昔と比べて、広告が効かなくなった
さて、ではなぜ今、アトリビューションがこれほど注目されているのでしょうか。
アトリビューション、言い換えると広告効果測定自体は、もちろん昔からありました。アトリビューションの話しに入る前に、まずはその背景からしっかりと解説していきます。背景を理解することで、アトリビューションの本質が見えてきます。
アトリビューションが注目される背景として、私が一番大事な要因だと考えているのは、「広告が効かなくなった」ことだと思います。「広告が効かなくなった」というと語弊がありますね。「昔と比べて、効かなくなった」と感じている人が増えた、と言った方がいいかもしれません。
たとえば、広告を大量投下すればモノが売れていた高度経済成長期からバブル経済崩壊前までと現在を比べると、「広告を投下してもモノが売れなくなった」と感じてしまうということです。
広告効果測定が無用だったマス・マーケティング全盛期
ここでマス広告の歴史を簡単に振り返ってみましょう。
NHKの放送は1953年にスタートし、その後の高度経済成長期を通じてメディアの王座が新聞からテレビに移行し、マス・マーケティングの全盛期が到来しました。
テレビ・洗濯機・冷蔵庫が「三種の神器」といわれ、急速に家庭に普及していった時期です。大量生産・大量消費の時代であり、広告を打てばモノが売れた時代。広告効果測定という概念は当時もあったでしょうが、結果的に売れているので、それほど気にしていなかったと思います。ちょっと乱暴に言ってしまうと、広告効果測定は無用だったのです。つまり、広告主は広告の効果測定を真剣に取り組むべき課題として捉えていなかったということです。
マス・マーケティングの限界
そして時は流れ、1980年代頃から日本は少子化・多様化の時代を迎えます。核家族世帯や単独世帯の増加もこの時期から始まり、集団よりも個を尊重する気風が高まっていきます。それに伴い、マーケティングにおいても、ブランドの差別化やセグメンテーション、クラスター、ポジショニングなどの考え方が徐々に出てきます。
画一的な商品の大量生産・大量消費の時代は過ぎ去り、多品種少量生産の時代が到来します。つまり、差別化できる特徴のある商品を作り、ターゲットセグメントを定めてより精緻なマーケティングをおこなうことが課題となっていきました。この時代の変化は、一種のターニングポイントです。つまり、多くの人に同じメッセージを届けても広告は効かなくなり、テレビが得意とするマス・マーケティングの限界が徐々に露呈し始めたのです。
