オムニチャネル・リテイリングが求められる時代
講演に続き、グローバルに展開する広告代理店オグルヴィ・アンド・メイザー・ジャパン 社長兼職務執行者の久保明彦氏と玉塚氏の対談がはじまった。
がリードし対談が進んだ

久保:昨今の消費者は「好きなときに好きな場所で購買したい」と考えています。彼らのニーズに応えるため、アメリカの小売店が推進するのが「オムニチャネル・リテイリング(Omni Channel Retailing) 」です。「すべての販売チャネルを統合する」という意味で、実店舗だけでなく、通販、テレビ、ソーシャル、モバイルなど様々なチャネルを統合することで、顧客ロイヤルティの獲得・向上を目指します。ある百貨店では、オンラインの売上が昨年対比40%増となりました。ローソンでは、リアルとデジタルの融合をどう考えていますか。
玉塚:色々な取り組みを試しつつ、成功の感触を掴みつつある状況です。アマゾンを筆頭にEコマースの世界が急成長しているのは皆さんご存じの通りです。アメリカの小売業のトップの方々と話をすると、アマゾンを意識していらっしゃる。まず私たちとしてもEコマースの完成度を上げていくことが大切と考えています。その例として私たちの強みである「食」の部分では『スマートキッチン』というサービスの展開をはじめています。

加えて、1万1,000店のリアル店舗を活用し、家まで色々な商品をお届けするサービスを行っています。Eコマースというよりも「ホームコンビニエンス」という感じですね。Eコマースの利便性とリアルの可能性、この二つが融合したところに着地点があると考えています。
向いている方向がバラバラでは、課題解決につながらない
久保:リアル店舗とEコマース、別々の部門が同じ方向を向く難しさは感じませんか。
玉塚:多面的な視点をもつリーダーが必要ですね。マーケティング領域、IT領域、加盟店の状況、それぞれのことがわかる人間がスモールチームを組み、情報共有・議論し、リーダーが意思決定していかないと進まないと思います。向いている方向がバラバラでは、問題解決にはつながらないでしょうし、私たちがやろうとしていることは実現できないと思います。
久保:ローソンでは、今後ビッグデータをどのような領域で使われますか。またそれに必要な人材像も、合わせて教えてください。
玉塚:まず加盟店に対しては、分かりやすいデータを提供し、いいアクションにつなげることが大切だと思います。スーパーバイザーがオーナーをその気にさせることができるかどうか、がポイントですね。そのためには、有益なデータを見せて、健全な議論を生むことが求められます。
また上流工程では、「これは面白いデータだ」と気づく人間が必要です。統計学に加えて現場も分かる、現場のアクションにつながるプレゼンテーションを、データサイエンティストが行えたらいいと思います。
チェーンストアは、「強い中央」が加盟店を引っ張ります。一方で、現場の声をくまなく吸い上げ、中央に戻すことも必要です。どちらか、ではなく、両方必要。データの共有をしながら、今後は即効性のある販売計画の策定、商品開発にも活かせたらいいですね。