投稿記事が広告になる「ページポストアド」の考え方
ファン数の推移は、その時期に注力していた施策と見事に対応しており、同社が長期的な視点で、かつ戦略的にユーザーとのつながりを構築してきたことがよく分かる。例えば開設から約4か月は、Facebook内の企業Web担当者が集まるグループにサッポロビールのFacebookページが開設したことを紹介。初期段階で数千人のいいね!を集めることに成功した。
ファン数1万人を突破した2011年12月からの約半年は“投稿研究”時期とした。「どのような投稿だとファンが反応するかを注意深く見ていきました。テキストの量、写真の有無、また同じ写真でも宣伝用のものがいいのか、それとも我々がちょっとした瞬間を撮ったような素人写真がいいのかなどの試行錯誤を重ね、データを蓄積していきました」と森氏は振り返る。
「投稿研究に徹した時期があったから、高いエンゲージメント率やロイヤルユーザー率を誇る現在の状況があると思う」と渡邊氏。当然、その時期は大幅なファン数の増加はなかったが、焦らずにじっくりと研究したからこそ、今に活かせるノウハウが蓄積できたといえる。
その後、企業コンテンツの拡散ツールや一般モニターを募れる「モニプラ」、また投稿した記事をFacebook内広告として出稿する「ページポストアド(PPA)」を段階的に採用し、ファン数を拡大。とりわけPPAの効果が高く、約5週間の出稿で4万から8万まで伸張した。
短期で切り上げたのは、「投稿記事が表示されるだけに、鮮度の点から限界だったのがひとつ。加えて、毎週のインプレッションと獲得単価を割り出し、単価が高くなってきたタイミングも見逃さないようにしました」と森氏。
ビジネスインパクトを数値で表す努力を
本講演にあたり、渡邊氏は森氏に「ソーシャルメディア運用のゴール」をたずねたという。森氏はそれに対し、「最終的には売上に貢献すること。ただ、当社にはECサイトもありませんし、厳密にそれを測ることはできません。そのため現実的な目標としては、そのメディアの価値を上げることを見据えています」と答える。
例えば同社ではFacebookのメディア価値を測る指標として、広告費用換算を行っている。「仮に去年の9~11月の3か月間だと、Facebookでのクリック数198,348に、ウェブ広告の『プレミアムアド』の平均CPC500円をかけると約99,174,000円。このくらいの広告費に相当する宣伝効果は見込めるのではないかと、パフォーマンスの指標として捉えています」(森氏)。
渡邊氏はこれについて、「マス広告を展開している企業の広告費を考えると数%かもしれないが、多くのWeb担当者が数字で説明することを求められている状況では、このような考え方でビジネスインパクトを表すのも重要だ」と解説する。
最後に森氏は、自身が実感している運用のポイントとして「実施した施策を社内外へ発信すること、自分がユーザーになって体験すること、そして古い常識に捉われずチャレンジを続けること」の3点を挙げ、講演を締め括った。