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注目DSP事業社のキーパーソンと語る!(第3弾)トレーダー目線で切る、プログマティック市場の課題

2014/10/02 11:00

 アドテクの中でも注目されている分野が、RTB(Real Time Bidding:自動入札)に代表されるプログラマティックバイイング/セリングの領域だ。このプログラマティック領域は、今後どのように成長していくのか。課題は何か。トレーディングデスク専門のエスワンオーインタラクティブ 高橋伴幸氏が、オムニバスとコスモロジーの凄腕トレーダーと現場視点で検証する。

プログラマティック市場の課題を、トレーダー目線で切る!

第3弾となる今回の対談は、オムニバスとコスモロジーの2社を迎えました◎

高橋:ここ数年、アドテクへの関心が集まるようになってきました。中でも注目されているのが「プログラマティック」と呼ばれる領域です。米インタラクティブ広告業界団体のIAB(The Interactive Advertising Bureau)では、主要な4種類のプログラマティックな取引手法について定義していますが、私は「プラットフォームを介してオーディエンスデータを活用した、広告の売買自動取引」と解釈しています。

 当社はプログラマティックの一種であるRTB(Real-Time Bidding)を中心に企業の広告配信・最適化をサポートしています。実際に案件は増えていますが、実態としてはRTBでレムナント(余剰在庫)を捌くことが中心で、オーディエンスデータを活用して運用していくというフェーズになかなか到達しきれていない感覚があります。

 本日はこうした感じで、デジタル広告におけるプログラマティック化の現状と課題、市場活性化のための提案、人材育成などについて現場視点で情報交換したいと思っています。では自己紹介を交え、それぞれ感じている現状の課題についてお聞かせ願えますか?

株式会社エスワンオーインタラクティブ トレーディングデスク局
アナリティクス&セールスチーム リーダー 高橋伴幸氏

中條:コスモロジーの中條です。弊社はスタッフ全員がアドネットワーク事業経験者でして、アドテク全般のノウハウを広告主様に提供しているほか、ディスプレイアドの提案・運用を行っております。いま高橋さんがおっしゃったように、RTB分野でのプログラマティックな市場が拡大しているのは実感しており、広告主様もいろいろ勉強なさってますよね。ですので最近は提案内容が少し変化してきているんです。

高橋:というと?

中條:以前はアドネットワーク内にあるメディアのどの広告枠に出るかという買い付けをしていたのですが、最近は「どのメディアに、どのようなオーディエンスデータがあるか」という成分の部分から提案するようになってきました。広告主様も「ターゲット層にリーチしたい」というニーズがあるので、それに応えるためです。

 ただプログラマティック化が進んでいるとはいえ、いざ本当にそのターゲット層にリーチできているのか、どんなタイミングやシチュエーションで広告が露出されているのか、 はっきりとは分かりません。これは効果を出す上で大きな問題だと思っています。またDSPを介する場合、プラットフォームによっては露出できない広告もあり、この対応も課題です。

矢野:オムニバスの矢野です。弊社はディスプレイ広告を中心にリスティング広告を含めた運用型広告全般のコンサルティングやデジタルデータを中心とした分析サポートを行っております。ですので、トレーディング事業「のみ」というわけではなく、サービスラインナップの1つにトレーディング事業があるといった感じです。

 近年はオンライン動画広告領域における各種サービスも提供しています。なので、トレーディングといっても若干業務の幅は広いですね。最近は動画広告が注目されていますが、課題として「広告枠の少なさ」が挙げられます。広告ストリームを発生させるために必要なオンライン上で閲覧することができる「動画コンテンツ」が少ないのが現状です。注目度は高まる一方、広告の配信先自体が少ないのです。

プライベート・マーケットプレイスの登場で、プログラマティック市場は拡大する

高橋:プログラマティックという形態は伸びてデータが身近になってきているけれど、その分ブラックボックスなところも多いと感じています。DSPなど最適化ロジックが働く一方でどこに掲載されるか事前に把握することはできない、そんな問題を感じている方も多いと思います。これに対してどのように対応していらっしゃいますか?

矢野:「もっと安定的に露出したい」ということに対し、最近増えているソリューションが、純広(純広告)回帰だと思います。

株式会社コスモロジー トレーディングデスク マネージャー 中條義猛氏

中條:媒体側と広告主側の思惑はなかなか一致しませんしね。媒体側はクリックされづらい枠であっても、表示課金で少しでも高く売りたいと思っていますが、広告主側はできるだけ目的にあった良い枠を取りたいと思っている。

矢野:そういう両者の思惑を解消するため、付加価値の高いプレミアム在庫を広告主と媒体社で取引する“プライベート・マーケットプレイス”が出てきましたよね。僕、最近、プライベート・マーケットプレイスに注目しているんです。この分野では、ようやくRubicon社やPubMatic社が日本で本格稼働し、プライベート・マーケットプレイスという概念が普及してきましたが、枠がまだ少ないんですよ。

 なので媒体側は未だに純広受注か、せいぜいExchangeに枠を出すかの二者択一。一方、広告主側は、広告枠の柔軟に買いたいと思っています。だから媒体社側も二者択一ではなく、広告主のニーズに合う新しい取引ツールを入れていただければ、プログラマティックの幅が広がるかな、と期待しているんですけどね。

中條:最近”アドテク”や”DSP”という言葉の先走感がありますが、その前で対処した方がいいケースがまだまだ多いと思っています。例えばランディングページが貧弱だとか、そもそもSEM(Search Engine Optimization)すらやっていないというケースもあるので、そういう場合はDSPではなくてSEMを提案するようにしています。そこで中・長期的に運用していき、しかるべきタイミングでDSPの活用を提案することもあります。

 ベストプラクティスとならないことを認識していながら実施することは、非常にもったいないですし、徐々に双方のストレスとして蓄積されていきますからね。しかしながら、案件によって期間の制約(至急、なる早で掲載希望など)もあり、前述の準備ができずに掲載を迫られるケースも多々あるというのが、実情だったりもします。

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スマホ広告市場におけるプログラマティック化の課題

高橋:ところで先日サイバーエージェント社が、「アドテクノロジー市場の成長率調査資料」を発表しました。これによると、スマホ向け広告市場の需要が拡大しており、2015年にはPC広告を抜き、2017年にはシェアが67.0%となると予想しているようです。これについてはいかがでしょうか。

サイバーエージェント社の「アドテクノロジー市場の成長率調査資料」より

矢野:今スマホ分野の広告費が多くなっているのは事実ですし、納得できますよ。アクセス解析すると一目瞭然ですが、企業サイトへの流入経路はPCよりスマホの方が多くなっているんです。またスマホメディアは非常にPVが多いため、大量に広告在庫があります。この調子でスマホ広告への出稿が集中すれば、かなり早いうちにPC広告とシェアが逆転するかもしれませんね。

高橋:そうすると、運用側としてはPCとスマホ、両方のコンバージョンを見る必要が出てきますね。

矢野:それも課題のひとつですね。少し前にアトリビューション分析が流行りましたが、スマホ広告の伸びに伴い、PCとスマホをまたいだトラッキングができない、つまりクロスデバイス間でコンバージョンを測定できないという問題がますます大きくなっています。

高橋:クロスデバイスへの対応は具体的に何かされていますか。

矢野:技術上は可能だと思いますが、DSPの方が追いついていないので、待機状態といったところでしょうか。

中條:弊社も基本的にはDSP・SSPの対応を待ちわびている状況です。たとえば外出時にスマホで広告接触したユーザーが、帰宅後にPCで検索をしコンバージョンに至っているケースも、商材によっては少なかれあると思っておりますので。

マーケティング・トレーダーに求められる資質

高橋:コンバージョンという観点をきっかけに、少し話は飛びますが、トレーダーの運用業務について考えてみたいと思います。運用業務といえば、一般的にイメージされるのはCPA(Cost Per Acquisition)を中心とする「数字のモニタリング」でしょうか。これを基に仮説を導き出し、検証を重ねることで、顧客のペルソナやカスタマージャーニーを描いた運用に近づけていく……というのが理想ですが、実際はなかなか難しい。この理由は何だとお考えですか?

中條:各人が知識を抱え込んで、属人化していく傾向にありますよね。本来ならそういう知識を拡散しないといけないのに、日々の業務に埋もれてなかなか知識の共有や育成ができていないと感じています。

株式会社オムニバス プランニング&トレーディング Div. マネージャー 矢野哲快氏

矢野:トレーダー業務を考えると、アドテクを活用して効果を出すというフェーズまでやりにくいのが現実だと思います。広告出稿までの準備にどうしても時間を取られてしまうんですよ。例えばサードパーティーのアドサーバーを使って入稿したりすると、なぜかバルクアップできないというエラーが出たので、結局手作業で入稿するという経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

 プログラマティックといいながら、動かすためには結構な手間が掛かるので、数字をしっかり捉える時間がなくなってしまう。あと、管理画面でなまじさまざまなレポートが見られるので、そこだけで完結してしまうのもネックですね。

高橋:管理画面ではいろいろなデータが見られますが、矢野さんがおっしゃっているのは、単に数字を全部見るのではなく、「どこを見るか」というひらめきの部分でしょうか?

矢野:そうです。効果を出すために逆算して考える、悪くなった原因を分析するといったことについて、運用型広告のトレーダーは全般的に弱い傾向にあると感じます。逆にリスティング広告の専門家は、そこに関してはプロなんです。トレーダーはアドテクのTechが中心だけど、リスティングの方は数字に強い。一種の補完関係みたいなものなのかもしれませんけど。

高橋:その違いは、何が原因なのでしょうか。

矢野:リスティングは情報量が多いんです。キーワード1つ取っても、大型アカウントになると平気で数百万件くらいありますから。なので数字を一つひとつ見ていくとキリがないから、データ抽出の引き出しの多さや、不要なデータをバサッと切る感性があるんです。一方、ディスプレイ系の運用型広告の場合、複数のプラットフォームを併用していると、同じユーザを重複してターゲティングしている場合も多く、どこかのプラットフォームにコンバージョンが吸い取られているケースもあるのですが、そういうものは単に数字を見ていてもなかなか出てこない。

 また、効率は良いのだけれど、全然露出を増やせなかったリターゲティング広告のボリュームが増えたとします。たまたまSNSでバズったおかげて、サイトの流入が増えただけなんですが。でも、そういうケースは大半がライトユーザーの流入なので、CVRが下がることも。設定上は何も変えてないのに、なぜかボリュームが増えて、何故か効果が悪くなるという、自分の知らない要因で因果関係が補足しにくい状況が起こります。ディスプレイ系の場合、こういう外部要因に左右されやすい環境もあるので、一概に数字に強い弱いだけでは語れない部分もあるので仕方ないんですけどね。

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「Excelのハードル」をいかに乗り越えるか

高橋:運用業務の中で効果分析・仮説検証の重要性と課題について話をしてきましたが、矢野さんがおっしゃられたように外部要因を見て運用するというのは非常に難しいことだと思うんです。そこに対してはどのようにアプローチなさっているんですか?

矢野:僕はアクセス解析を絶対にやらせるんです。アクセス解析は、例えるなら血液検査みたいなもので、血の流れと一緒でユーザーがどのように流れているのかを把握できるもの。これを知っているだけで、効果予測がしやすくなるし、次の施策が格段に練りやすくなります。

中條:弊社の場合、クライアントがサードパーティーの計測ツールを利用しているのなら、できるだけそのアカウントを共有していただくようにしています。たとえばディスプレイ配信後、サーチからの流入にどのような変化を及ぼしたのかを確認・共有するといった感じですね。

矢野:そういえば、業界の交流会で盛り上がる話題のひとつに「Excelのハードル」というネタがありますよね。トレーダーが数字を見る場合、中心になるのはやはりExcelのスキルだと思うんですが、ここを育てるのが難しい。皆さんはこの課題にどのように対処されていますか?

高橋:Excelに強い人を採用することもありますし、基本的な部分はマニュアルを作って教育していますね。

矢野:僕らもショートカット集のようなマニュアルを作ったことがあるんですが、結局それをモノにできるかどうかはその人にかかっているんですよね。ちょっとした操作なら、マニュアルを作ってそれを習得すれば速くなるはずなのに、なかなかできない。聞いてみると、「Excelは苦手・嫌」という心理的バイアスがかかっていて、数字そのものが嫌いなんじゃなくて「Excelができないから数字が嫌い」という負のスパイラルに陥っているんです。しかし逆に、ここを乗り越えると、データの捌き方や数字の感性が磨かれて、面白くなると思うんですけど。

中條:実は僕もどちらかというとExcelは苦手な方なので、極力まわりの得意なスタッフに聞くようにしてます。ちかくにすぐ訪ねられる環境があるのはとてもハッピーですし、大きなポイントだと思います。Excel自体「作業効率化を図るツールであるはずなのに、こんなに時間がかかるはずが無い」と疑う心も重要なのかなと。

トレーダーの仕事に答えはない。常に仮説を見つけて、検証を繰り返していく

高橋:結局、Excelや数字が苦手でも、「やるしかない」という意識を持てるかどうかが左右するのかもしれませんね(笑)。

矢野:そこを考えると、この業界に残って活躍しているトレーダーの方はみんな、気合いと根性で乗り切ってきた、かなりタフな方ばかりということですよね……。うーん、ただでさえ慢性的な人材不足なので、タフさやExcelとの親和性がトレーダーへの条件になると、人材の間口が狭くなってしまうんじゃないかな。

高橋:私は採用面接の時に、「理科の実験みたいな仕事だけど、実験は好きでしたか?」と聞くようにしているんです。トレーダー業務には、回答が用意されているわけではありません。常に仮説を見つけて、ひたすら検証という名の実験を回していく業務です。だから「理科の実験が好き」とか、何かを追求していこうという姿勢があるなら、この仕事は結構向いていると思うんですよ。

矢野:確かに、どういうマインドセットにあるかは重要ですね。

高橋:では最後に、運用型広告の市場、そしてトレーダーという仕事をより盛り上げるために必要なこととは何か、お考えを聞かせて下さい。

矢野:総括になりますが、やはりプロダクトやソリューションの幅を広げていくことが重要だと思っています。例えばアクセス解析ができるというのもそうですが、「こういうニーズであれば、リスティングをやってみましょう」とか「ディスプレイもできます」「どんなDSPでも3PASも使えます」といったように、クライアントの課題に対し、いかに多くの選択肢やソリューションを提示できるかが鍵だと思います。

中條:RTBを含む、プログラマティックバイイングの需要は確かにのびてはいますが、個人的にはこの分野に巨大なバジェットがあるとは思ってはおりません。ですのでそこでパイを奪い合うのではなく、競合関係にある広告代理店やトレーディング事業社がヨコ展開で知識を共有しつつ、全体で市場の成長・発展に向け、前進していけたらいいなと思っております。

高橋:私もお二人の意見と一部共通するのですが、個人的にはDMP(Data Management Platform)の活用を進めていくことも大きな鍵になると考えています。サイト内でどういう行動をしているユーザーがCVに繋がりやすいのか、それと相関の高い外部データ(要因)は何かを検証し続けていく。そのためのDMPだと思っており、リターゲティングからの脱却や当社が目指す「事業支援型トレーディングデスク」にも近づくのではないかと考えています。

 購買データもCRMも、プライベートもパブリックも、すべてにおいてDMPを有効活用できる人材が増えてくればいいなと思っています。こうした現場視点での課題については、いくらでも話は尽きないので、また逐次情報交換しましょう。本日はありがとうございました!

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