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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

クロスチャネルキャンペーンマネジメントの潮流

大手IT系ベンダー各社がマーケティング関連ベンダーを次々と買収する背景と狙い


なぜコミュニケーション実行機能の強化が必要なのか

 1の「マーケティング分野への本格進出」は今回のテーマからずれるので置いておくとして、2の「コミュニケーション実行機能の強化」について考えてみます。

 これまで日本では、CCCMといっても実際使われるチャネルはEメールとDM程度でした。データに基づいてOne-to-Oneコミュニケーションを行うことができる現実的なチャネルが、それぐらいしか無かったからです。

 しかし今やあらゆるマーケティングコミュニケーションはデータベースマーケティングとなりつつあり、One-to-Oneコミュニケーションのチャネルが拡大しようとしています。

 Eメールに加えてパーソナライズドウェブ、スマートフォンのプッシュ、オンライン広告も顧客データと連動してターゲティング配信が可能です。また、ソーシャルメディアでのデータ連携も始まっています。そこまで広がったチャネルを個別に手動で管理するのは現実的ではありません。CCCMの本来の機能である「クロスチャネルでのキャンペーン管理機能」が必要とされるようになったのです。

 また、最近流通業を中心として「オムニチャネル」が重要なキーワードとなってきました。

 オンラインとオフラインの全ての購買チャネルを通して、シームレスな購買体験を可能にしようという考え方ですが、そのためにはやはり全てのチャネルを横断したOne-to-Oneでの顧客コミュニケーションの管理が必要になってきます。

 このようにクロスチャネルでのコミュニケーションの管理と最適化は、企業のマーケティング活動において非常に重要な課題となりつつあります。大手ITベンダーがCCCMを中心としたコミュニケーション実行系のベンダーを次々と買収しているのは、そのような課題に対するソリューションを提供するためだと考えられます。

なぜスイート化が必要なのか

 3の「スイート化」についてはどうでしょうか。これまでは、CCCMと各チャネルの実行ソリューションの間ではデータ連携が必要でした。

 例えば実行機能を持たないCCCMを使って、顧客のWebサイト訪問を起点にメールを送信する場合には、まずアクセス解析ソフトからアクセスログをバッチ処理でCCCMに取り込み、そのデータに基づいてCCCMでターゲティングリストを生成し、そのリストをメール配信システムに送る、といったプロセスを経ていました。

 しかし今後重要になってくるのはリアルタイム性です。顧客がECサイトでの商品選びに困っていたら瞬時に適切なサポートが必要ですし、顧客がお店の近くにいればその瞬間に関心がありそうな商品の在庫情報を届ける、といったコミュニケーションが求められます。

 そのためには顧客に関するあらゆるデータをリアルタイムで収集しシナリオに反映するスピードが必要で、別々のソリューション間でデータ連携するよりも、最初から同一プラットフォーム上でデータを共有している方がはるかに有利です。

 また、今後データ連携はどんどん複雑化していきます。複雑なデータ連携には初期の要件整理と開発だけで相当な時間とコストがかかり、しかも連携上の制約によって使える機能が制限されることもあります。スイート化は、そういった面倒な問題からマーケターを解放するための1つの手段と言えるでしょう。

 一方で上記の大手ITベンダーのようなスイート化戦略を取らないベンダーは、実行系のベンダーであればキャンペーンマネジメント機能を追加したり、CCCMベンダーであればメール配信機能やアクセスログ収集機能を追加するなどして単独でカバーできる範囲を拡大していくと予想されます。足りない部分は、その他のベンダーと簡単に連携できる仕組みを用意することになるでしょう。

 必ずしもスイート化戦略をとる大手ITベンダーが、日本のマーケターにとって最適というわけではないと思います。大手ITベンダーは、基本的にグローバル展開するエンタープライズと呼ばれる大手企業のニーズに対応できる仕組みとしてスイートを用意しているからです。

 ただ、有力なマーケティングテクノロジーベンダーが次々とどこかのスイートに組み込まれ、今後ある種の囲い込みが進んでいくとしたら、一定レベル以上のクロスチャネルコミュニケーションを実現しようとした時の選択肢は限られてくるかもしれません。

CCCMの導入を検討する前に必要なこと

 今回は大手ITベンダーの買収戦略から今後のCCCMをめぐる環境について考えてみましたが、CCCM的な機能が今後マーケティングソリューションのフロントエンドにおいて、重要な役割を果たすのは間違いないと思います。

 一方でデータソースとコミュニケーションチャネルは今後も拡大と細分化を続けるので、ソリューション全体で見ればいつまでも完成することがなく常に進化を続けることになります。

 したがって、CCCMを単独で横に並べて現時点の機能だけ比較してもあまり意味がありません。機能は絶え間なく進化を続けるでしょうし、単独ではソリューションとして完結していないからです。

 CCCMの導入を検討する場合には、まず少なくともベンダーの設計思想と将来ビジョンを理解し、自社のビジョンとの相性を考えてみる必要があると思います。そしてCCCM単独ではなく、他の機能と組み合わせてトータルソリューションをどう組み立てることができるのか、データソースとチャネルの拡大にはどう対応できるのか、といった視点からも検討すべきでしょう。

 何よりもまず使う側の将来ビジョン──。どのようなマーケティングコミュニケーションを実現したいのかを明確にしておくことが重要なのです。

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この記事の著者

岡本 泰治(オカモトヤスハル)

 株式会社ディレクタス 代表取締役。リクルートを経て、ディレクタスを設立。数多くの大手企業のeCRM及びEメールマーケティングの戦略を立案し実行を支援。現在は複数チャネルを横断したクロスチャネル・マーケティングのためのコンサルティングとCCCMなどのツール提供、運用支援を行う。著書に『BtoC向けマーケティングオートメーシ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2014/06/17 11:08 https://markezine.jp/article/detail/20068

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