マーケティングオートメーション領域でも価値の提供を進めるオラクル。ユーザーのニーズを広く叶えるためにパートナー企業との連携を推進し、エコシステムの構築を目指している。日本における「Oracle Marketing Cloud」のポストセールス責任者を務める大山忍氏が、パートナー企業である電通を訪ね、企業が今必要とする統合マーケティング支援について話し合った。
ネット広告1兆円超、マーケティング支援も包括的な視点へ
大山:2月に電通から発表された「2014年 日本の広告費」では、ネット広告の市場規模が初めて1兆円を超えたことがニュースになりました。生活者がデジタルを含めさまざまなチャネルにシームレスに接触している中、企業へのマーケティング支援も包括的になっていくべきだと考え、オラクルでもパートナー企業との連携に注力しています。
今回はサービスの運用やクリエイティブ、人材などの面で協力いただいている電通のお二方に、日ごろ密接にかかわられているクライアントの課題や今後の展望などをうかがいます。まずは、現在の業務とご経歴をお教えいただけますか?
加藤:私はビジネス・クリエーション・センターという部署で、マーケティング全体での貢献を軸に、ITベンダーと連携しながらCRMの仕組みづくりに注力しています。
元々はテレビ広告担当営業からメディアプランナーになったのですが、徐々にデジタル領域の仕事が増えていきました。今の業務は、リード・ナーチャリングから、店舗等での顧客情報活用など、様々なデジタルサービスの企画・開発を行っているため、企業ニーズの変化を個人的にも実感しています。
小林:私の所属している電通イーマーケティングワンは、「新しい売り方をつくる」というビジョンを掲げて、企業のマーケティング課題をデジタルの力で解決することを目指し2004年に創業しました。私は新卒時から「マーケティング×IT」の領域に興味があり、電通グループのSI系企業を経て創業時に当社に参画しました。現在は企業サイト、マーケティングオートメーション、プライベートDMPなどオウンド領域に軸足を置きながらソリューションの開発・提供に取り組んでいます。
チャネル横断型CRMの実現、鍵はスムーズな体制構築
大山:電通は従来のマス広告だけでなく、デジタル領域にも黎明期から取り組まれ、グループ全体でコミュニケーションにかかわる幅広い事業を展開されています。お二人のご経歴からも、両方の領域がどんどん密接になっている印象を受けます。お二人から見て、企業のデジタルシフトは進んでいると思われますか?
加藤:そうですね、デジタルを含めたプランニングは各社で進んでいます。2月に発表した「日本の広告費」にも表れているとおり、デジタル活用の潮流が強いです。特に、広告とデジタルとの連携ニーズは多く、これは、クライアントの声にも顕在化しています。例えばマス広告向けコンテンツをデジタルで使いたい、などのメディア連動のニーズが増えています。以前は「テレビと店頭イメージが連動していると効果が高まる」といわれてきましたが、それと同じ文脈で、デジタルを含めてあらゆるチャネルで連動を図りたいという意識がありますね。
大山:だからチャネルを横断したCRMが必要という発想になるのですね。現在を過渡期と表現されましたが、実際にはどのようなことが課題になっているのでしょうか?
小林:チャネルを横断したCRMに取り組もうとすると、企業内では複数の部署にまたがった調整が必要であり、組織横断プロジェクトにしないとなかなか前に進みません。そのような体制を構築して、業務フローや人的リソースも含めた変革をデザイン・実行できるかが、大きなチャレンジになります。
体制づくりを疎かにしてしまうと、意思決定に時間がかかったり、「とりあえずこの辺で」と無難な範囲に収まったりしてしまう。こうなると、スピードもスケールも出なくなります。一方で、各部門のご担当者それぞれの課題意識やデジタル知識は非常に高まっていると感じています。
大山:一人ひとりの担当者の危機感はあるけれど、組織の壁を超えて実現に落とし込むのが難しいのですね。
加藤:ええ。ただ、それぞれの部署や担当内には積み上げてきたものがあり、少なくともデジタル領域ではそれらをつなげられる環境になっています。その部分、そしてオフラインも含めて統合的な環境をつくることも、支援してきたいと考えています。
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ツールやデータが組織の壁を壊すドライブになる
大山:組織が分断していても、共通言語があればコミュニケーションがとれると思います。データが共通言語になる可能性はあるのでしょうか?
加藤:そのような見方は、もちろんできると思います。デジタル、特にCRMの世界ではデータが個に紐付いた情報になってきます。ですから、マスなどの個に紐付かないデータも合わせてどう統合的にマーケティングをしていくか、という視点が大事になってきます。
とはいえ、統合といっても実際に一度に大掛かりなことを実現するのは難しい。最終形のビジョンを描きながら、そこを目指して一つ一つ取り組みを積み重ねていくことが現実的ですね。
大山:現在、さまざまな種類のデータが取れるようになっています。データとデータのつなぎ方を考えながら、統合マーケティングの最終形を見据えつつ、今できることを進めていく。それが大切なことだということでしょうか。
加藤:仰るとおりです。多くの企業ではこれまで、部門ごとに異なった目的で独自にデータの取得や整理をしてきました。ですから、形式や整理の仕方が異なっていることも多いです。それらを統合することは、簡単とはいえないかもしれません。
しかし、データを企業全体のビジネスに貢献させるためには必要なことです。さらに最近では、ツールが各種データをつなげる役割を担い始めているので、決して不可能なことではないと思います。そして、ツールを使いこなす段階では、我々のような総合代理店もサポートできればと思います。
大山:マーケティングツールおよびデータは、組織の壁を壊す重要なドライバーとなっている。そして、電通ではサポートをする環境も整っている。お二人のお話を伺い、組織の分断という課題の解決は実現可能であると改めて感じます。
広告とリアルチャネルの間を埋めるナーチャリングの必要性
大山:データを統合してマーケティングに活かしていくという点では、マーケティングオートメーションやプライベートDMPといった分野の話題が最近多く聞かれています。クライアントなど、企業の反応はいかがですか?
小林:認知や集客を担う広告と、営業や店舗など人的リソースが関わるリアルチャネルの間を、ナーチャリングでつなげる必要があるという認識は以前からありました。実際にツールを使ってきめ細やかに実行し、効率的にPDCAを回していく動きは、この1、2年で急速に活発化しています。背景には、オラクルのようなクラウド型のソリューションが充実してきたことがあるでしょう。
また、適切なタイミングで適切なコンテンツに接触してもらうことで態度変容を促すという、コンテンツマーケティングの思想が浸透したことも、ツールを活用したナーチャリングの仕組みづくりを大いに後押ししていると思います。
加藤:運用型の広告はすっかり定着しましたが、今後は「CRMを含めた運用型マーケティング」もどんどん増えてくると思います。クラウドのツールが充実してきたからこそ、1回で終わりではなく、継続的に効果を積み上げていくという発想がスタンダードになると思います。
小林:プライベートDMPは、マーケティングオートメーションより半歩先行して取り組みが始まりましたが、まだROI視点で十分な成果が得られている企業は少ない状況と認識しています。そのひとつの理由として、施策の出口がまだデジタル領域に留まっているケースが多いことが挙げられます。
DMPのデータが営業担当者や店舗に連携されて接客や店頭サイネージの最適化に活用される、またそれらのリアル接点で得られた顧客情報がDMPにフィードバックされてデジタル施策に反映される、というようなダイナミックなループが実現されれば、データ活用から得られるビジネス成果は桁違いに大きなものになるはずです。
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アレもコレもは難しい、スモールスタートでノウハウの蓄積を
加藤:本来DMPで実現できると言われている、「オムニチャネルでのマーケティング成果の最大化」まではまだ到達していないことが多いです。しかし、保持している各種データをつなげたり新たな価値を見出したりしながら、顧客へのアプローチの質を徐々に上げていければと思います。情報をどう活用するかは、我々もクライアントと調整しながら取り組んでいく必要があると考えているところです。
また、特にデジタル領域は各種の専門事業者が多いので、我々も適切にアライアンスを組みながら、スピード感を損なわずにサービスを提供できるよう意識しています。
大山:ビッグデータと言われるように、取得できるデータは膨大になっています。ですが、いざマーケティング分析をしようとすると、本当に役立つデータが取れていない。そのようにデータサイエンティストから聞くことがあります。お二人が仰るように、全方位的に準備してから始めようとすると、なかなか前進できない。かといって、今始めないと3年後には取り返しようのない差がつく、ということにもなりかねないと思います。何の目的で、どう活用するかを見据えながらPDCAを回し、変化の激しいユーザー環境にも柔軟に対応していくべき、というところでしょうか。
小林:そうですね。ツールに任せられる部分は任せながらも、例えばセグメントをどう切るか、各セグメントに対してどのようなシナリオでコミュニケーションを行うかといったマーケターの頭で考えるべき戦略が成果を左右するので、そこはスモールスタートでPDCAを廻しながら自社ならではの勝ちパターンを作っていく必要があります。
テクノロジーの進化によってツールも戦略も変わる
大山:やはり、戦略を考えるのは人だということですね。企業のマーケティングのあり方が変わると、総合代理店の役割も変わってくると思います。御社として今後の展望をどう考えていますか?
小林:戦略づくり、クリエイティブ、分析といった人に依存する部分については引き続きプロとしてのサービスを提供させていただきながら、新しいツールやテクノロジーをドライバーとしてマーケティングのやり方を変えていく。その変革サポートに注力していきます。
先ほど大山さんが仰ったように、「手をこまねいていては乗り遅れる」と危機感を持たれている企業は多いので、その危機感を具体的なアクションに転化していくお手伝いが出来ればと。その際、例えば「新しいツールを使った運用を、社内でちゃんと廻せるようにしたい」というインハウス化ニーズに対して人材育成サービスや運用サポートサービスを充実させるなど、我々自身のサービス提供のあり方も進化させていく必要があると考えています。
大山:マーケターの側もテクノロジーの進化や選択肢の増加に対応して、賢く効果的なマーケティング活動ができるように変わっていく必要がありますね。加藤さんはいかがですか?
加藤:マーケティングオートメーションのような領域で日々の運用をサポートする一方、キャンペーンとして山をつくりながら企業のメッセージを伝えていく、その両方を統合的にプランニングすることが必要だと思っています。現在の双方向のコミュニケーション環境で正しく伝わるメッセージを検討していきたいですね。
また、マス広告で蓄積している電通ならではの強みや、機能を特化した各グループ会社との連携によって、クライアントのニーズに合わせてクリエイティブからストラテジーまで多様なソリューションを提供できればと考えています。
大山:デジタル領域の人材不足は各所で聞かれるので、戦略からクリエイティブまで含めた支援が可能な御社のようなパートナー企業は私たちベンダーにとっても重要な存在です。今後も企業のビジネス成果の向上に向けて協力して、日本から世界へ発信できる好事例を生み出していきたいですね。
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