大手ITベンダー各社に共通する戦略とは
もう少し詳しく見てみましょう。
IBM
IBMは2010年に早くもUnica(現IBM Campaign)を買収しており、その他の業務系アプリケーションを含めて、オンラインとオフラインを合わせた総合的なソリューションの提供という意味では実績も豊富で先行している印象です。
昨年、トラッキングから分析、Webのパーソナライズ、メールマーケティング機能までを備えた新しいタイプのクラウドベースのソリューション「IBM Marketing Center」をリリースし、またモバイルプッシュのXtifyやEメールベンダー由来のCCCM、Silverpopを買収しています。
このようにIBMはオンラインの実行系ソリューションをかなり強化しているように見えます。5月に開催されたSmarter Commerce Global Summit 2014 Tampaにおいて「買収済みのソリューション群の統合パッケージソリューション」として「IBM ExperienceOne」がリリースされました(参考記事)。 IBM Campaignは基本的にオンプレミスでしたが「クラウドかオンプレミスを選択できる」としているのも興味深い点です。
Oracle
Oracleは元々Siebelという強力なCRMソリューションを持っていますが、マーケティング分野ではこれまで存在感が薄い印象でした。
しかし2012年にVitrue(ソーシャルコミュニケーション管理)、Collective Intellect(ソーシャルメディア分析)、Involver(ソーシャルアプリ開発プラットフォーム)といった有力なソーシャルメディアマーケティングのベンダーを買収し、今年に入ってEメールマーケティングを出自としたCCCMであるResponsysを、そしてデータエクスチェンジに強みを持つDMPのBluekaiを立て続けに買収しました。
またOracleは、昨年有力なマーケティングオートメーションのベンダーであるEloquaも買収しています。これから本格的な統合が進む中でソリューションの全体像が見えてくると思います。
Adobe
Adobeは2009年にOmnitureを買収しましたが、Omnitureは以前からSiteCatalyst(現Adobe Analytics)を軸にした複合マーケティングソリューションを提供していました。昨年3月にはそれまでの27製品をAdobe Analytics 、Adobe Experience Manager 、Adobe Target、Adobe Social、Adobe Media Managerという5つのソリューションにまとめてAdobe Marketing Cloudとしてリリースしました。
2011年に買収したDemdex(DMP)や2012年に買収したEfficient Frontier(オンライン広告管理・最適化)はオンライン広告の管理・最適化ソリューションであるAdobe Media Managerに統合されています。そして昨年CCCMのNeolaneを買収し、6つめのソリューションAdobe Campaignとして統合しました。
NeolaneはコールセンターやPOSなどのオフラインも含めたクロスチャネルのコミュニケーション管理を得意としているようなので、これまでオンラインに特化していたイメージのAdobeのソリューションでオフラインもカバーできることになります。
salesforce.com
salesforce.comはCRMやSFAのイメージが強くBtoBの領域を得意としてきましたが、昨年買収したExactTargetは元々BtoC向けの大手企業を顧客に持つEメールマーケティングベンダーとして世界有数の実績を持っていて、そこからCCCMに発展しています。
salesforce.com はExactTargetを、以前に買収したRadian6(ソーシャルリスニング)、Buddy Media(ソーシャルコンテンツ管理)といったソーシャルメディアマーケティングの有力ソリューションと統合。メール、Web、ソーシャル、モバイルでのOne-to-Oneコミュニケーションを統合管理するExactTarget Marketing Cloud として提供を開始しています。
6月10日に東京で開催したイベントではExactTarget Marketing Cloudの日本での本格展開とLINEとのインテグレーションを発表しました(LINEビジネスコネクトとして初めてのインテグレーション事例となります。参考情報)。他にもスマホアプリ向けのプッシュ通知やfacebook広告のターゲティング配信まですでに実装されていて、Eメールと同様にターゲティングして配信することができます。クロスチャネルという意味では最も進んでいる印象です。
ちなみにOracleが買収したResponsysと、IBMが買収を発表したSilverpop、salesforce.comが買収したExactTargetのCCCM3社は共にEメールマーケティングベンダーでもあり、メールを起点にしてチャネルを拡大しキャンペーン管理機能を加えてCCCM化を進めてきたという意味ではとてもよく似ています。
こうして見ると、ここ数年の大手ITベンダー各社の動きには次のような共通した特徴があることがわかります。
- マーケティング分野への本格進出
- コミュニケーション実行機能の強化
- 「スイート」化