プログラマティック市場の課題を、トレーダー目線で切る!
高橋:ここ数年、アドテクへの関心が集まるようになってきました。中でも注目されているのが「プログラマティック」と呼ばれる領域です。米インタラクティブ広告業界団体のIAB(The Interactive Advertising Bureau)では、主要な4種類のプログラマティックな取引手法について定義していますが、私は「プラットフォームを介してオーディエンスデータを活用した、広告の売買自動取引」と解釈しています。
当社はプログラマティックの一種であるRTB(Real-Time Bidding)を中心に企業の広告配信・最適化をサポートしています。実際に案件は増えていますが、実態としてはRTBでレムナント(余剰在庫)を捌くことが中心で、オーディエンスデータを活用して運用していくというフェーズになかなか到達しきれていない感覚があります。
本日はこうした感じで、デジタル広告におけるプログラマティック化の現状と課題、市場活性化のための提案、人材育成などについて現場視点で情報交換したいと思っています。では自己紹介を交え、それぞれ感じている現状の課題についてお聞かせ願えますか?
中條:コスモロジーの中條です。弊社はスタッフ全員がアドネットワーク事業経験者でして、アドテク全般のノウハウを広告主様に提供しているほか、ディスプレイアドの提案・運用を行っております。いま高橋さんがおっしゃったように、RTB分野でのプログラマティックな市場が拡大しているのは実感しており、広告主様もいろいろ勉強なさってますよね。ですので最近は提案内容が少し変化してきているんです。
高橋:というと?
中條:以前はアドネットワーク内にあるメディアのどの広告枠に出るかという買い付けをしていたのですが、最近は「どのメディアに、どのようなオーディエンスデータがあるか」という成分の部分から提案するようになってきました。広告主様も「ターゲット層にリーチしたい」というニーズがあるので、それに応えるためです。
ただプログラマティック化が進んでいるとはいえ、いざ本当にそのターゲット層にリーチできているのか、どんなタイミングやシチュエーションで広告が露出されているのか、 はっきりとは分かりません。これは効果を出す上で大きな問題だと思っています。またDSPを介する場合、プラットフォームによっては露出できない広告もあり、この対応も課題です。
矢野:オムニバスの矢野です。弊社はディスプレイ広告を中心にリスティング広告を含めた運用型広告全般のコンサルティングやデジタルデータを中心とした分析サポートを行っております。ですので、トレーディング事業「のみ」というわけではなく、サービスラインナップの1つにトレーディング事業があるといった感じです。
近年はオンライン動画広告領域における各種サービスも提供しています。なので、トレーディングといっても若干業務の幅は広いですね。最近は動画広告が注目されていますが、課題として「広告枠の少なさ」が挙げられます。広告ストリームを発生させるために必要なオンライン上で閲覧することができる「動画コンテンツ」が少ないのが現状です。注目度は高まる一方、広告の配信先自体が少ないのです。
プライベート・マーケットプレイスの登場で、プログラマティック市場は拡大する
高橋:プログラマティックという形態は伸びてデータが身近になってきているけれど、その分ブラックボックスなところも多いと感じています。DSPなど最適化ロジックが働く一方でどこに掲載されるか事前に把握することはできない、そんな問題を感じている方も多いと思います。これに対してどのように対応していらっしゃいますか?
矢野:「もっと安定的に露出したい」ということに対し、最近増えているソリューションが、純広(純広告)回帰だと思います。
中條:媒体側と広告主側の思惑はなかなか一致しませんしね。媒体側はクリックされづらい枠であっても、表示課金で少しでも高く売りたいと思っていますが、広告主側はできるだけ目的にあった良い枠を取りたいと思っている。
矢野:そういう両者の思惑を解消するため、付加価値の高いプレミアム在庫を広告主と媒体社で取引する“プライベート・マーケットプレイス”が出てきましたよね。僕、最近、プライベート・マーケットプレイスに注目しているんです。この分野では、ようやくRubicon社やPubMatic社が日本で本格稼働し、プライベート・マーケットプレイスという概念が普及してきましたが、枠がまだ少ないんですよ。
なので媒体側は未だに純広受注か、せいぜいExchangeに枠を出すかの二者択一。一方、広告主側は、広告枠の柔軟に買いたいと思っています。だから媒体社側も二者択一ではなく、広告主のニーズに合う新しい取引ツールを入れていただければ、プログラマティックの幅が広がるかな、と期待しているんですけどね。
中條:最近”アドテク”や”DSP”という言葉の先走感がありますが、その前で対処した方がいいケースがまだまだ多いと思っています。例えばランディングページが貧弱だとか、そもそもSEM(Search Engine Optimization)すらやっていないというケースもあるので、そういう場合はDSPではなくてSEMを提案するようにしています。そこで中・長期的に運用していき、しかるべきタイミングでDSPの活用を提案することもあります。
ベストプラクティスとならないことを認識していながら実施することは、非常にもったいないですし、徐々に双方のストレスとして蓄積されていきますからね。しかしながら、案件によって期間の制約(至急、なる早で掲載希望など)もあり、前述の準備ができずに掲載を迫られるケースも多々あるというのが、実情だったりもします。
プログラマティック・バイイングで成果を上げる!日々の“運用”の信頼できるパートナー
トレーディングデスク事業の専門企業 エスワンオーインタラクティブへのお問い合わせはこちら