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クロスチャネルキャンペーンマネジメントの潮流

稼働後3か月でメール経由の売上が約50%増加!ITを活用したマーケティングでできること、その成果


さらに進化するリアルタイムコミュニケーション

 リアルタイムデータとして今後活用が期待されるのは位置情報です。

 スマートフォンアプリで取得できるユーザーの位置情報に基づいて該当エリアの情報をメール送信するといった取り組みは既に始められていますし、ユーザーがある地点の半径何メートル以内に入ったら自動的にクーポンなどを送信する「ジオフェンシング」と呼ばれる技術もあります。

 しかし単に「そこにいる」というだけで、いちいちメールやプッシュ通知を送られても迷惑です。位置情報とその他の顧客情報を組み合わせて顧客にとって好ましい最適なアプローチをすることが必要になってくるでしょう。

 データを取得してからアプローチするまでの時間も問題になってきます。例えば米国のECサイトで前記の「カート放棄フォローメール」をカート放棄の翌日送信と4時間後送信とでA/Bテストしてみると、4時間後に送信したメールのCVRは翌日送信したメールの1.5倍だったという報告があります。商材の問題もあって一概には言えませんが、「鉄は熱いうちに打て」というのは多くの場合共通する真理だと思います。

 リアルタイムデータの代表であるWebアクセスログを使ったOne-to-Oneコミュニケーションを実施するためには、アクセス解析ソフトなどで取得されるアクセスログをCCCMに取り込み、ユーザーのcookieデータと顧客IDを紐づける必要があります(もちろん登録時にcookieデータの利用方法についても説明した上で顧客からパーミッションを取得していることが前提です)。

 CCCMによってはログ取得のための独自のタグを持っているものもあります。即時コミュニケーションが必要な場合は同一プラットフォーム上でログ取得からコミュニケーション実行まで行うことができる方が有利です。

 ここまで見てきたように、同じOne-to-Oneコミュニケーションといっても利用するデータによって実現できることと必要な仕組みが違います。

 CCCMは元々過去のデータを使ったコミュニケーションのために作られていますが、リアルタイムデータの活用ができなければ現在のCCCMが持つポテンシャルを十分活用しているとは言えないでしょう。今後はリアルタイムコミュニケーションがCCCM活用の中心になってくると思います。

【事例紹介】CCCMを活用したマガシークのEメールマーケティング

 アパレルEC大手のマガシーク株式会社は2013年7月にCCCMのResponsys Interact Suite(現在はOracle Marketing Cloudの一部)を導入し、顧客行動に合わせたシナリオメールの自動配信を開始しました。

 Adobe Analyticsで取得したアクセスログをResponsysに取り込み、あらかじめ設定されたプログラムに従ってサイト上の行動からターゲットを抽出して自動的にメールを配信。メールコンテンツの一部にはレコメンドエンジンのNaviPlusで生成されたお勧め商品が自動的に挿入されます。

 Responsys導入直後に「カート放棄フォローメール」と「商品閲覧フォローメール」を開始しました。「カート放棄フォローメール」は買い物かごに商品を入れたままサイトを離れて購入を完了していない顧客に送信され、「商品閲覧フォローメール」は商品ページを閲覧したままサイトを離れて当該商品を購入していない顧客に送信されます。

 また、最近では「在庫僅かメール」と「お値下げアラートメール」の配信も開始しました。「在庫僅かメール」は、ユーザーがお気に入りに登録した商品の在庫が1点になった際にその旨をメールにて連絡し「お値下げアラートメール」はお気に入りに登録した商品の値下げがされた際にメールが送信されます。

 これらのメール効果を配信した10か月分の結果を、週刊で定期配信されているメールマガジンと比較したものが下表です。

<全配信メルマガと比較したメール効果> 
2013年9月~2014年6月累計値を比較
カート放棄フォローメールのCVR(購入率)はメルマガの16倍、
お値下げアラートメールでも6倍を超えている。
<全配信メルマガと比較したメール効果> 2013年9月~2014年6月累計値を比較。カート放棄フォローメールのCVR(購入率)はメルマガの16倍、お値下げアラートメールでも6倍を超えている。

 また、メール配信者の再購入率にResponsys導入前と導入後で大きな差が表れています。サイト全体のリピート率も向上しており、これらのメール効果が単なる購入予定者の前倒し購入ではなく、サイト全体の売上向上に寄与していることが確認されました。

 これらの結果について、マガシーク株式会社 マガシーク事業本部 UX・マーケティング部の炭竃氏は次のように語っています。

 「稼働後3か月という短期間のうちにメール経由の売上が約50%増加、再購入率も約150%増加と具体的な実績を挙げられたことは素直に評価できます。稼働後から現在までは売上に直結するメールシナリオの実装を優先してきました。

 今後はまずメール経由の売上を全体の10%とすることを目標に順次施策を追加していく予定です。具体的にはカスタマージャーニーをより細かく分析し、ユーザー行動をトリガーとした各種シナリオの追加やユーザーの嗜好に基づいた商品レコメンドを組み込んだコンテンツの拡充を目指しています。

 メールの効果と配信コストの効率化を実現しながらも、より顧客の求めるサービスの提供に努め、Web企業でありながら実在する店舗の様なサービスを実現し、マガシークだから買いたいとユーザーに感じていただける様なショップを目指していきたいと考えています」

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この記事の著者

岡本 泰治(オカモトヤスハル)

 株式会社ディレクタス 代表取締役。リクルートを経て、ディレクタスを設立。数多くの大手企業のeCRM及びEメールマーケティングの戦略を立案し実行を支援。現在は複数チャネルを横断したクロスチャネル・マーケティングのためのコンサルティングとCCCMなどのツール提供、運用支援を行う。著書に『BtoC向けマーケティングオートメーシ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

谷米 竜馬(タニゴメ リョウマ)

株式会社ディレクタス マーケティンググループ リーダー 兼 アカウントマネジメントグループ コンサルタント

ハワイ大学生物学部を卒業後、京都大学再生医科学研究所にて脳発生の研究により医科学修士号を取得。卒業後は大手ECモール企業にて新規媒体開発やECコンサルタントを経て、現在はCRMに重点を置いたマーケ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2014/07/22 18:15 https://markezine.jp/article/detail/20426

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