盛り上がりの波に乗り、結果はKGIの1.6倍に
楽天ではKPI(Key Performance Indicator、重要業績指標)で事業を管理している。つまり、ブランディングやクリエイティビティが良い、というだけでは企画は採用されない。当然、「ソーシャルビールかけ」にも数値目標が求められた。「今回は、事業ゴールとして優勝セールの売上につなげるという目標がありました。そのためには、セールを盛り上げる必要があります。ですから、KGI(Key Goal Indicator、重要目標達成指標)にはセールの送客数を、KPIにはキャンペーンの参加者数・瓶の振られた回数・TwitterとFacebookによるシェア数を設定しました」と田島氏。結果的には、セールの送客数は目標の1.6倍という結果になったという。
「キャンペーンの参加者は急激に増えたというより、少しずつ増加しました」と田島氏は語る。楽天イーグルスの優勝という波に乗って、じわじわ情報が広がった。「世の中の“うねり”がキャンペーンに跳ね返ったという感じ。実際に毎日ソーシャルメディアを見ていると、期待の波が高くなっていく様子が見えました」と田島氏。特に、リーグ優勝が決まった後、セ・パ両リーグ対抗の日本一決定戦まで間は、駆け上がるように、キャンペーンの計測値が上昇していったという。

「ソーシャルメディアは世の中の流れがそのまま反映されます。そのために、操作ができません。今回は仕掛けるのではなく、みなさんの気持ちの流れに乗る形で、一緒に盛り上がっていくことができました」と田島氏。
キャンペーンを通して得た「気付き」とは?
今回のキャンペーンを通して、田島氏は「ソーシャルパワー」を改めて実感したと語る。日本ではソーシャルメディアが2010年~2012年にかけて急激に浸透した。マーケティング分野でも、顧客とのエンゲージ醸成という観点で取り上げられたことは記憶に新しい。しかし、この状況について「ソーシャルメディアは流行になってしまいました。そして、今ではマーケターの間でもソーシャルメディアの話題は沈下しています」と田島氏は指摘する。「ソーシャルは流行り廃りとは異なった、もっと価値のあるもの」と田島氏は考える。そして、「今回改めて、ソーシャル上にはコミュニケーションをとるべき相手が大勢いる」と体感したという。
ソーシャルメディアのユーザーは、企業のトラブルなどネガティブな内容に敏感だ。田島氏もソーシャル上で、様々な声に対峙している。しかし、今回の取り組みでは、非常に多くの温かいメッセージや、東北復興への想いを受けたという。まさに、ドラマが目の前で繰り広げられている状態だ。「メッセージをくださった方に、直接お礼を言いたいくらいでした。まさにソーシャル担当冥利に尽きる出来事でした」と田島氏。
