(オシクボ タケシ)

メディア編集部門 執行役員 / 統括編集長

立教大学社会学部社会学科を卒業後、2002年に翔泳社へ入社。広告営業、書籍編集・制作を経て、2006年スタートの『MarkeZine(マーケジン)』立ち上げに参画。2011年4月にMarkeZineの3代目編集長、2019年4月よりメディア部門 メディア編集部...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2013/05/09 13:34 https://markezine.jp/article/detail/17383

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