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“小売店舗”視点で考えるO2O・オムニチャネル最新動向

「販売員が個人ECを運営」逆転の発想で実店舗をEC化するPARCO、これからのオムニチャネルは「販売&接客力」がカギに


パルコは販売員に委ねることで販売・接客力の最大化に挑戦

 PARCOでは、販売員が商品を選別し、提案する「キュレーションEC」を開始すると発表。今年5月に「パルコショップブログ」の記事で紹介された商品を、Webから(1)取置き予約 、(2)通販注文 ができる機能を追加した「カエルパルコ」を一部ショップでスタートしました。

 「カエルパルコ」では、店頭に立っている販売員みずからスマホで自分のオススメ商品を撮影し、説明文だけではなく価格から在庫まで登録してECサイトに表示。登録した商品に関する販売管理はすべて登録した販売員が行い、注文があった場合には店員自らがピッキングして配送します。要は販売員それぞれが自分の店舗の商品を用いた個人ECを運営するモデルです。これは「ショッピングセンターで実店舗在庫を売る」という点においても挑戦的かつ画期的なのですが、前述の「販売・接客力のレバレッジ」の観点でも注目するべき取り組みと言えます。

 過去、ショッピングセンター(SC)がネットで販売する際には、店舗とは別に専用の品揃え・在庫・物流を用意して専門の事業部が運営するという形が一般的でした。これは建物を用意してテナントに販売の多くを委ねるという不動産業をベースとしているSC業態では当たり前だった(むしろそれ以外の方法は想像すらされなかった)のですが、それゆえ、ECと実店舗の関連性はUR社などSPA(※2)が運営するEC以上に低く、販売員の販売・接客力は一切活用できない状況にありました。結果、渋谷109など一部のブランド力に長けたSCを除きECで成果を残すことは難しい状況にありました。

 実際、私もこれまで、いくつかのSCの方と実店舗在庫を販売していくような検討をした経験がありますが、多くの方から「SC業態では絶対に不可能」と言われ続けてきました。

 この観点で見ると、今回PARCOはこの壁を「販売員が個人EC店舗を運営する」というコロンブスの卵で崩すことに成功したといえます。「中央集権ではなく個人を信じることで彼らの力を引き出す」、実店舗らしいこの取り組みの成否が見えてくるのは、本格導入される秋以降となりますし、課題は山積みだと思いますが、オムニチャネルを追求する一人として浪漫を感じずにはいられません。

※2 SPA:Speciality store retailer of Private label Apparel。アパレルメーカーが製造し直接販売する形態

販売・接客力の追求はオムニチャネル型ECに不可欠

 「販売・接客力」を活用した明らかな成功事例は出てきていませんが、実店舗が優位性を持ち、かつショッピングにおいて不可欠な要素であることは間違いありません。今後オムニチャネル型ECを展開するにあたって必ず重要な地位を占めてきます。

 今回取り上げた各社の事例がそのまま成功事例となるかは当然未知数ではありますが、少なくともそのヒントを見出すことができる素晴らしい事例になってきます。

 私自身も新しいショッピングスタイルの探求者の一人として、各社の動向を見ながら模索と各社への提案を続けていきたいと思います。

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この記事の著者

伊藤 圭史(イトウ ケイジ)

伊藤圭史
Leonis & Co.共同代表

上智大学卒業後、IBMビジネスコンサルティングサービス(現日本IBM)に入社。デジタルマーケティング施策推進、CRMシステム導入など、顧客政策を中心とした戦略・システムプロジェクトに従事。2011年12月にオムニチャネルに特化してシステムとコンサルティングサービスを提供するLeonis & Co.を設立。オムニチャネルの専門家として通信会社や百貨店、電鉄など様々な企業を支援。現在はトランスコスモスグループのオムニチャネル推進支援サービスの中核企業としてオムニチャネルマーケティングシス...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2014/08/04 21:00 https://markezine.jp/article/detail/20495

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