業界の垣根を越えた競争にさらされる現実
ローソンはおかげさまで国内では約1万1,000店舗を展開し、チェーン全体で2兆円の売上をとなります。支払い代行やチケット販売も含めると、その額は倍の4兆円程度となります。昨今では海外展開にも力を入れており、海外にも現在では約440店舗を展開します。
国内小売・外食業界の市場規模は色々なとらえ方がありますが、約160兆円の市場と捉えております。その中で、コンビニ市場はというと実は約9兆円、わずか5%程度のシェアなのです。
この市場はスーパー、外食、コンビニといった業態以外にも、ディスカウントストア、ドラッグストアといった業態も含めて、日々激しい戦いを繰り広げています。その中でEコマースとコンビニは顕著な成長を見せております。
2000年の時、コンビニの店舗数は約3万7,000店舗でしたが、直近では約5万5,000店舗で、毎年大体1,000店舗ぐらい増えている状況です。セブン・イレブン、ローソン、ファミリーマート3店のシェアは、12年前は58%だったものの、いまは7割を超えています。コンビニはいま、スーパーや八百屋さんのように生鮮品も取扱いますし、喫茶店のような淹れたて珈琲も提供します。つまり業界の垣根を越えた競争の中で戦っている状況なのです。
生き残りのキーワード「製造小売業」
私自身これまで色々な経験をさせていただきましたが、これから生き残っていくのは会社というのは、やはり「製造小売業」ではないかなと感じています。特に大事なのは「小売」の部分です。お客様を知ることができ、毎日色々なやり取りをし、どういうものを購入し、どういうものに満足されているのかを直接知ることができます。そして、お客さまが求めているものを自分たちで企画し自分たちで作る。このサイクルを迅速に回していくことが重要だと思っております。
私たちの場合、製造の部分は「製造マネジメント」「製造企画・コントロール業」という認識です。お弁当、おにぎり、お惣菜などの食べ物については、原料調達、製造、物流まで将来的にはコントロールしていこうと考えております。
一方、お客様の様々なニーズにも答えていかなければなりません。髭剃り、歯ブラシ、ビール、ワインなど、コンビニには様々な商品が並んでいます。そして商品によって、メーカーさんはものすごい技術・ノウハウをお持ちです。そういったノウハウをお持ちのメーカーさんと一緒に企画し、一緒になって開発していきたいと考えております。こういった取り組みでのポイントは、お客様の求めている商品を迅速に把握し、素早く企画・販売・管理のサイクルを回していけるのかという点です。
そこで有効なのがCRMです。現在ローソンでは「Pontaカード」というポイントカードを発行しており、約5,200万人の会員を有しています。Pontaカードから吸い上げられる、いわゆる「ビッグデータ」が、CRMの実現を支えています。
たとえば似たようなお店でも、売れるお店とそうでないお店があります。通常は、接客が悪いのか、品ぞろえが悪いのか、立地条件が悪いのか…と、いくつかの仮説を立てて分析をしますが、以前は検証に3日くらいかかっていました。ローソンは半年で10億枚のレシートを発行しており、そのデータ量は膨大だからです。
しかしHadoopという技術を使った仕組みを使いはじめて以降、検証時間が一気に短くなりました。ヘビーユーザーは何を買っているのか、何を訴求すべきかなど、深い要因をスピーディに読み取り、全社員・全店舗で共有することで、新たなアクションを生むことができます。IT投資も、毎年300億円にのぼっています。