今年の卒展課題はハードルアップ、その理由は?
――アウトプットが重要とのことですが、BAPAでは具体的にはどのようなものを作るのでしょうか?
朴:卒展を大きなアウトプットだと捉えています。去年は「ファンタスティック渋谷」をテーマに、渋谷に訪れた外国人が「渋谷ってすごい!」と感じられる作品を作ってもらいました。今年は「2020年の渋谷系」というタイトルで、新しいライブエンターテイメントを作ってもらう予定です。

ヒカリエのホールに集まった数百人とパフォーマーが一緒になって、今までにない新しいライブ体験をしてもらう。最近では、前例がたくさんあるだけに、一歩間違えれば「普通じゃん」で終わってしまう。少しハードルが高い課題ですね。
――ハードルを上げた理由は?
朴:同じテーマだと、前回を越えられない気がしたんですね。やはり最初のトライに挑むからこそ、新しいクリエイティブにたどり着くんだと考えました。今回はライブパフォーマンスという既にあるものを、2020年という既存のフォーマットから離れた視点で考えてもらいたい。例えば、2020年の路上ライブはこんなにすごいことになってるはず、とか、落語こそ、今、進化させるべきエンターテインメントだ、とか。この辺は、言い過ぎると良くないので、あまり多くは語りませんけど(笑)
――まだ見ぬ新しいフォーマットを生む訓練ですね
朴:そうですね。ファミコンを世界的なフォーマットに育てた宮本茂や、ビジュアルでストーリーを語るっていうマンガを生み出した手塚治虫みたいな人が、いつか出てくれたらと夢見ています。卒展の課題には全9チームで挑んでもらうのですが、1チームでもとんでもないことをやらかしてくれたら嬉しいです。
「未来を作る人」が生まれてほしい
――最後にBAPAが目指すものを教えてください。
朴:短期的な視点では、BAPAの2期生に1期を越える成果を出してもらえるようにサポートできればと思っています。でないと、BAPAがオワコンになりますからね(笑)
長期的な目線だと、そうですね……マスメディアというのは、20世紀後半にたどり着いた人類の英知だと思います。これからも、さらなる情報技術の進歩とそこで共有されるコンテンツが、人々に影響を与えていくのだと思います。一方で、シンギュラリティ(技術的特異点)という言葉があります。機械が人間の知性を超えて科学技術を支配するという考えですね。大げさに思うかもしれないけど、そんな世界が今、近づきつつある。そこで、自分たちが良い未来を作るんだという、主体的な視点のある人がたくさん生まれてほしい。新たな価値を生み出すために、リスクを負ってでも、これまで結びつくことがなかったモノを結びつけ、すごいコラボレーション環境を作れる人に価値があると考えています。
――BAPAは朴さんの思いにつながっているのですね。
朴:そうですね。変な話、BAPAってうちもPARTYさんも収益どころか、最初から1円も入ってこないことがわかってるプロジェクトなんですよ。もちろん採用や、会社のプロモーションにつながればとは思っています。でも、良い意味で、先人への恩返しも含めて、ボランティア的な感じで取り組んでいる側面もある。予定調和を全く望んでないからこそ、自分たちの思いを乗せていかないと、やる意味もわかんなくなっちゃいます(笑)