オーディエンスデータで何が可能になるのか
下表は、データセラーDMPの活用段階レベルで分けたものである。上位に行くほど“利用データの幅が広がる”ということをあらわしており、完成度が上がるというものではないことをご了承いただきたい。

表の下のほうから見ていこう。まず、レベル1と2はDSPとしての活用であり、DMP運用とは言えない。
レベル3はDMP活用の前準備にあたり、属性情報やコンバージョンフラグなどをもとにしたセグメンテーションだ。このセグメントをもとに、データセラーDMPのマスター・データベースへアクセスして「オーディエンス拡張」を行うことになる。いわゆる“配信ターゲットを作る”作業だ。
データセラーDMPのメニューとして期待される典型的な機能「オーディエンス拡張」はレベル4になる。データセラーDMPを採用した企業のうち、半数以上が「オーディエンス拡張」の利用に留まっているという現状がある。
前述したとおり、データセラーDMPは、アウトバウンドデータの網羅的な統合と、その活用を目指している。つまり、“ある人” の行動において、企業の知りえない行動データの統合と、その接点のコントロールだ。そういった意味でレベル5以上は、本質的なデータセラーDMP活用の領域になる。
レベル5「非接触&ロストユーザの分析」
分析の例として、
- 広告接触があったのにロストしたユーザ群のうち、競合の接触があるユーザと、自社ユーザの行動傾向の比較をする
- コンバージョンに至らず途中離脱するユーザの分析と、クリエイティブ最適化
などが挙げられる。DMPは“貯めるハコ”という認識が強いが、分析に使うこともできる大きな可能性がある。しかし現状では、多くの事業会社が使いこなせていない機能だ。
レベル6「他社DSP、タグマネージャーとの接続」
レベル7「ソーシャルメディア情報の取り込み」
他社DSPと外部データの接続になる。双方とも拡張性を高めるものになり、この他にもLP最適化ツール、メール配信システム、ターゲティングツールなどとの連携がスタートしている。
特にソーシャル分野のデータ連携はインサイトが多分に含まれる行動ログとして期待が大きい。
レベル8「オウンドデータの取り込み」
レベル9「プライベートDMPとの接続」
インバウンドデータ側との連携である。自社保有データの取り込み事例では、“自社の商品を月にいくら以上買ってくれた人”といった購買傾向によるセグメントの取り込みを行っている。逆の流れにあたるデータセラーDMP側からの配信情報フィードバックとしては、キャンペーン単位のフィードバックも行われている。さらに先進的な事例として、CookieレベルでのID連携が始まっており、最小単位のアウトバウンドデータとインバウンドデータの実験的な統合が始まっている。
現状の課題
発展を続けるデータセラーDMPだが、日進月歩のテクノロジー進化を前に、いくつかの課題を抱えている。それは、第1回で述べたCookie技術の機能停止の流れと、スマートフォンによるアクセスにおけるアプリ接触の増加である。この点に関して、データセラーDMP各社はすでに研究と対策を行っているようである。
事業会社にとって外のデータを取り扱うデータセラーDMPは、ユーザ個人を判別するためのCookieSyncといった、IDを交換・同調する技術に長けている。広告接点もしかりで、外部サイトにおける個人判定処理に優れている。そのため拡張性が高く、外部サイトとの連携がしやすいという特長がある。
ユーザのほとんどは自社以外のサイトに接触しており、割合で言えば自社サイト以外で過ごしている時間の方が多い。そのような、自社以外で発生する「オーディエンスデータ」に対して、どのように最適化するかを考えることができるプラットフォームがデータセラーDMPである。
導入済みの企業の大半はまだ使いこなせていない現状があるが、アウトバウンドデータ全体の最適化を推進するために、これからさらに活用の可能性が広がっていくプラットフォームだ。
次回は、「プライベートDMPを使って可能になること」と、「DMP導入における事業会社の選択肢」について解説を行う。