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第99号(2024年3月号)
特集「人と組織を強くするマーケターのリスキリング」

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Yahoo!広告活用の今を追う(AD)

日々情勢を反映して広告を審査 安全・安心なネットの世界をつくる

 「マーケティングイノベーション室」の設立、広告ソリューションのリニューアルと、近年まさに“爆速”を感じさせるドラスティックな変革を続けているYahoo! JAPANによる本連載。今回はなかなか表舞台には出てこない広告審査に注目。Yahoo! JAPANではシステムと人の目の両方で、ビジュアルはもちろん、映像や音など、多種多様な広告商材の審査に数百人体制で対応している。

ヤフー株式会社 マーケティングソリューションカンパニー オペレーション本部 ポリシー室 室長 鈴木麻美氏同カンパニー オペレーション本部 審査部 部長 竹内朋子氏
ヤフー株式会社 マーケティングソリューションカンパニー 
オペレーション本部 ポリシー室 室長 鈴木麻美氏(写真左)
同カンパニー オペレーション本部 審査部 部長 竹内朋子氏(写真右)

全国複数の拠点にて、24時間体制で広告審査

MarkeZine編集部(以下MZ):この連載では、広告主企業とのディスカッションや新サービスについてなど、基本的に“攻め”のマーケティングを掘り下げてきました。今回の「広告審査」のように、“守り”の部分について伺うのは初めてです。

鈴木:「何も起こらないこと」が大事なので、普段あまり注目されることはないですね(笑)。

MZ:確かにそうですね。でも、安心・安全な環境作りには欠かせない、縁の下の力持ちのような機能なわけですよね。まずは、組織体制から教えていただけますか?

鈴木:おおまかには、私のいるポリシー室と、竹内が管轄する審査部が広告の審査を担っています。いろいろな審査基準を決めるのはポリシー室で、それに基づいた日々の審査は審査部で、という分担です。両方で、マーケティングソリューションカンパニーが管轄するすべてのプロダクトの品質を守っています。もちろん、社内の法務や制作、システム部門とも連携しています。

MZ:規模としては、どのくらいなのでしょうか?

竹内:拠点は全国数カ所あり、運用スタッフは数百名在籍しています。システムと人の目の両方で、できる限りのチェックをしていますが、何事かあったときにすぐに対応できるように24時間体制で運営しています。新しい手法が出てきたら、すぐにポリシー室に共有して、ガイドラインの即日変更も含め、その都度対応しています。

ネットユーザーを守るには、人の目が欠かせない

MZ:けっこう規模が大きいのですね。そして、スピードも速い。

竹内:検索連動型広告のスポンサードサーチだと、毎日の入稿が膨大になる場合もあります。適切に審査ができるように、常日頃からシステムを強化しつつ、その審査で判断できなかったものについては、分厚いルールブックを引きながら人の目で確認しています。

鈴木:どうしても、人の目も欠かせないのですよね。私たちの仕事は「ネットユーザーを守ること」をいちばんの目的としているので、フィッシングやマルウェアなどに誘導される悪意のある広告を排除するのはもちろん、虚偽や誇張を避けることや、不快感を与えないというのも大事です。そうすると、やはり人の目が重要になってきます。

MZ:不快感、というと?

竹内:例えば画像広告だと肌の露出や目などの局部アップなど、不快と感じる尺度は個人の感じ方によりますので、線引きは難しいですね。下着メーカーやコンタクトレンズメーカーなど商材によって必然性があるのは理解していますが、お子様から大人の方まで幅広い年代や性別を問わず、また日中や真夜中などの時間帯で見てもユーザーの方に不快感がないように心がけています。ユーザー目線での基準が必要になりますので、ソーシャルメディアの意見なども参考にしています。

MZ:なるほど。そのあたりは、今現在の世の中の感覚を捉えるのが重要になってきますね。

鈴木:そうですね。そういう場合は、営業やサポートを通して広告主様へきちんとした対応をしています。

広告主様のブランド毀損を徹底的に防ぐ

MZ:具体的に、どのような審査があるのですか?

竹内:3つありまして、1つ目は、広告そのものの審査。2つ目は、掲載面の審査。そして、3つ目が、広告主の審査です。これらを当社のガイドラインに基づいてチェックしています。

鈴木:3つ目の広告主の審査は、まさに今強化をしているところです。広告会社経由の入稿だと、広告会社のチェックが働いているので問題ないのですが、オンラインでも直接入稿ができるので、その場合には注意が必要です。不適切なものは広告の審査の段階で対応していますが、加えてネットユーザーの保護のために、広告主審査には力を入れています。

MZ:広告主というと、最近ではいわゆるブランド広告主様もネット広告を利用するようになっていますが、一方でSSPによる配信も広がって、どこに広告が出るのか把握できないというのが課題になっています。

鈴木:ブランドの毀損を防ぐことは、確かにここ数年の注力項目です。先日のアドテックで発表しましたように、インテグラル社(Integral Ad Science)のアドベリフィケーションサービスを利用して、ブランドを毀損するような面へ広告が掲載されないようさらなるシステム強化を行っていく予定です。

 特にアドテクが発展して、広告配信先も増加していますので、その利点を最大限に活かしながらも、避けたい掲載面はしっかり対応していきたいと考えています。

 私たちはヤフーとして「ブランドセーフティー」に対する取り組みを強化し、広告主様のブランド毀損を防ぎ、安心して弊社の広告をご利用いただけるよう努力していきたいと思っています。

警視庁の情報に基づき有害サイトを把握

MZ:今後プレミアムDSPが広がっていくと、なおさらそれが課題になりますね。

鈴木:そうなんです。今までも掲載面の審査は厳しくしてきたので、著しくブランドを毀損するサイトに広告が掲載されるということは避けられていますが、今後はさらに広告主視点で対応していきたいと考えています。

 その一環として今、JIAA(インターネット広告推進協議会)と連携して、有害サイトの把握に取り組む予定です。警視庁から、違法・有害サイトやオンライン上の有害情報が提供されるようになり、JIAA会員社は連携する体制になる見込みです。警視庁からの有害情報を参照して、通報があったサイトなどはすぐに排除できる仕組みをつくるつもりです。

MZ:実際の運用部門では、広告配信ガイドラインをどう扱っていますか?

竹内:新しいガイドラインが過不足なく適応しているかをテストするのも、審査部の役割なので、掲載面の審査同様に運用を進めています。また、先のインテグラル社のシステムがうまく機能しているかどうかなども、審査部でチェックを行う予定です。もちろん、日々新しい言葉など生まれてきますし、システム改善も必要です。このシステムは日本語の学習も含め、人を介してフィードバックすることで性能がブラッシュアップされていくので、これを賢くしていくのも審査部のミッションです。

ビデオ広告は映像と音声の両方をチェック

MZ:広告商材としては、ヤフーでは新たにビデオ広告に力を入れていますが、その審査もするのですよね。

鈴木:はい。数年前まではテキスト広告や画像広告の審査が中心でしたが、ビデオ広告では映像や音声の審査が加わりました。

竹内:人を増やすのも限界がありますから、内部の開発と外部連携とでシステムの強化も進めているわけですが、ビデオ広告など、映像系の広告の登場は、これまでのテキストや画像広告の審査とは異なり、映像や音声を再生しての審査になります。そのため、最近の商材の中でもやはりインパクトがありました。

MZ:かといって、1本ずつ視聴していたら膨大な時間がかかると思いますが……。

竹内:ナレーションや映像に不適切な表現が含まれている場合があるので、何度も再生し直したり。人手での審査は神経を使います。

MZ:既存メディアでいうと、新聞や雑誌、テレビ、ラジオの広告審査を全部行っているような感じですね。

竹内:本当にそうですね。多種多様な状況です。それに加えて、掲載面審査と広告主の審査があって。次のステップとしては、映像の審査のシステム化を進めて、より効率的で確実な方法を確立していきたいと思っています。

「何が適切か」基準づくりに注力

MZ:そのほかに最近の変化だと、どのようなものがありますか?

鈴木:悪質な広告の手法が多様化してきましたね。そのため、常に情報収集を行い、すぐに人の目とシステムで対応できるよう連携を強化しています。やはり、ヤフーとしてユーザーの皆様の「安心・安全」は守りたいと考えています。

MZ:ネットの状況をいち早く捉えて、現場に落とし込んでいくわけですね。では、現在の課題と今後の展望をお教えください。

竹内: ガイドラインを習得するのは簡単ではないので、時間をかけてトレーニングをして多種多様なプロダクトに柔軟に対応できるようにスタッフの育成には力を入れています。また、システムとの連携ももっと強化して、ユーザーの皆様に安心してヤフーをご利用していただけるよう努力していきたいと思っています。

鈴木:インターネットを使う人の層が広がり、それに呼応して広告主様の要望も変わっていきますから、ソーシャルの声を含めてさまざまな方の意見も参照しながら「何が適切なのか」の基準作りに取り組んでいきます。ヤフーとして、安全・安心な環境作りに貢献したいですね。

【参考】Yahoo! JAPANの「広告サービス品質向上の取り組み」

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2014/10/30 11:00 https://markezine.jp/article/detail/20986