エンゲージメント率、ロイヤルユーザー率ともに高いサッポロビール
そこで、ロイヤルティの高さを測る指標としてSocial Insightを用いて分析できる手法が複数回反応しているファンの割合だ。ユーザーローカルではこれをロイヤルユーザー比率と定義している。「例えば月平均で2回以上リアクション(「いいね!」またはコメント)を取ったユーザーの割合や、リアクションの回数が多いユーザーを把握することで、自社のロイヤルユーザーがどう推移しているのかを追うことができます」(渡邊氏)。
だが、前述のエンゲージメント率と同様に、ロイヤルユーザーの比率もファン数が多ければ多いほど低くなる。ファンの層が広がるほど、関与度の高いユーザーばかりではなくなるのが現実だ。
そんな中、昨年12月末時点で8万人以上のファンを擁していたサッポロビールのエンゲージメント率は、前述のようにファン数が50,000~99,999のアカウントの平均が0.34%のところ、5.81%と非常に高い。
また、今年1月中に2回以上反応したロイヤルユーザーの比率は6.7%となり、こちらも平均を大幅に上回っている。ユーザーローカル調査による主要ブランドのロイヤルユーザー比率では、ファン数が1万以下なら10%を超えるケースもあるが、3万以上になるとほとんどが2%以下。それと比較すると、サッポロビールのFacebook運用がいかに好調かがわかるだろう。その秘訣は、戦略的な施策の積み重ねと、緻密な分析にありそうだ。
25~35歳の若年ビジネスマンとの接触を増やしたい
サッポロビールのFacebookは、2011年8月に開設。いくつかの施策によって段階的にファン数が伸び、現在では8万6千を超えている。同社営業本部 サッポロブランド戦略部 宣伝室の森勇一氏は、Facebook運用の目的について次のように話す。
「まずは、当社のファンとコミュニケーションを図り、絆を深めること。自社サイトへの流入増も狙っています。それから、ソーシャルメディアマネジメントのノウハウを蓄積すること。加えて、もしも自社のサーバーにアクシデントがあった場合の代わりの窓口になれば、とも考えています」。
マネジメントノウハウの蓄積のために、運営体制は宣伝室が担当し、危機管理室とお客様センター、CSR部門と連携している。運用を代理店に任せず内部で行っているのは、「投稿内容のリアリティや、ファンの嗜好性を分かっているかどうかは、ユーザーにはすぐに分かってしまうから」(森氏)という理由もある。
ターゲットは、普段からサッポロ製品を愛飲している人を中心に据えており、中でもFacebook全体のユーザー傾向とも合致する25~34歳の若年ビジネスマンを注視しているという。「現在のファン構成比は25~34歳が28%、35~44歳が39%、45~55歳が22%です。当社が以前から運営しているWeb会員だと、25~34歳の割合は18%なので、それに比べればFacebookの方が若年層にリーチしています。今後も引き続きこの層を引き上げたいと考えています」と森氏は話す。