DRMは「人を動かす技術」である
本編に入る前に、DRMのクリエイティブのポイントを整理しておきましょう。まず、前回のマンションデベロッパーの事例 を思い出してみてください。ポイントとしてはいろいろあるのですが、特に強調したいのは、「DRMとは結局、人を予定の行動に導くための技術である」ということです。
あらゆる広告、例えばそれがインターネットであろうとリアルな展開であろうと、「人を動かす」ことに変わりはないじゃないか、「モノを売る」ということは購買行動を取らせることだろう、という意見もあるでしょう。もちろんそれは正しいのですが、DRMで言う消費者行動とは、一般広告で期待するそれよりも、さらにダイレクトで、さらに目的が明確だと思うのです。だからこそ、DRMが持っている「情報受信者を直接的に行動させる思想やテクニック」は「デジタルにおける訴求」に応用し得るのではないでしょうか。
いずれにせよ、DRMにおけるシナリオとWebにおけるInformation Architectureには共通点が多いのは事実です。DMで考えてみましょう。
その多くは{(封筒+ブローシュア+レター+フライヤー)×ギミック(インセンティブ要素含む)}という組み合わせになっています。ユニークなクリエイティブを採用していると言っても、この中のパーツのどれかが面白い形や素材を使用していたり、対象に直接響く要素を包含していたりするケースがほとんどです(電通ワンダーマンが第20回日本DM大賞製造部門で金賞を受賞した事例がまさにこれ)。
結局、成功したクリエイティブとは、これらのパーツが各々の役割を明確に担っており、組み合わせられ、あるいは想定された順番を辿らされることによって、最終的にユーザーを目標(購入や申し込み)に到達させられたものと言えるでしょう。そういう意味で、この小さなパッケージの中の世界に、発信者が設定したストーリーが込められていると言えるのです。
実は、ほとんどのWebサイトも、考え方としては同じです。
TOPページに思いつくままの要素を並べ、「どれかは見てくれるよね」ではWebサイトの訪問者自体が決して増えることはありません。訪れた人にどのような印象を与え、どのように感じさせることによってどのような遷移を辿らさせるのか…そこには何らかのストーリーがあるはずなのです。