強力なバイラル性で、広告記事もソーシャルメディアで話題に
ソーシャルメディアとの連携を特徴とした新興のオンラインメディアも、多くはオンライン広告収入で運用していこうとしている。そこでネイティブ広告に挑むことになる。
その先兵的な役割を演じているのがBuzzfeedである。爆発的なバイラル性を売りにしたパブリッシャーであるが、注目すべきは初めから売上をネイティブ広告収入に絞り、既に軌道に乗せていることだ。Buzzfeedでは専任のスタッフライターたちを中心に、消費者がソーシャルメディアで共有したくなるテーマや切口の記事を編集している。実際、同サイトの各記事にはソーシャルメディアから大量のトラフィックを呼び込んでいる。
そこで編集コンテンツと同じ手法で、ネイティブ広告のコンテンツも制作することにした。だが、強力なバイラル性を持たせるコンテンツ(クリエイティブ)を作り上げるにはかなりのノウハウが必要だ。そこでBuzzfeedでは、広告主(ブランド)と一緒にコンテンツを作るために、約30人の専門スタッフからなる独立チームを用意している。
また、ソニーも7月から同サイトのネイティブ広告主になった。新学期を控えて、新入生などにソニーのVaioを売りたいためである。でも現在、投稿している3本の広告記事では、製品についてはほとんど触れていない。新入生が経験するであろうイベントや、入学前に知っておくべきことなどを、興味深い写真やビデオで紹介している。バイラル性を盛り込んでいるため、広告記事なのにソーシャルメディアでも話題になっている。若い人にもソニーブランドに親しみを持ってもらい、Vaioを認知してもらう狙いは達成したのかもしれない。
このようにネイティブ広告は、実際に走り出している。eMarketerの調査によると、米国のソーシャルメディアのネイティブ広告費(年間)は、2012年の16億3000万ドルから2017年には45億7000万ドルに膨れ上がると予測している。だが先に述べたように、肝心のネイティブ広告の定義や運用ルールが定まっていないのが現状だ。
例えば編集と広告とをどこまで識別すべきか、またブランドコンテンツのあり方をどうすべきか、など業界として意見をまとめる必要がある。下手をすると、ステルスマーケティングが発生したり、メディアの価値を損なうことになりかねない。ネイティブ広告をいち早く仕掛けたフォーブスは、メニュー名を最初「AdVoice」としたが、のちに「BrandVoice」と改名した。消費者に煙たがられている広告のイメージを払しょくし、質の高いブランドコンテンツを提供することにより、メディアの価値を高めたいとの意思表示なのだろう。
紹介できなかったが、Sharethroughを先頭にネイティブ広告のプラットフォームの整備が、米国で急ピッチで進められていることを最後に伝えておく。
