オウンドメディアを始めたころの会社の状況
サイボウズは創業から今年で18年、国内のグループウェア市場シェアNo.1の企業に成長しました。その反面、変化の早いIT業界においてはもはや「老舗」といえるポジションになっていました。

組織のスケジュール管理ツールとして、まずサイボウズを選択肢に上げていただけるのは大変嬉しいのですが、逆に「サイボウズ=スケジューラー」という固定概念が強くなっていました。そしてあまり変化を良しとしない法人市場向け製品と言うこともあって、代わり映えのしないユーザーインターフェースに「古い」「ダサい」といったネガティブな評価も目立つようになってきていました。
いま、華々しいスタートアップの世界に注目が集まっていますが、企業には立ち上げ直後から事業を存続し、成長を続ける長い道のりが待っています。以下の単体売上推移グラフを見てもわかりますが、2000年頃の目覚ましい急成長と真逆の「踊り場」、当時はそんな言葉がふさわしい状況でした。

そんな中、サイボウズは新たなサービスを誕生させました。ひとつは個人向けの無料クラウドサービス「サイボウズLive」、そしてもうひとつはビジネスクラウドのプラットフォームを目指した「kintone」。この2つによって「スケジューラーソフトメーカー」というイメージから脱却しようとしたのです。
がしかし……
市場からは、相変わらずの古いサイボウズとして見られていたのです。「何かがおかしい…」、私はそう感じていました。
ビジネス状況を分析し、メディアのコンセプトを考える
何がおかしいのかを考え続けた結果、「製品を軸にコミュニケーションをしても、新しいお客様にたどり着くことはできなそうだ」と気付きました。これまでのサイボウズのお客様は「キャズム理論」でいうところの先端層でした。派手で下品な広告でも、目に留まることができれば、その製品が自分のニーズにあったものなのかを自分が持っている技術知識をもとに判断できる、そんな方々でした。

しかし今やグループウェア市場も成熟市場に突入し、お客様もITにあまり関心のない方々が大半の一般層に突入しました。有名な「キャズム理論」では、キャズムを超えるとターゲットへのアプローチ方法が180度変わるという点を一番に注意喚起していますが、まさにこの変化がサイボウズを襲っていたのです。一般層のお客様は「機能」より「価値」を基準に製品選択をします。もっと言うと、製品よりもその会社自体がイケてる会社なのかという点も重要な判断基準になります。
そう気づいた私たちは、あえて製品の宣伝をせず、世の中のビジネスパーソンが関心を持っている話題を中心に据えたメディア運営を心がけることにしました。そこで、メディアのコンセプトも「グループウェア活用術」とかではなく、「“新しい価値を生み出すチーム”のための、コラボレーションとITの情報サイト」と定義しました。グループウェアを使うことで生み出される価値を伝える上で、製品に縛られず「チームワーク」にまつわる情報を世の中の関心事と絡めてサイボウズらしい視点で伝えることで、より多くの人の目に触れることを狙ったのです。

世の中にはこんな働き方の変化があるんだ、新しい価値を生み出しているチームがこんなにあるんだということをお伝えしていく。すると、記事を肯定的に読んでくれた方は、サイボウズに対するブランドイメージも肯定的なものになるのではないか、そう期待しました。おまけに、その取材活動を通じて私たちがリアルなコラボレーションの現場を知ることができますし、それを製品開発にフィードバックすることもできると考えました。
それから2年。
今では、打ち合わせやイベントなどで「サイボウズ式、読んでるよ!」と言ってくださる方にお会いすることが増えて来ました。当初の想定を超えて大きく成長したサイボウズのオウンドメディア、その成果を簡単にまとめてみます。