「対メーカー」視点での動きも加速
国内においていち早くオムニチャネル化宣言を行ったセブン&アイグループの動きは顕著ですが、米国でもこれまで見てきたとおり、Amazonとウォルマートがしのぎを削って消費者との接点をどう取っていくかの戦いが激しくなってきました。
これまではどちらかというと店舗や小売の現場を中心に見てきましたが、今回はそこに商品を卸す「メーカー」という視点から、小売の環境が激変する中でどのようなイノベーションを行おうとしているのか、注目したいと思います。
P&Gの倉庫に出入りするAmazonのスタッフ
いかに早く、無駄なく配送するかが最大のテーマ
今後、小売の現場では店頭と、自社EC、Amazonや楽天などの他社ECモールなどをどのように活用していくかが、消費者接点構築の上での最大のテーマになると考えられます。そのうえで、どうしても出てくるのが「配送」の問題です。他社サイトでは当日か翌日に配送できるものが、自社サイトだと2~3日かかってしまう、現状でもそんな声はよく聞こえてきます。こういった状況に対してひとつのソリューションを見せているのがP&Gの事例です。
2013年10月、P&GはAmazonとの戦略的パートナーシップを発表しました。それを伝える記事がこちらです。
- Soap Opera: Amazon Moves In With P&G(Wall Street Journal)
- Amazon makes strategic alliance with Procter & Gamble (evigo)
より速く、より両社の商品配達のコストを下げるための提携であるということですが、P&Gの倉庫にAmazonの配達員が出入りし、梱包と出荷を担当する作業連携を深めることがポイントとなっています。
メーカーは、Amazonのリソースを利用し、自社のEC売上の拡大に利用する。Amazonも、増え続ける取扱い量に対し、自社だけでは賄いきれない物流拠点のキャパシティを増やすための絶好の策となっています。
すべてのECを支配してしまうかのような独占的なイメージも強いAmazonですが、引き続きこういったメーカーとの協調路線を取っているのは興味深いポイントです。Amazonはこのパターンでの提携をより強化していくということで、日用品メーカーであるSeventh Generation、Kimberly Clark、Georgia Pacificともすでに交渉に入っているという情報があります。
ハイアールが誇る驚愕の配送力
こうした提携戦略が出てくる一方で、中国に目を移すと、いまや白物家電ナンバーワンとなったハイアールの配送力が飛び抜けていると言われています。
中国全土に6000か所の物流拠点と5万台のトラックを保有すると言われるハイアールは、国家機関である中国郵政集団公司すら上回る配送能力とも言われ、最短1時間での家電製品配送も実現。すべてを1社でまかなってしまうという、先ほどのAmazonとP&Gの例とは逆のパターンですが、圧倒的な製品力と資本力によって独自の配送インフラまで持ってしまうハイアールからも、やはり目は離せません。
ウォルマートは自社データを利用してサプライヤーの広告費を有効活用
小売業者とメーカーやサプライヤーとの連携強化。そのひとつが、最近AdAgeが伝えたウォルマートの動きでしょう。同社は、商品を提供するサプライヤーのために、ターゲティングや買付、最適化が可能な広告プラットフォームの構想を発表。DSPやプライベートエクスチェンジを含む「Walmart Exchange(WMX)」によって、保有するさまざまなデータを活用して広告効果を高め、これまで無駄に費やしていたサプライヤーの広告費を有効活用することがねらいのようです。
また、以前お伝えしたウォルマートのアプリ「Walmart Savings Catcher」(レシートをスキャンして購買情報を送ることでポイントが付与される)から取得した購買データも活用。傘下の小売業者も含めてデータを活用したマーケティングをサポートする体制の整備に動き出しました。