三田紀房氏の新作を、モーニングとヤフーで同時公開
―― 会社設立直後から『宇宙兄弟』の小山宙哉さんや『ドラゴン桜』の三田紀房さんなど、錚々たる作家さんのエージェント業をスタートされましたが、そもそもエージェントとは何をするお仕事なのですか。
ありがとうございます。エージェント業を説明するには、まず作家と出版社の関係性からお話せねばなりませんが、よいですか?
―― よろしくお願いします。
通常、漫画家や作家は、編集者と企画を練り、作品をつくります。作品はまず雑誌や新聞に掲載され、その後単行本となって再び世に出ます。
―― はい。
コンテンツの出口は、雑誌や単行本だけではありません。ドラマ、映画、キャラクターグッズなど、たくさんの出口があります。しかし出版社は雑誌や単行本をつくるのを最優先し、他の出口は他社からの提案を待ちます。
―― 出版社としての機能は果たしているけど、作品を活かしきれていない、ということですか。
はい、そうです。では、「出版社の機能」って、そもそも何だと思いますか?
―― 作家と一緒に作品をつくることでしょうか。
いまの出版社は、それも兼ねています。でも出版社にしかできないことがあるんです。
―― 本を書店に流通すること?
そうです、いわゆる「本のロジスティクス」です。出版社が持つ一番の強みは、このロジ機能です。そこに特化していく方が、出版社はうまくいくと私は考えています。
―― 作品をつくる機能は、どこに行っちゃうのでしょう。
もちろん、出版社の編集者もそれを担うでしょう。しかし同時に、それがエージェントに託される方が健全な競争が起きると思っています。エージェントはまず、作家と一緒に企画を練ります。この段階では、どの雑誌で掲載されるのか、それとも全く日の目を見ないのか、分かりません。でも「この作品には価値があるの?」「世間はこのストーリーに興奮するの?」と問いかけながら、コンテンツをブラッシュアップします。
―― どこに掲載されるのか分からないのに?
はい、掲載先が決まっていると安心感はありますが、いい作品を生み出すという目的において、そのような保証は必要ありません。いい作品を作れば、エージェントが最適な掲載場所を見つけてくれる、と作家に信じてもらうことが重要です。雑誌の掲載だけにこだわる必要はありません。たとえば雑誌の掲載と同時期にインターネットで無料公開しても構わないわけです。ちなみにいまお持ちのパソコンで、「ヤフー インベスターズZ」と検索してもらえますか?
―― はい。あ、ヤフーのサイト上に、『インベスターズZ』という漫画のプロモーションサイトが出てきました。
『インベスターズZ』とは『ドラゴン桜』で有名な三田紀房さんの新連載漫画なのですが…いまご覧頂いているサイトは、単なるプロモーションサイトじゃないんです。『インベスターズZ』は講談社の漫画誌「モーニング」に掲載されていますが、その発売日に、このサイト上でも無料公開されるんですよ。
―― え、そんなこと、していいのですか。
エージェントとは、作家と一緒に、コンテンツの価値と収益を最大化させるのが仕事です。作家の収入の一定割合を頂戴します。ですからコンテンツを広めるためにベストだと思えば、作家と相談して「ネットで無料公開」してもいいんです。
もちろん、これからも雑誌や単行本を通じた流通は最重要戦略です。でも主体が出版社から作家及びエージェントに変わることで、それ以外の発表形態も自由に模索できるんですよ。『インベスターズZ』は、その試験的な試みでもあります。