ファッション雑誌はたくさんあるが、なぜかネットはファッションECだけ
―― サイト上で販売する商品を、ユーザー自身のセンスでコーディネートするサイト「iQON」が人気です。素人の方にも関わらず、サイトにはハイセンスなコーディネートが並んでいてビックリです。
ありがとうございます。基本的にユーザーは素人の方ばかりです。日本人のファッションセンスってすごいでしょう?!
―― はい、そう思いました。
日本人って、グッチのワンピースにアディダスのスニーカーを合わせるなど、独特なコーディネートをするんです。グッチは階級の象徴。スニーカーと合わせるなんてヨーロッパでは言語道断ですが、日本人はそれをサラリとやってのけます。
―― そのセンスを活かしたのが「iQON」ですね。
現在iQONではアパレルを中心に100万点以上の商品を販売、商品画像を使ったコーディネートを披露するユーザーは毎月一万人弱にものぼります。「妊娠中の自己表現の場」としてiQONを利用し、そのセンスの高さに多くのファンがついたユーザーもいます。
―― 「オンラインショップ」より「ユーザーの自己表出の場」に近いですが、なぜこのようなサイトを作ろうと思いましたか。
インターネット上にファッションコンテンツがなかったからです。ファッション雑誌はたくさんあるのに、インターネット上にあるのはオンラインショップだけ。
―― なぜ、なかったのでしょう?
その理由が分かったのは、前職のヤフーでファッションサイト「X Brand」を立ち上げたとき。今年の流行だとか着こなし術だとか、いわゆる「ファッション雑誌のコンテンツ」をネットで提供しようと思ったのですが、とにかくお金がかかるんですよ。
―― 問題はお金ですか。
そうです。例えば、あるワンピースの着こなし例を紹介しようとすると、モデル、スタイリスト、フォトグラファー、ライター、エディターなど、何人もの人が関わります。サイトを管理するプログラマーやプロジェクトメンバーも加えると、とにかくコストがかかるんです。
―― 今回のMarkeZineの記事は、エディター、ライター、フォトグラファーの3人ですね。
でしょ? だからファッションサイトを運営するには、コストを極限まで下げなきゃいけない、と。当時「Web2.0」なんて言われていて、ネット上のイニシアティブがユーザーに渡りつつあった時期だったので「服のコーディネートをユーザーに託してはどうか」と思うに至りました。ヤフーから独立後に立ち上げた「iQON」がそれです。
―― iQONでは商品販売をしているものの、サイトはコーディネート中心なので、「オンラインショップ」と呼ぶには抵抗がありました。
お陰さまでご支持頂いているのは、これまで表出化されなかった一般人のセンスが、コーディネートとして発信できるようにしたからだと思います。
―― 日本人のセンスは、表出化されていなかったのですか。
そのシーンが少ないと思います。どんなにセンスがあっても、お金がないと服は買えませんし、制服のある職場なら好きな服を着ることができない。さらに身長が低いと丈の長いワンピースは着こなせない、とか。
―― センスがあっても、表現するためには制限が多いのですね。
そうです。でもネット上では、身長が低くても、お金がなくても、制服があっても自己表現ができます。例え20万円のワンピースでも、iQONでコーディネートするだけなら無料ですから。