インプレッションからエクスプレッションへ
――そのようにIMCがバージョンアップしていく一方で、マーケティングやコミュニケーションの現場では実際にどのような変化があったのでしょうか。
ソーシャルメディアの台頭・普及にともなって、コカ・コーラというブランドが世の中に出ていく回数やそのチャネルが変わっていった。企業が情報を発信して消費者がそれを受け取る、いわゆる「インプレッション」よりも、消費者の中でそれを受け取った人がシェアし、語る「エクスプレッション」のほうが増えています。そして、そのほうが共感を得られる時代になってきている。したがって、どうやってエクスプレッションしていただくか、どういうかたちで消費者の日常生活の会話の中で、コカ・コーラというブランドについて語っていただくか。マーケティングでも広報活動でも、そういったことをこの1年くらい考えることの重要性が言われてきました。

コーポレートコミュニケーションズ グループ
デジタルコミュニケーション マネジャー 佐藤克哉氏
それを私たちの間では「liquid & linked contents」や「liquid idea」という言い方をします。liquidは液体。消費者の中で語られてじわじわ浸透していきます。そして、linked、消費者どうしのつながりの中で広がっていく、ということを表す言葉なんです。
――とてもシンプルでわかりやすいですね。
欧米はそういうフレームワーク化が上手。聞くと「当たり前じゃないか」と思うかもしれませんが、みんながなんとなく思っていることを、わかりやすくワンワードにして体系化するのが非常にうまいんです。
日本コカ・コーラが運営する3つのサイト
――日本国内では現在どのようなウェブサイトを展開しているのでしょうか。
大きく分けて3つあります。ひとつは「コカ・コーラ パーク」。これは2007年6月に立ち上げた会員制サイトで、会員数は約1200万人、PV数は月間5億くらいあります。このサイトではゲーミフィケーションの要素もかなりふんだんに取り入れています。これはリクルートメント重視の施策で、まずコカ・コーラを知ってもらうということが大きな役割です。
コカ・コーラではブランドごとに異なる世界観を大切にしています。その中で、「コカ・コーラ パーク」はそこに横串を通す、クロスブランドのポータルサイト。コカ・コーラ社製品の中で消費者の回遊率を上げることが当初の目的でしたが、会員のためのサイトとして会員数を増やす施策を練っていった結果、現在のように会員に楽しんでもらえるコンテンツを提供するようになったのです。

――2つ目は、今出てきた「コカ・コーラ ゼロ」「ジョージア」「爽健美茶」などのブランドサイトですね。
ブランドサイトは、各ブランドの世界観、メッセージを体験していただくことが目的です。そして3つ目が「cocacola.co.jp」というコーポレートサイト。日本コカ・コーラという会社、フランチャイザーとしての日本のコカ・コーラシステム全体の取り組み、企業としてのかたちを伝えるのが役割です。2000年代の前半くらいから、お客様にとって信頼しうる企業かどうかが購入のドライバーとなっていった。「CSR(Corporate Social Responsibility)」という言葉が注目されるようになる中で、信頼に足りうる企業であることを情報発信していくのがコーポレートサイトの役割なのです。