寿司皿にICタグ、回転寿司界の革命児「スシロー」
続いて、回転寿司チェーンを展開する、あきんどスシローの情報システム部長である田中覚氏が登壇。「我々は寿司屋であってIT屋ではない」という田中氏は、ネタの鮮度が問われる回転寿司の世界で、無駄なくおいしい寿司を安く提供するための仕組みづくりについて語った。
回転寿司を利用する人が店舗に入って感じるのは、「まわっているお寿司が古いのでは?」という不安。スシローでは時間が経過ものを排除するため、寿司皿の下にICタグをつけて鮮度管理を行っている。また、自分が食べたいものを注文したいというニーズにこたえるため、客席にタッチパネルを導入している。
こうして蓄積したデータをどう活用するか。スシローの情報システム部のメンバーは5人しかいない。「ネタにはお金をかけるが、システムにはお金をかけない」というポリシーのもと、システム構築への模索を始めた田中氏。繁忙期と閑散期の差がはげしい回転寿司特有の環境も考慮し、自社サーバの構築、データセンターの利用を検討した後、必要なときに必要な分だけ使えるクラウド環境に狙いを定めた。そしてクラウドでも活用できるウイングアークのBIツール「Dr.Sum EA」を選択した。
タッチパネルでの「おすすめ」は本当に効いているのか?
スシローでは2週間に1回、新商品を展開している。定番のネタだけでなく、自社開発した新しいお寿司も楽しんでほしい。ウイングアークの協力のもとレポートを見ながら改善に取り組むなかで、タッチパネルに「おすすめ」タブを設けて商品をPRするアイデアが浮かんだ。
しかし、実施後のデータを分析すると、「おすすめ」タブ自体が見られていないうえ、マグロなどの魚種の人気が強いことがわかった。「ショックだった」という田中氏。しかし、タッチパネルのメニュー構成を見直すうち、いくつかの課題が見えてきた。
タブの中にある複数のページのうち、圧倒的に1ページ目が見られていること。複数ページがあっても、末尾のページは商品点数が少なく余白が多くなっている。こうした点を改善し、データの見方も変えてみると、「おすすめ」タブが商品力アップに貢献していることが明らかになった。とくに、来店して最初の注文では効果が絶大だったという。
「勘と経験は、データで裏付けするとインサイトに変わる」と述べる田中氏。鮮度が勝負の回転寿司の世界で、新たなデータ活用の世界を切り開いていく姿勢を示した。
トレジャーデータ、「クラウドから得られる3つのメリット」
続いて、日本人技術者が米国で創業し、日米でクラウドサービスを展開する米トレジャーデータのCTO太田一樹氏が登壇した。スーパーコンピュータの研究者で、大規模データの分散処理に欠かせないHadoopのコミュニティを立ち上げ、1500人もの規模に発展させたことで知られる太田氏。Hadoopが注目を集める一方で、初心者にとってはハードルが高く、運用スキルが必要であることにビジネスチャンスを見出し、起業に至った。現在では100社以上が採用し、1秒間に収集されるレコード数は15万件、解析クエリ600万件、合計レコード数は1.5兆件にも及ぶ。
トレジャーデータが提供するサービスの柱は「データ収集」「ストレージ&処理」「データ解析」の3つ。太田氏は、クラウドから得られるバリューとして次の3つを挙げる。ひとつは「Time to Value」。従来は結果を出すのに2年かかったプロジェクトが、クラウドによってわずか5日に短縮できたという事例もあるという。「Economy & Flexibility」では、月額課金で利用できる手軽さ。そして「Simple & Supported」では、長く使ってもらうクラウドを目指してサポートにも注力していることを強調した。
昨年トレジャーデータはウイングアークと提携を発表。ウイングアークのBIツール「Dr.Sum EA」「MotionBoard」と連携し、大規模データ処理をクラウドで可能にしている。さきほど登場したあきんどスシローの案件は、両社が連携して実現したもの。まだまだ、自社のデータをクラウドに上げることに抵抗を感じる会社は多いことから、トレジャーデータではデータの暗号化やデータ保全にも注力している。
また、日米でクラウド利用に差はないと語る太田氏は「日本の製造業も大きなデータをもっている」と指摘する。今後は、数千億のデータをバッチ処理することができるHadoopを使って、MotionBoardからも数十億件のデータを閲覧可能にするとして、今後も日本企業をさらに支援していくと語った。