世界と戦うのは大前提に

友澤:他にはどのような点が、日本のレベルが高いと思われますか?
武富:例えば、ミドル層がこれだけちゃんと成果を上げている国はないと思います。海外だと、天才経営者が率いているケースが多いですが、日本は現場が強い。そもそもアジアは農耕型民族なのでこういうスタイルがしっくりくるんでしょうね。
今でいうオムニチャネルにしても、日本のクオリティは最高です。例えばSuicaで電車に乗れて、買い物ができて、すぐ明細が見られてスマートフォンでも使える。これまで広告とソリューションは分けて議論されてきましたが、去年からソリューション系がアドテック東京に加わって、今は混じっています。その組み合わせの質としては、世界でこれ以上ないんです。
友澤:そういう日本の存在感は、どのくらい海外にも浸透しているのでしょうか?
武富:例えばこの秋のアドテックニューヨークでは、向こうの要望で「ジャパンパビリオン」のコーナーができ、日本企業が8社出展します。日本から学ぼうという意識が出てきたと感じています。
英語を話せる人の割合や、女性の割合などはまだ世界に遅れを取っていますし、アジア諸国もすごく伸びていますから、そこは今のうちに頑張らないといけない。ただ、サッカーしかり、料理しかり、世界と戦うことは大前提ですね。目標は、マーケティングコミュニケーションの質において日本が世界の中でトップになることです。
来年の東京は、春と12月の2回開催へ
友澤:一方で、今年は7月に九州で実施、11月には大阪が予定され、アドテックは地方にも拡大しています。この意図は何でしょうか?
武富:これはどちらかというと、僕の個人的な使命感ですね。東京の一極集中は問題だと思っていて、実際に情報格差もかなりある。今後も、行政や地場の企業がやりたいと言ってくれるところへ出向きたいと思います。大阪ではパナソニックや宝酒造をはじめ、ボードメンバーの面々が今まさに熱い状況です。
友澤:では、来年のアドテック東京は、どうなりますか?
武富:大きな流れとしては、グローバル目線でビジネスするのを前提に、マーケティング最適化と、新しいビジネスのクリエーションという2つの方向性があります。形態としては、来年は2回に分けます。1年を総括する意味で“本大会”は12月に、一方で若手にフォーカスしたい意図で春にカンファレンス中心の「ad:tech spring」を開催します。日本の場合は大企業の中で新たな価値が生まれることも往々にしてあるので、大手かスタートアップかという形にこだわらず、現状のブレイクスルーを狙う新しいビジネス、まさにイノベーションに注目していきます。
その上で、若い人にひとつ伝えたいのは、ビジネスのフレームワークを勉強しようということです。ビジネスには拡大するためのノウハウというか定石がある程度あります。それを知ると、もっと簡単に時流に乗れますし、知らないと伸びが止まるので、ぜひ書籍などで定石を学んで使う訓練を積んでいってもらいたいと思っています。
