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事例で探る!デジタル時代の「共創マーケティング」

「インサイト」はどうやって見つけるの? 生活者を理解する共創コミュニティの役割を考える

 注目が集まりつつある「共創マーケティング」とは何か、事例を交えて紹介する本連載。5回目は共創マーケティングの重要な目的「生活者を知る・理解する」がテーマ。生活者のインサイトを得るために有効な共創コミュニティについて、キリンビール、富士通、伊藤ハムの事例と共に紹介します。

生活者の理解は調査部だけの仕事ではない

 これまでの連載では、商品化の意思決定を共創する西友の「みんなのお墨付き」、商品を共創する伊藤ハムの「ハム係長の商品開発部」を紹介しました。どちらの施策も生活者が欲しいと思うものを知る、という意味では同じ軸を持っています。今回は、共創マーケティングの重要な目的である「生活者を知る・理解する」をテーマに、先進企業がどのように新しいインサイトを発見しているのかを紹介します。

 マーケティングを「生活者に価値を提供する活動」と考えると、マーケティング活動は本来、「生活者に価値が届いたか」という小さな疑問の積み重ねです。商品開発にはじまり、広告、ウェブサイト、ソーシャルメディアへの投稿などマーケティング担当者が作ったもの全てにおいて、どのように生活者に届いたのか。言い換えると、生活者が「自社の提供している商品・サービス・コミュニケーションから何を感じ、何を受け取ってもらったかを理解することが、全てのマーケティング活動のベースです。

 生活者の理解はマーケティングの戦略部分に関わります。誤った理解に基づいて、商品、コミュニケーションを作ると、全ての施策が効果を生みません。しかし、生活者の理解がマーケティングのベースとなるにもかかわらず、これまでは直接的に生活者を知ることは困難でした。

 例えば、あるブランドが好きで購入量も多いコアファンに対して、商品の魅力を聞きました。すると「デザインがかわいい」という返答が返ってきました。それを聞いた、マーケティング担当者は驚きを隠せません。実は、その商品はCMなどの広告で何度も機能や製法について伝えてきました。「当然、コアファンにはそのメッセージが届いているだろう」と担当者は予想したのです。しかし、実際にコアファンが感じている魅力は機能や製法にはなかったのです。もちろん、一部のコアファンの意見だけでメッセージを変えるかどうかは、検討が必要です。しかし、コアファンにさえ届かないメッセージは変える必要があるのではないか。そういった気付きを担当者は得ることができました。

 上記は極端な例ですが、もし「現在のメッセージは生活者に届いていないのではないか」という疑問がすでに企業側にあったならば、リサーチを行い、上記の発見を行うことができるでしょう。しかし、そもそも疑問に気づいていない、もしくは、気づいていてもリサーチ予算をかけて調査すべき課題と認識していない限りリサーチは実施できません。

 これまで、企業が生活者のことを手軽に知ることは困難でした。生活者を知るためには、会場に生活者を集めてグループインタビューをしたり、アンケートの調査票を作って質問を投げかけたりする必要がありました。しかし、デジタルとソーシャルメディアの発展などにより、オンライン上で企業と生活者が対話し、直接的にコミュニケーションをとることが手軽にできるようになりました。調査部だけでなく、あらゆるマーケティング担当が生活者を知ることができるようになったのです。

生活者を理解するために、オンラインでの直接対話を

 生活者とオンライン上で直接対話できるようになったのは、ここ5年~10年ほどの最近の話です。そのため、直接対話を武器として活かす取り組みは始まったばかりだといえます。生活者との直接対話により新しい発見を得るには、オンライン上に共創コミュニティを構築する必要があります。共創コミュニティには次の3つの特徴が必要です。

 1)アンケートや掲示板があり、コミュニティ参加者の意見を集められる
  参加者の意見を集めるには、アンケートのような企業側からの質問に答えてもらうケースがあります。また、掲示板のように参加者間・企業と参加者同士でディスカッションすることで意見を集めたり、対話の中から新しい発見を得るケースもあります。

 2)会員登録があり、継続的にメールなどで連絡を行える
  共創コミュニティでは参加者との人間関係を構築することで、意見を言いやすい環境を作ります。そのためには、継続的にコミュニケーションできる状態が必要です。

 3)コンテンツの出し分けができることで、複数のプロジェクトを並行して実施できる
  質問・対話する内容によって、「誰に聞きたいのか」は異なります。特に、オンライン上でディスカッションする場合、盛り上がりやすいのは100人程度です。Facebookの平均友達数も100~150人と言われますが、お互いの人間関係を維持するには限界があります。コミュニティ参加者は多いほうが様々な意見は聞けますが、お互いを理解したうえでコミュニケーションできる人数に制限があります。そこで、コミュニティの中でコンテンツを出し分け、この質問はこの100人に、この質問はこの100人に、と設定することで盛り上がった状態を維持できます。

 共創コミュニティを作ることで、下図のようにマーケティング施策全体の中で、ふとした疑問の質問や小さなテストマーケティングなど、複数のプロジェクトを並行して実施することができます。そして、気づいていない課題を発見し、生活者と共にマーケティングを行えるようになります。この「ふとした疑問」の中に新しい発見のタネが隠れている場合もあります。「今では当たり前のように前提になっているが、個人的に疑問に思っていること」を、質問を作る上で参考にします。

あらゆるマーケティング・プロセスで「生活者を知るため」に活用できる共創コミュニティ
あらゆるマーケティング・プロセスで「生活者を知るため」に活用できる共創コミュニティ

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この記事の著者

宮本 昌尚(ミヤモトマサナオ)

 株式会社トライバルメディアハウス 共創マーケティング部 部長。アクセンチュアのITコンサルタントを経て現職。ソーシャルメディアの黎明期から、ソーシャルメディアマーケティングの戦略策定や、オウンドメディアのソーシャル化支援、リスク対策、国内外のFacebookページ構築運用支援のプロジェクトマネージャーを勤める。その後、共創マーケティング部を立ち上げ、コミュニティの戦略策定から商品の企画提案を担当。過去に担当したクライアントはキリンビール、KFC、P&am...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2015/03/12 16:30 https://markezine.jp/article/detail/21994

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