連関力アップには知識と経験
隠喩、明喩を発想するコツは<連関力>と言われている。異質なもの、関係がないように見えるものを上手くつなげる発想である。両者に共通する因子を発見してつなぐ、一方の因子に似ている因子を持つものを探してつなぐということ。
ジョブズも「創造力というのは、いろいろなものをつなぐ力だ」と言っている。昔からあるもの、他が気づかないものを組み合わせる連関力の強さが、ジョブズのイノベーションの源であることはよく知られている。
簡単ではないよね。ジョブズみたいに頭良くないし……。いや、悲観しなくてもいいらしい。ハーバード大の研究によると、経験や知識が豊富になれば、比例して、脳の関連づけ能力も高くなるという。
カンの良い方なら、ポンと膝を打つだろう。約70年前に出版されたアイデアのバイブル『アイデアのつくり方』にも同じことが書かれてあった。著者のジェームズ・W・ヤング(コピーライターを経て大手広告代理店の最高顧問)は、アイデアについてこう書いている。
アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない。
牛と同じである。食べなければミルクは出ない。
知識や経験をたくさんインプットすることを説いている。専門分野以外に、リベラルアーツが不可欠なのだ。さらには、こうも言う。
言葉はアイデアのシンボルなので、言葉を集めることによってアイデアを集めることもできるのである。
コピーライティングの上達法を聞かれると、コピーをたくさん見て、面白い、思わず反応したものをメモするなどしてネタ帳を作ることをすすめるが、これはヤングの考えをヒントにしたものだ。
つまるところ、隠喩や明喩の発想力を鍛えることは、おのずとアイデアの発想力を鍛えることになる。キャッチフレーズなり、ヘッドラインなり、ひねり出すときはできるだけ、隠喩や明喩を活かしてひと手間かけてほしい。読まれるための工夫でもあるが、あなた自身の発想力アップにも役立つのである。
もちろん、すんなりと浮かんでこないだろう。そんな場合はどうするか。冒頭で紹介した「Madmen」にこんなシーンがある。コピーが浮かばずに煮詰まっている新米のコピーライターにドレイパーがアドバイスをする。
「ペギー、よく考えるんだ。そして忘れる。すると不思議なことにアイデアが湧いてくる」
これ、本当に起きます。だから頑張ってください。
まとめ
- 隠喩は全く違うが、イメージや本質が似ている言葉に置き換えるレトリック
- コピーなど実用文での隠喩は、分かりやすい納得できるものでなくてはならない
- 隠喩の発想力を鍛えることは、アイデアの発想力アップにつながる

●アイデアのつくり方(ジェームズ・W・ヤング著/阪急コミュニケーションズ)
アイデアづくりの原理について書かれた、あまりに有名な古典です。クリエイティブ方面ではたいていの人が読んでいるようですが、それ以外の方も必読です。アイデアを生み出す原理や思考のプロセスを分かりやすく紹介。知ってると知らないとでは、アウトプットが全く違ってきます。
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