4つのソリューションを集結した「Oracle Marketing Cloud」
デジタルを活用したマーケティング・ソリューションの発展によって、企業のマーケティング活動のうちシステムが担える部分は拡大を続けている。だが、ツールの使い方が複雑だったり、企業内でのデータを扱う業務の分断が課題になったりと、十分に使いこなせている企業はまだ少ない現状だ。
そうした難しさを一切払拭し、先行して米国で多くの企業が活用し成果を上げているのが、今回日本市場向けに発表された「Oracle Marketing Cloud」だ。日本オラクル 執行役員 クラウドアプリケーション事業統括の多田直哉氏は、「オラクルマーケティングクラウドを活用することで、適切なメッセージを、適切なタイミングで、適切な人に適切なチャネルで届けることができる」と解説する。
ここまで包括的なマーケティングを実施できるのは、このソリューションがいずれもクラウド型の4つのサービスが集結する形で構成されているからだ。その4つとは、マーケティングを自動化する「Oracle Eloqua」、クロスチャネル・マーケティングを推進する「Oracle Responsys」、ソーシャルメディアを適切に管理する「Oracle Social Cloud」、そして今回新たに加わった、顧客に最適化された広告キャンペーンを行えるデータ・マネジメント・プラットフォーム「Oracle BlueKai」。多田氏のプレゼンテーションに続いて、日本市場ですでにオラクルのソリューションを導入しているマガシーク 代表取締役社長の井上直也氏より、実例が語られた。
マガシーク:「Oracle Responsys」導入でリピーター増加
アパレルECサイト「MAGASEEK」を手がけるマガシークは、2000年に伊藤忠商事内の一事業としてスタート。現在ではBtoCだけでなくBtoB領域にも、アパレルの撮影やオフィシャルサイト運営受託などのECソリューションを展開している。
社名からも連想されるように、当初は女性ファッション誌と提携し、誌面掲載の商品を購入できる場としてオープンした。しかし法人化、また上場と会社として成長する中で「女性のアパレル商品の買い方が変わってきた」と井上氏は話す。それに合わせて、サイト自体をファッション誌と捉え、「自分のためのセレクトショップ」とのコンセプトで方向転換を図った。
「ファッションの好みは一人ひとり違います。2001年頃からOne to Oneのマーケティングができないかと考えて、米国企業などのキャンペーンマネジメントツールを探していましたが、コストの面などから導入に至らず、結局すべてマニュアルで運用してきました」(井上氏)
2013年、同社はNTTドコモと資本提携し、ドコモの会員向けに新たなECサイト「d fashion」を開設した。6,000万人のドコモユーザーがドコモのIDですぐに使える利便性が、同社全体の事業を後押しし、12年比で全売上は18%向上した。
「これには、クロスチャネル・マーケティングを自動で行える『Oracle Responsys』(以下、レスポンシス)を導入したことも大きかったと思います」と井上氏。なぜ導入したのか、その理由については「『MAGASEEK』のリピーターが増えないことが課題だった」と語る。
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導入して3か月後に施策を開始、メルマガからの流入数は2倍・売上は3倍に
事業開始からずっと「MAGASEEK」は右肩上がりで伸長していたが、内訳をみると新規は好調でも既存顧客の増加率が鈍くなってきていたという。リピーターを増やすには、せっかく一度買い物をしてくれた人の好みを捉えて、継続的にアプローチしていくことが欠かせない。
そうしたOne to Oneマーケティングには、メールマーケティングが有効だ。実際に同社でも、2010年頃まではメルマガが売上に大きく貢献していた。しかしそれ以降は、アドレス変更をフォローしきれない、接触する情報量の増大などの理由から、効果が急激に薄れていた。社内では「メルマガ以外に力を入れるべきでは」との議論もあったが、井上氏は「もう一度メールの施策をてこ入れしたい」と考えたという。
「『自分のためのセレクトショップ』のコンセプト通り、トップページではレコメンドシステムを導入し、会員ならその人の趣味趣向に合わせたコンテンツを表示させています。加えて、メールで改めて一人ひとりに向けたアプローチをしていきたい。そこで、それが可能なシステムとしてレスポンシスを導入しました。コスト面、すでに使っているシステムとのつなぎ込みも問題なく、何より導入から3か月ほどで施策を開始できるというスピードが決め手になり、比較検討したシステムもありましたが割とすぐに決定しました」(井上氏)
昨年6月に導入し、9月には施策を開始。メールからのサイト流入数が、9月に対して10月は早くも2倍に跳ね上がり、売上は12月に3倍を喫した。
メルマガ会員の再購入率1.5倍、売上を引き上げる要因に
具体的にはレスポンシスを使って、同社はシナリオメールを実施。メルマガなどからのサイト来訪、商品検索、購入検討、カートに入れて最終的に購買するまでの状況を把握し、例えばカートに商品を入れたが買わなかった“カート放棄”ユーザーに、その商品が残り1点になったらお知らせするなどのアプローチが可能になった。
「これまで手が回っていなかった、メールによる購入後のリレーション構築もできるようになりました。機動性があるので、内部でPDCAを回すのも非常にスムーズです」と井上氏は手応えを話す。
きめ細やかなコミュニケーションが実現したことで、課題だったリピーター増加にも目に見える効果が表れた。メルマガ会員の再購入率は2012年に比べて13年には49%増、新規顧客を含めても115%の伸長となった。
「導入時の目標は、メルマガ経由の売上を全体の10%に戻すことでした。これは優に射程距離圏内で、現状の売上高112億円のうち10億円以上がメルマガ経由。今となっては目標が低かったくらいです」(井上氏)
現在、同社はBtoB領域でも存在感が増しており、商業施設や百貨店などからの協業の話が増えているという。井上氏は「リアル店舗や、あるいは新たな形で雑誌となど、異業種とデータベースを一元化したビジネスの可能性を感じています。これからもオラクル製品を使って、当社の資産をさらに発展させていきたいと考えています」と力説。続くルネサス エレクトロニクスの導入事例への期待を高めた。
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ルネサス:「Oracle Eloqua」でリードを育てる
マガシークの事例を受けて、BtoB領域のオラクル製品導入事例を紹介したのは、半導体メーカーのルネサス エレクトロニクス。eビジネス推進部部長の関口昭如氏は、「こうしたマーケティング・ツールを議論する場がこれまではあまりなかったが、いよいよ日本にもそういう時代が来たかと嬉しく思っている」と切り出す。
一般的にBtoBの製品は購買サイクルが長く、購買決定部門と実際に使う部門が異なるなどの特徴がある。加えて近年、まずはオンラインで調べて検討するというステップが当たり前になっており、実に60%ものBtoBカスタマーがサプライヤーの営業担当者に会う前にオンラインだけで製品選択の見通しを立てている(出典:“The End of Solution Sales”Harvard Business Review July-August 2012)という。
また、BtoC領域で一般的になっている、メーカーサイトと同時に口コミサイトも参考にする流れが、BtoB領域にも広がっている。「つまり、口コミサイトやソーシャルメディアと自社サイトとの連携も必要なのです」と関口氏は語る。
そうした状況下、オンラインでのコミュニケーションがますます重要になっていることは言うまでもない。「私は自社サイトの運営にも携わっていますが、情報を並べておき・早く情報を見つけ易くするための典型的な“図書館型サイト”だけではなく、顧客にとって役に立つ情報を厳選して届けるような営業&マーケティングとしての役割や、顧客とのコラボレーションを促進する役割も、今日のWEBサイトには求められています。オンラインでのリードマネジメントを推進する『Oracle Eloqua』(以下、エロクア)は、まさにそのための中核となるツールとして導入しました」
最も重要なのはマーケティングとセールスの連携
グローバルに事業を展開する同社は現在、日本に加えて米国の販売会社でもエロクアを導入。7か国語でサイトを展開する中、それぞれの地域戦略を踏まえて対応できる点も、エロクアの導入理由のひとつだという。
「エロクアの機能はとても幅広いのですが、特に当社で役立っているのは、まずターゲティング。最適な顧客へ最適な情報を届けられます。2つ目が、スコアリング。プロフィールとエンゲージメントの両軸でリードを的確に評価できます。3つ目が、キャンペーン設計です。以前はアナログで手掛けて苦労していましたが、相当な部分を自動化することができました。メール配信やランディングページの作成などもエロクア上で簡単にできます」
マーケティングとセールスの連携が最も重要だと、関口氏は強調する。有効なリード情報を営業部門に渡し、担当者の負担を軽減し業務効率をあげていくことが、オンラインマーケティングに期待されている。
「ただ、そこに“ゴールデンルール”はありません。関係者と密に情報を連携しながら、PDCAを回していくことこそ重要だと考えています。エロクアは導入して1年ほど経ちますが、非常に速くPDCAを回せますし、プロジェクトの迅速性、柔軟性に力点を置けるので、情報システム部との関係が変化したことも手応えのある成果です」と、関口氏は実感を語った。
今回紹介されたサービスをはじめ、必要なシステムを組み合わせることで、相乗効果を高めてマーケティング推進力を最大限に引き出す「Oracle Marketing Cloud」。最後に日本オラクルの多田氏は、今回のローンチに賛同する22社におよぶパートナー企業からのメッセージを紹介。今回の日本市場参入によって、企業のオンラインマーケティングが大きく飛躍することを予感させた。
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