日本市場の低迷が世界に影響
昨年、世界1位のアメリカの売上は、前年から0.8%増加し44億7000万ドルでした。うち、デジタル音楽の売上は26億7000万ドルで、60%以上を占めるまで成長しています。アメリカが久々にプラス成長を見せた中、業界全体の収益に大きくネガティブな影響を与えたのは、日本の音楽市場の売上低迷でした。
日本での売上は前年から16.7%減の13億7000万ドルにとどまり、IFPIは世界の売上減少の原因は日本の急落の影響が大きいとレポートで述べています。世界の売上推移は前年比3.9%ダウンとなっていますが、日本を除くと0.1%ダウンと推測され、大きくプラスに傾きます。
なぜ日本の売上が大きく取り上げられるのでしょうか? それは、日本が世界音楽市場の約5分の1の規模を誇る市場であることがまず挙げられます。その日本の状況を、IFPIはレポートの中で今の日本市場を次のように表現しています。
「日本の音楽産業はデジタル音楽市場への適応を図っているが、デジタル音楽による収益モデルへの転換は、世界の主要各国に比べ初期段階にあるため困難を極めている。」
日本と似ているドイツの売上比率
デジタル音楽ビジネスへの移行が遅れている日本。現状を打開するヒントは、市場規模第3位のドイツから得られるかもしれません。
日本は、CD販売とデジタル音楽ビジネスの割合が80%と16%。興味深いことに、ドイツはCDとデジタル音楽の比率が日本と似ています。ドイツはCDが73%でデジタル音楽が21%と、世界的にデジタルが過半数のシェアを占める市場が多い中、唯一日本とともに大きな国内CDビジネスを抱えているのです。

しかし、ドイツの売上は、昨年1.1%成長し13億7000万ドル。ドイツはプラス成長で、日本は2桁の減少。この差はなんだったのでしょうか?
ドイツにおける成長の大きな要因は音楽ストリーミングの2桁成長です。ドイツでは音楽ストリーミングの売上が11.7%の増加となりました。CDビジネスがまだ大きなシェアを占めてはいますが、ドイツでは着実に次のフェーズへの移行を準備し始めています。
これこそが今の日本に足りないプロセスで、今後の日本に必要な方向性なのではないでしょうか? スマホの強みであるユビキタス性を最大限に活用したストリーミングは、CDやダウンロード購入に比べ、音楽を聴く上での課題を縮小することができるのが利点です。
スピードや利便性を追求するなら音楽ストリーミングへ、これから「音楽が好きな」リスナーの関心は移って行くでしょう。その時までに日本国内でどれだけストリーミングで音楽が聴ける環境が整っているかは、国内だけでなく世界中が注目しています。