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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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デジタルマーケティング時代の今こそ問う!マーケターに求められる「変化」と、昔も今も変わらない「マーケティングの本質」とは

マーケティングの出発点は価値創出

 では、価値を創出するとはどういうことか?永井氏は、顧客絶対主義と顧客中心主義の違いを挙げる。

 「両者とも顧客を大切にすると考えている点では同じに思えますが、実はまったく違います。この違いは、なかなか理解されていません。顧客絶対主義は『お客様は神様』と考えます。顧客は絶対に正しい。だから全ての要望に応えようとするのです。『お客様には絶対にノーと言わない』と考えるのは、まさに顧客絶対主義の発想です。一方、顧客中心主義は『顧客は大切な人』だと考えます。そして顧客が間違ったら助け、気づかない要望に応えます。その結果、顧客絶対主義ではライバルとの違いが出せずに価格勝負になりますが、顧客中心主義はダントツの価値を提供できるのです。

 ここからもわかる通り、マーケティングの出発点は『顧客の価値創出』です。ターゲットとなる顧客はどこにいるか、その顧客はどのような課題を持っているか、その課題に対して我々はどのような価値を届けるか。これらを考えずに、マーケティングの手段に過ぎないマーケティングミックスである『商品戦略』『プロモーション戦略』『価格戦略』『チャネル戦略』だけをいくら考えても、失敗するだけです」

デジタルマーケティング時代において変わること・変わらないこと

 では、デジタルマーケティング時代の「流行」、つまり変わっていくポイントは何か。永井氏は「PDCAサイクルのスピード」を挙げる。

 「工業社会において、経営資源はヒト・モノ・カネと言われてきました。情報社会ではこれに『情報』が加わり、現代のグローバル社会・ネット社会では第5の経営資源である『時間』が加わりました。もちろん、これまでも時間は大切な経営資源でしたが、世の中が複雑化しているいま、時間はますます重要な資源になっています」

 この「時間」という経営資源を獲得するためには、圧倒的なスピードで動くことが必要になる。そのためには、仮説を立てて、すぐ実行し、検証することが必要になる。PDCA(Plan,Do,Check,Action)は、そのための方法論だ。

 しかしPDCAは、1度回しただけではまったく意味がない。PDCAは学びのプロセスだからだ。1回PDCAを回すと、一段階レベルアップする。2回回すと二段階レベルアップする。このように、あたかも螺旋階段を上がるように、高速でPDCAを何度も回すことにPDCAの価値がある。PDCAを積み重ねることにより、生の市場や顧客から得られた学びを蓄積し、改善することで、結果を積み上げることができるのだ。

 永井氏は、企画段階でコンセンサス作りに多くの時間を費やし、なかなか実行に至らない日本企業に警鐘を鳴らす。「かつては目標がシンプルだったし、変化も今ほど急激ではありませんでした。だから企画段階でコンセンサス作りをすることに意味がありました。ちょうど山登りで綿密な登山計画を立てるようなものです。山登りでは、山頂の場所が途中で変わることはありません。しかし変化が激しい現代では、登山の最中にその山頂の位置が移動しているのです。むしろ波乗りのように、目標とする場所がどんどん変わる前提で、波の状況に合わせて、体勢を変えねばなりません。

 だから現代では、大まかな方向性を決めた段階で、まずは行動に移すことが重要です。3か月かけて完璧なプランを立てるよりも、半日で仮説を立てて、すぐに実行することが必要なのです。自動化できるものは自動化し、リアルタイムでチェックし、プランを柔軟に変更していくことで、PDCAを高速に回し、目標の波に乗れるのです。そしてデジタルマーケティングは、このPDCAを高速回転する上で、極めて強力な手段なのです」

 デジタルマーケティング時代においても、「顧客の価値を創出する」というマーケティングの役割は変わらない。顧客にどのような価値を届けるかを定義した上で、それをより効果的・効率的に実現する手段として、日々進化するマーケティングツールやテクノロジーを有効に活用していくことが必要だ。マーケターには、不易と流行を見極めて施策に落とし込むことが求められるのだ。

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この記事の著者

齋藤 麻紀子(サイトウ マキコ)

フリーランスライター・エディター

74年生まれ、福岡県出身、早稲田大学第二文学部演劇専修卒業。 コンサルティング会社にて企業再建に従事したのち、独立。ビジネス誌や週刊誌等を通じて、新たなビジネストレンドや働き方を発信すると同時に、企業の情報発信支援等も行う。震災後は東北で起こるイノベーションにも注目、取...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2013/10/25 08:00 https://markezine.jp/article/detail/18632

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