クロスメディアコミュニケーションにおける、クリエイティブの課題
そうしたクロスメディアによって「楽しい経験」を伝えるために、苦労したことはどんな点だったのか。関氏のその問いかけに対し、川越氏は「シズル感」の難しさをあげた。つまり、これまでのテレビCMのシズル感については、経験値として保有している。しかし、ネットではそのシズル感をどのように表現していいか前例が少ないというのだ。ただし、これに関しては、新しいメディアの登場により当然に起こりうる問題で、メディアの成熟とともにナレッジも蓄積していくと思われる。
それ以上にクリエイティブを阻害する問題として、川越氏は「代理店の縦割体質の改善が必要である」と語る。多くの代理店では、ネット系の部門は、他のメディアのクリエイティブ部門と連携していないことが多い。それでは、せっかくのクロスメディアによる効果をも分断させてしまう可能性がある。「敵視するのはナンセンス。お互いの強みを持ち合って相乗効果を期待した方が得策」と関氏も力説した。
そして、クロスメディアによる効果を最大化するためには、関氏は「ターゲットが接触する各メディアを気づき、話題性(理解)、経験、パーソナルメディアという情報の深度によって4つに分類し、有機的に結びつけてメディアプランニングを行なうこと」「その各メディアを貫き、理解を促進するための各ターゲットへ伝播力の高いコンテンツを考えること」などを提案した。
気づき、話題性(理解)、経験、パーソナルメディアと接触メディアを分類し、
各ターゲット に合致したメディアを有機的に結びつけてメディアプランニングを行なう
またそうしたクロスメディアコミュニケーションにおいて、インターネットがどのような役割を果たしていくのか。今後ますますその存在が大きくなることは間違いない。おそらく、リビングにPCとモニターがおかれるようになり、テレビ上でもっとインターネットが利用できるようになってくるだろう。放送と通信の親和性が高まることで、どんな新しいコミュニケーションが可能になってくるだろうか。
関氏は「インターネットの世界で、個人によるバイラル効果はいっそう高まる可能性があり、それらをどのようにマスメディアや既存のインターネットにつなげるか、がカギになる」と語り、立花氏も「アルファブロガーのような個人メディアの活用は無視できない」とうなづく。さらに「個人メディアに取り上げてもらえるような仕掛けや隙を工夫する必要があるだろう」と川越氏のクリエイティブに関するコメントが続いた。
3人のディスカッションから、マスメディアによる認知から、クロスメディアによる「豊かな経験」の提供へとコミュニケーションが大きく変化していることが伝わってきた。しかし、まだまだクロスメディア時代は始まったばかり。これまでマスメディアで蓄積されてきたノウハウに加え、クリエイティブには新たな「会話型」の手法が求められている。その他新しい手法が登場し、成熟するに従って、さまざまなクロスメディアコミュニケーションが登場し、消費者を楽しませてくれることだろう。
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